「初恋ゾンビ」が「初恋」という淡い感情の比喩表現にチャレンジした作品だからみんなに読んでほしい。
この記事は「オススメ本 Advent Calendar 2019 - Adventar」の8日目です。
オレのオススメ本は「初恋ゾンビ」です。週刊少年サンデーでの連載を割と最近終え、現在は全17巻のコミックスが販売されています。サンデーうぇぶりでも過去話を一部無料で試読できるようになっています。
何事にも情熱を燃やさぬ平熱”省エネ”高校生・タロウくんの前に、超どストライクな空飛ぶ美少女・イヴが現れた!彼女の正体は、タロウの欲望&妄想&願望を凝縮した脳内彼女的存在=”初恋ゾンビ”だった!!タロウの平穏な日々は、かくして一変し──!?少年サンデーが放つ次世代ラブコメ、ここに開幕!!
(初恋ゾンビ - サンデーうぇぶりより抜粋)
主人公の久留米タロウは、NARUTOでいう血継限界によって「男性の初恋を可視化」できる能力を持ちます。とは言え、その能力は幼少時のとある事件で失われていました。高校一年生のある日、幼馴染の打ったホームランボールの直撃を頭部に受け、そのまま気絶。目が覚めた時には目の前に自分の理想を形にしたような可愛い女の子が宙に浮いていたのです。
彼女の正体はタロウの初恋そのもの。幼少期の初恋の女の子「イブ」が自分の理想通りに成長した姿で具現化されたものでした。頭部への衝撃をきっかけにタロウは「男性の初恋を可視化」できる能力に再び目覚めます。
タロウはその初恋が具現化したものを「初恋ゾンビ」と名付けます。初恋ゾンビは初恋が何らかの形で成就すると成仏(?)します。
つまりイブを消すためにはタロウ自身の初恋を成就させる必要があるのですが、転校という形で10数年ぶりにタロウの前に現れた初恋の相手は、何と男……指宿凛々澄でした。
実は幼少時にタロウが能力を失った時も、指宿と頭を激しくぶつけており(要するに頭突き)、それのショックで能力が失われていたのです。一方で指宿はその際にタロウから「男性の初恋を可視化」できる能力が感染させられており、10年以上たった独りでその能力に振りまわされ続けていました。
そう言った理由から指宿はタロウを激しく憎んでいます(という体裁を取っている)が、能力を消すヒントを探すために、タロウと指宿は初恋ゾンビたちと深く関わって行くようになります。
とまぁだいたいこんなあらすじです。ここまではサンデーうぇぶりでだいたい読めるのでぜひ読んでみてください。
この作品で個人的にオレが興味を強く持ったのは、「初恋」という感情の表現の可視化にトライしているところです。
例えば、失恋すると初恋ゾンビは「失恋ゾンビ」に変化し、創造主(=初恋をした男)を攻撃する存在になります。
こちらは初恋を認めたくない、拒絶したい、初恋自体をなかったことにしたい(殺したい)状態の初恋ゾンビ。
こちらは初恋が見えていない(自覚していない)状態。
初恋ゾンビ 3|峰浪りょう|小学館
自分の初恋の思い出を守りたくていばら姫状態な初恋ゾンビ。
初恋ゾンビ 4|峰浪りょう|小学館
初恋を忘れたくて氷漬けにしている状態。
初恋ゾンビ 6|峰浪りょう|小学館
こんな感じで様々な「初恋の形」が作品中には登場します。なかなか上手い表現だな、と思う初恋ゾンビも多いので、初恋のどの状態をどのように表現したか、に注目していっても面白いと思います。
一見よくあるお色気系の作品にも見えるんですが、終盤に近づくにつれ、タロウと指宿の初恋を巡ってどんどんヘビーな展開になっていきます。ラストはあまりにも切ない……。彼らの「初恋」がどうなって行くのか、ぜひ見届けてください。
作品としては、同じ週刊少年サンデーで連載し、アニメ化もした「神のみぞ知るセカイ」が比較的近い印象があります。あの作品が楽しめた人は、おそらくは「初恋ゾンビ」も楽しめるのではないでしょうか。
以上、オレのオススメ本でした。それでは。