ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

スクラムフェス札幌2022で行われた中傷行為とその後の対応について

 以前からアジャイルコミュニティでオレに対する「いじり」「からかい」行為に辟易していた、という話を以下の記事で書きました。


takigawa401.hatenablog.com


 それに対する我慢の限界を超えたのが11月初旬に行われたスクラムフェス札幌2022です。


www.scrumfestsapporo.org


 具体的にオレに対して行われたのは以下2点です。

1. 例の「コミュニケーションは難しい」の画像をDiscordのスタンプに設定され、チャットで文脈と関係なく頻繁に貼付される形で晒されたこと
2. オレの預かり知らぬところで「滝さんの圧が強い件」という名前のテストチャンネルが勝手に作成され、オレを中傷するような話題で盛り上がっていたこと


 オレはこれらの行為に対し、有体に言えばキレてスクラムフェス札幌運営に苦情を申し立てました。後日、スクラムフェス札幌運営メンバーと話し合いの場を持ち、オレから以下2点を要求しました。

1. 上記2の「滝さんの圧が強い件について」というテキストチャンネルを作成した人物に意図を確認すること
2. 今回の事件に対する運営としての正式な謝罪を公開すること

 1については運営側の方でチャンネル作成者にコンタクトを取り、その意図を確認してもらえました。結論としては、オレに対する中傷の意図はなかったそうです。

  • そもそも滝川を知らない、面識がない
  • ウォーターフォール開発を擬人化して議論することが目的だった

 個人的にはウォーターフォールを擬人化して扱う必要性が正直よく分からないです。加えて、オレ(滝川)だけでなく、滝沢・滝田・滝口など「滝」がつく名前はいくらでもあるし、なんなら会場となった北海道には「滝 廉太郎」という有名な偉人がいるのに、そんな名前を選んでマズイことになるとは考えなかったのかな、とは率直に思います。
 とは言え、中傷の意図は無いそうですし、そのテキストチャンネルで彼自身がオレに対して中傷行為を行なってないのは間違いないので、後日非礼と濡れ衣を被せてしまったことをオレから謝罪しました。


 とはいえ、1の行為が行えてしまったのは、スクラムフェス札幌運営が場のコントロールができていなかったからです。オレの「コミュニケーションは難しい」画像を貼られたのはDiscordのチャットですが、その内容を常時チェックするのは難しいのは理解できます。(理想はやるべきですが) ですが、個人名を想像させるものが否定的と取れるキーワードと並べてテキストチャンネルに設定されているのに、それに対して何のリアクションも取らないのは、管理責任者として怠慢と言わざるを得ません。


 オレはスクラムフェス札幌運営に対して、今後オレに対する中傷行為を牽制する意図と、今後このような事件が繰り返されないように対策を参加者全員に促す意図を伝えてもらうために、謝罪を公開してほしい、と依頼しました。
 あらかじめ断っておくと、オレ自身が運営から謝罪がほしい訳じゃありません。謝ってもらったところで起こってしまったことは何も変わらないし、謝ってくれとこちらからお願いして形だけ頭を下げてもらってもなんとも思えないからです。


 結果、スクラムフェス札幌運営は以下の文章を公開しました。非常に迅速な対応には感謝しつつも、これをみた瞬間、こちらの意図は蔑ろにされたと率直に感じました。


 オレが謝罪公開を依頼したのは、参加者全員に今回の件について当事者意識を持ってもらいたかったからです。
 謝罪とは責任の所在が自らにあると明確にするための行為だとだとオレは考えます。
 運営が自らに責任があると認めていないのに、それより事件から遠い位置にいる参加者が当事者意識を持つはずがない。
 上のツイートでも「勇気あるフィードバック」と随分と表現を和らげていますが、オレが行ったのは苦情申立てです。そして謝罪を意図する文章は一切ない。
 余談ですが、苦情申し立てをしたオレに対して「あなたの発言によってみんなが混乱し、不安に思っている」という発言をスクラムフェス札幌運営の一人が返信してきました。「場を乱すな」「余計なことを勝手に騒ぐんじゃない」オレはそう言われたと感じました。中傷行為を受け一番動揺しているのは他ならぬ苦情申し立てをしたオレなのに、です。


 スクラムフェス札幌運営は、オレに対して行われた中傷行為に責任を持たない、だから謝罪しない、というスタンスを明確にしました。少なくともオレは一連の彼らの対応をそのように受け取りました。
 オレはすぐ抗議をしましたが受け入れられず、謝罪も明確に拒絶されました。


 その後、スクラムフェス札幌の大元であるスクラムギャザリング実行委員会からも以下のような宣言が公開されました。こちらではもっとはっきりオレへの謝罪を拒絶した旨が書かれています。


kawaguti.hateblo.jp


 この文章にもあるように、ハラスメントに対する対策が非常に難しいことはオレも理解できます。
 ただ、オレが要求している謝罪はもっとそれ以前の前提に対してです。イベントを企画しどのような場にするかを設計した責任者には、その場の設計のせいで起こったことに対して責任を取る立場にある、オレは考えます。

 たとえば、今回のオレの中傷行為はDiscordというクローズドな場で行われました。もしスクラムフェス札幌がDiscordを会場として選択しなかったらオレに対して行われた行為は、そもそも何一つ行えなかったでしょう。*1


 スクラムギャザリング実行委員会が開催するRegional Scrum Gathering TOKYO(以下「RSGT」)やその派生イベントは、それしか選択できなくて今のイベント設計になったわけではありません。自分達がやりたいこと・したいことを優先した結果、あえてその設計を選択しています。その設計のせいで発生した事件に責任が持てない、っていくらなんでも無責任すぎないか?とオレは思いました。


