ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

「ふりかえり」で日本一有名な人のチームはどんな働き方をしているか?

見返り美人図 - 東京国立博物館にて筆者撮影

はじめに

 本記事は「Management 3.0 Advent Calendar 2022」の12日目です。12日目ですがなぜかジングルベルが鳴っている気がしますがきっと気のせいでしょう。うんうんそうだきっと気のせいだ。個人的にはこのアドベントカレンダーと苛烈な記事を交互に書いているような気がしますが、めげずに元気出していきたいと思います。


adventar.org

 全然どうでもいい話ですが、冒頭の写真は今月18日まで東京:上野の東京国立博物館で開催されている(た)東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」に展示されていた、菱川師宣の代表作「見返り美人図」を撮影してきたものです。国宝展に展示されていましたが「見返り美人図」は重要文化財らしいですね。これと金剛力士像だけ撮影Freeだったので遠慮なく撮ってきました。現在修理プロジェクトで寄付を募っている最中ですので、文化財保護の観点からもぜひご協力をお願いします。オレは掛け軸を買いました。文化財の為だからしょうがない!

www.tnm.jp



本題

 さて本題。

 オレは元々はn次請SIer出身でバリバリの叩き上げの業務系システムエンジニアです。フリーランスに転身して4年目になりますが、現在は、とある大手企業のSaaS製品の代理店販売ビジネスの支援をしています。掲題にもありますが、アジャイルな主要なプラクティスのひとつである「レトロスペクティブ」いわゆる「ふりかえり」に関しては、この日の本において彼の右に出る者はいない、という人物がいまして……おっそうそう!なんかあの黄色い人!最近蛙型宇宙人と知り合いになったとか不思議なこと言ってる人です!そのふりかえり日本一な彼にお誘い頂いて、現在のチームでは今年の2月から働き始めました。

業務内容

主な業務内容はこんな感じ。

  • 顧客連絡・調整
  • 外販打ち合わせ
  • 提案資料作成
  • マーケティングリサーチ
  • ソリューション提案
  • 顧客向けセキュリティチェックシート記入
  • 取扱プロダクトに関する技術調査
  • 取扱プロダクトのプラグイン開発
  • etc…

 後半は一般的なシステムエンジニアの仕事ですが、前半はいわゆる「営業マン」の仕事ですね。現在支援しているチームは代理店販売が主業務なので、当然メンバー個々においても「営業」が主業務です。

チーム構成

 このSaaS代理店販売チームの構成メンバーは7人です。社員は2名で、他5名はオレ含め外注です。

1. 社員。チームリーダー。例のふりかえりの人
2. 社員。他業務と兼任。ふりかえりの人のパートナー的な人
3. 派遣 & 技術SE契約。若手男子。大食らい & 大酒飲み
4. 派遣。マーケと法務、事業計画が得意。すぐ賄賂(高級ウイスキー)を渡したがる
5. 派遣。紅一点。着物の着付けと占いが副業でその筋では超有名らしい
6. 派遣。若手男子。スヌーピーのぬいぐるみを壁にぶら下げている
7. 協業会社。叩き上げのSE。つまりオレ

 この企業は超大手企業に該当し、まぁ有体に言えば資金面で非常に強く社会的な信頼も厚いため受注を獲得しやすいというメリットがありますが、一方でレガシー体質で社内プロセスとかが煩雑だったり、そもそも新しいものを一切受け付けないような風土があったりします。とてもじゃないけど外注メンバーがその辺りに太刀打ちできないので、必然的に社内に対する手続だったり確認だったりは社員2名の役割になります。

 このチームは営業のチームなんですが、一応SaaSを取り扱っているんでITの知識はそれなりに必要です。が、必須ではないし、事実ITに詳しいのは社員の2人とオレだけ、直近で手を動かして開発をやったことあるのはオレだけ、という状態です。なので必然的にIT系の知識が求められる作業はオレが担当することが多くなります。

 メンバーの1人はマーケティングリサーチや事業計画が得意なので、新規事業を考えるときは概ね彼が起点になったり、あるいは中心になったりします。新規事業系は社内フローとの戦いが切り離せないので、前述の通り社員メンバーも必ずここに加わることになります。

 割と重要なのが契約形態で、派遣法について詳しい方ならご存知だと思いますが、依頼主である企業の社員が直接指示を出せるか、とか、3年以上契約する場合にはその派遣社員を自社で雇用しなければならない(んだけど、実際には雇用する企業は皆無なので、3年ごとに派遣側の人が職を危ぶむ事になるというロクでもない運用をされている)決まりがあったりします。
 その辺の兼ね合いなのか、派遣契約の人は社内システムにそこそこ(少なくとも業務に支障のないレベルでは)触れるんですが、協業会社契約になっているオレだけはろくに社内システムに触れない、という面倒な点もあります。これによりオレは通常の営業フローを他のメンバー同様には回せないので、やっぱり必然的に誰かに営業作業の一部を任せたり、あるいはかえって他者の負担が増えてしまうため営業タスク自体を避けざるを得ない傾向にあります。
 じゃあ契約形態見直せばいいじゃん、って話になると思うんですが、それはそれで死ぬほどめんどくさい話が内在しているのでここでは割愛。働き方の解説には関係ないしね。


 とまぁザザーッと書いてきましたが、全員営業マンというのが基本なんですが、契約形態や能力なんかでどうしても得意不得意が出てしまうのは当たり前の話ながら、当然このチームにも存在しますので、その辺を上手に活かして、得意領域を伸ばしてチームとしてパフォーマンスを最大化することを基本的なスタンスとしています。
 外注といえど当人たちが今後伸ばしていきたいスキルや分野があれば、チームとしてそこに投資をする(工数を割く)こともあります。

働き方

 業務は朝9時にスタートです。我々は東京都に3人、神奈川県に3人、そしてなぜか長野県のオレ、とそれぞれ全然別の場所に住んでいます。そのため業務の99.9%をリモートで実施しています。残りの0.1%は、PC受け取りや交換のようなどうしても物理的な品物の受け渡しがあるときに限られます。
 ……そういや社員メンバーの1人がこないだインターン生の受け入れ業務で一週間ほど出社してましたが、あれはチームの業務の外なので除外します。(彼がインターン生の対応を行い易いようにチーム全員で彼のサポートを行ったりはしました)

 このチームでは業務時間中は全員が基本的に同じZoomにINすることが義務付けられています。ブレイクアウトルームを複数立てておき、基本的には業務時間のほとんどをブレイク1で作業します。チーム内で個別に相談事があったり、どうしても個人で集中して作業したい場合には、他のブレイクアウトルームに移動してそれぞれ作業をする形です。カメラは基本的にはONにするルールになっていますが、事情があればOFFでもOKとされています。事情は「朝寝坊してメイクを忘れた」とかでもOK。オレもよく8:58に目が覚めてそのまま寝巻きのままZoomにINした時なんかはカメラOFFで作業し、昼休憩時に身だしなみ整えて午後からカメラONにしたりもしてます。事情がないのにカメラONにしてないとリーダーからお小言を頂戴する羽目に遭います。
 Zoomのメインルームは顧客打ち合わせやチーム外の社内メンバーと打ち合わせをするときに用いられます。基本誰かしら顧客と打ち合わせをしているので、メインでのほほんとしている(ex: 昼休みにメインにINしたままごはん食べに行っちゃう)と平然と打ち合わせに巻き込まれます。逆にいうと、来客があるのにメンバーが誰も対応してないとすぐ気づけるので、顧客打ち合わせをすっぽかすことを極力防げる、という別のメリットもあったりします。(別のZoomで打ち合わせを設定しているとこの限りではない)


 月曜から木曜は通常業務を行います。

1. 9:00-9:30 営業案件ステータス確認
2. 9:30-10:00 ラーニングセッション
3. 10:00-17:00 営業業務
4. 17:00-18:00 残務処理

 営業案件はそれぞれ担当者が決まっていますが、風邪や家族トラブルなど不測の事態に備える意味で、全員でステータスチェックを行うようにしています。さすがに朝のわずかな時間で行う確認作業で他人の担当分まで完璧に把握はできませんが、なんとなく動いているかいないか位は把握できるようになります。繁忙期は30分では確認しきれず、10時までめいいっぱいステータスチェックに使ってしまうこともよくあります。

 朝のステータスチェックで時間が余ると、チームメンバー全員共通で学んでおくべき内容を取り扱って学習に充てるようにしています。主には取り扱うSaaS製品の新仕様だったり、社内プロセスを調べて明らかになったことだったり、あるいはマーケティングや会計の基礎だったり、がこれまで扱われてきました。特に取り扱うSaaS製品の新仕様把握は、業務を行う上で非常に重要なので、どんなに忙しくても週に1度は行うようにしています。