 また、前述のように、ハラスメント行為への対策は非常に難しいです。当人たちにはその行為が他者への攻撃になっているとはほとんどのケースで自覚しておらず、だからこそ起こさないためには圧倒的な当事者意識が不可欠です。ですが、そもそものイベント運営側が責任を持っていると受け取れない態度で表明しているのに、一般参加者が当事者意識を持つなんてことができるはずがありません。


 スクラムフェス札幌運営の発したTweetへのリアクションはおそらくほとんど目を通したと思います。スクラムギャザリング実行委員会の表明についても、Twitterで確認できるものはほとんど読みました。その多くが彼らのスタンスに対する敬意と賛成であることは読み取れます。

「こういうの大事だよね」

「真摯な対応だ」

「尊敬してます」

 その誰もが、明日自分がオレのようにハラスメントの当事者になるとは想像だにしていないのでしょう。自分が被害者の立場になったら?あるいは加害者だったと指摘されたら?明日は我が身と思えばもっと危機感のある言葉が出てくるはず。他人事だからこそ、このような言葉が出てくるのでしょう。


 スクラムフェス札幌運営が、あるいはスクラムギャザリング実行委員会が、公に謝罪をしてくれたら、これらの人々が果たしてハラスメント行為に対して圧倒的当事者意識を持ってくれるかどうかは定かではありません。おそらくは謝罪があったとしても当事者意識を持つ人はそれほど多くはなかったでしょう。それでも、自らの責任の所在を明確にした者とそうでない者との言葉の伝わり方は異なったとオレは信じます。「みんなで良くしていきましょう」と「俺たちは断固たる覚悟で臨む、だからみんなもつ一緒に取り組んでくれ」では伝わり方は違うはずです。今後オレに対して行われたような行為を少しでも減らすためにも、参加者全員に当事者意識を持ってもらう、そのための第一歩が運営による謝罪だとオレは考えていました。


 スクラムフェス札幌運営の人たちと対話している時に、彼らのスタンスについては何度となく聞かされました。

「ハラスメントって運営が頑張ったらどうにかなるものじゃなくないですか?」

「ハラスメントを完璧に監視することなんか無理ですよ」

「できない・無理なことに責任なんか取れないですよね」

「責任取れないことに謝罪っておかしくないですか?」

 何度も聞いているとさすがにオレの方が間違ってるのかな?考え方がおかしいのかな?と思い始めて、いろんな人に何度も相談しました。でもその結果、返ってきたのはほとんどがオレの意見を尊重してくれるものばかりでした。

「運営が責任持つのは当然だろ」「謝罪ないっておかしくない?」

 相談に乗ってくれた彼らのおかげで、少なくともオレの意見が世間離れしている訳ではないことだけは確認できました。相談に乗ってくれた友人たちには深く感謝したいと思います。

 また、最終的には合意には辿り着けませんでしたが、ある程度までは迅速にこちらの要求に対応しようとしてくれたスクラムフェス札幌の運営の人にも感謝します。それだけに最終的に合意が得られなかったのは非常に残念です。


 彼らからは頻繁に「心は寄り添っている」と聞かされました。でも、オレのこの腹の中で煮えたぎる憤りを誰かが理解できるのでしょうか?加害者一人一人を夜中襲いかかってバットで殴りつけたいとさえ何度か思ったオレの怒りが理解できるのでしょうか?謝罪をしないと言ってきた彼らの首を思い切り締めたいとさえ思ったオレの憤怒を誰がどうして理解できましょうか?本当に寄り添っているならとっくにオレに寄り添えてないことなんか分かるはずなのに!!

 幸か不幸かオレは良識ある社会人で、オレはオレの憤りを腹の中に精一杯抑えつけてこの文章を書いています。オレができることは所詮この程度です。


 今後ですが、オレ個人として、まずRSGTをはじめとするスクラムギャザリング実行委員会が開催・共催・協力するイベント・勉強会の全てと今後一切の関係を断つことにしました。来年1月に行われるRSGT2023にオレはボランティアスタッフとして参加する予定でしたが、本記事を公開する直前に辞退を申し入れています。単にRSGTや派生である地域スクラムフェスだけでなく、物品提供を受けているふりかえりカンファレンスやXP祭りなども関係を断つ対象です。
 フリーランスの身であるオレにとって、こういうイベント・勉強会は、単に知識を吸収する場としてだけではなく、口に糊する手段を得るための交流の場として非常に重要な位置づけにあります。とはいえ、自分と信念を異にするものに協力することはできません。自衛の意味でも自分が安心して参加できないものにオレが参加することはできません。今回の決断で今後自分の生活が苦しくなることがあったとしても、自分の信念は貫きたいです。


 最後に、この文章を読んでくれた方が、ハラスメント行為に対して強い強い当事者意識を持ってくれることを祈ります。いつ自分が加害者になるか、あるいは被害者になるか、は全く分かりません。だから普段から自らの振る舞いに気をつける必要がある。オレは今回の事件でとても高い勉強代を払ってそれを学んだのだと思っています。
 オレのような人間が少しでも減ることを願ってやみません。

*1:「コミュニケーションは難しい」の画像をイベントのハッシュタグをつけてTwitterに繰り返し貼ることはできるでしょうが、公であるTwitterでそれをやる危険性は流石に加害者たちも理解しているからやらないだろうし、もしやっていたらオレも刑事告訴を真剣に考えたと思います