 朝の確認作業が終わると、メンバーそれぞれの作業に入ります。

 作業の内容は様々ですね。メールで顧客と調整したり、打ち合わせしたり、資料作ったり、ステータス管理したり。前述のような技術調査や資料作成、新規事業準備なんかも同様です。メンバーの一人は広報サイトのメンテナンスや新規コンテンツ作成を専任担当しているので、その辺の作業もこの時間で行います。昼休みはこの時間のどこかでメンバーそれぞれの裁量で1時間確保します。(忙しすぎて確保できていない人が稀にいます、よくないね)

 メンバー全員パラレルで作業しますが、Zoomで常時繋がっているので、困ったことがあったり分からないことがあればすぐに他のメンバーに聞けます。

 日本一ふりかえりで有名な人のチームだけあって、1時間に1回、毎時00分に各人ふりかえりを行います。ふりかえりと言ってもチャットの専用チャンネルにその時悩んでいることや困ってること、逆にうまく行ったことや嬉しかったこと、思ったことなんでも書いてOKです。忙しかったり打ち合わせが詰まっていたりすると毎時のふりかえりを忘れてたりするんですが、そうするとリーダーからお目玉を頂戴します。
 オレはこのチャンネルを分報のように使っていて、毎時00分に関わらずその時々の考えていることの整理に使っています。技術調査の進捗を書いたり、読んだ記事のURLを貼ったり、自分のタスクリストとその消化状況を貼っつけたり、様々です。別ブレイクにこもって作業している時なんかは、他の人から作業状況が見えるように普段より多めに記入するようにしていますね。こういう使い方をしているのはチームでオレだけですが、特に何も言われないのでそのままのスタンスでやってます。

 前述のようにこの会社はレガシー企業でツール導入に後ろ向きなので(SaaSの代理店販売やってるのにその姿勢はどうなんだ?)、CRMツールなどは導入されておらず、全てはメールとBTSで行います。せめてCRMとZen Desktop入れてくんねーかな……。


 毎週火曜の朝一はSaaS製品の製造元と打ち合わせが入っているので、案件ステータスチェックはできません。
 この対策として最近取り組んでいるのが、営業案件の担当が少ないオレが火曜午前中に全員分を確認してチャットに投稿しておく、というものです。水曜に動きのない案件の状況確認(顧客にメールや電話で問い合わせ)を行う傾向があるので、火曜にまとめたこの情報をもとに水曜午前中に状況確認作業をまとめて行うような形にしています。


 金曜は通常作業を全て止め、一週間分の作業のふりかえりに全て充てます。いわゆるスクラムのスプリントイベントに該当します。

1. 9:00-9:30 代理店販売ビジネス全般を統括する部長さんに一週間の成果の報告や相談
2. 9:30-10:00 メンバーそれぞれの一週間の成果発表 (セレブレーションパーティ)
3. 10:00-10:30 プラグイン開発をお願いしているチームとの進捗確認
4. 10:30-11:00 他チームの方にお願いして、一週間の成果物をレビューしてもらう(いわゆるスプリントレビュー)
5. 11:00-16:00 来週の作業タスクの確認と今後予定しているタスクの見直し (いわゆるバックログリファインメント)
6. 16:00-17:00 一週間のふりかえり (※ 月末だけは一ヶ月分のふりかえり)
7. 17:00-18:00 作業がある人は個別作業、無い人は早上がりしてOK

 金曜日は社外の方でも無料で見学可能ですので、興味がある方はオレかふりかえりの人に声かけてください。(解説するのがめんどくなったわけじゃないよ)



終わりに

 このやり方になっているのは、色々と効率の良い・やりやすい方法を模索し続けた結果の、現在のスナップショットです。来月同じ方法でやってるとは限りないですし、事実小さな変更は随時行なっています。我々は今このやり方が働きやすいと思ってこのやり方を取っていますが、それが万人に合うわけではないことは承知しています。


 Management3.0は良い働き方・働きやすい働き方を従業員自ら探すために、それぞれのモチベーションや考え方・スタンスを推測ったり確認したりするようなワークが多いです。ここで書いた内容はManagement3.0とは直接関係ないかもしれませんが、多様な働き方を知ることで個々人が興味がある・働きやすいと感じるやり方を模索する一助にはなるんじゃないかと思い書いてみました。
 働き方を選択するためには、色んな働き方を知ることが大事だと思います。色んなユースケースを集めて、知って、その中から自分達の最適解を探し続けていきたいですね。