ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

30分で分かった気になるソーシャルゲーム入門



 以前こんなプレゼンを社内で行い、その資料をSlideshareに上げておいたんですが、いつの間にやら閲覧数は1,000を超えてるわ7人もDLしてるわで…。こんななんの説明もない写真だけのプレゼンではさすがに申し訳ない気がしてきたので、ブログの方で簡単に解説を入れておこうかと思います。


 ちなみに、このプレゼンのゴールは「enchant.jsを使ってゲームのライブコーディングをする」でした。対象は新人〜社歴3年目くらいまで。実際に聴講者に一緒にJavaScriptを書いてもらい、JavaScriptのコーディングが初めての人でもそこそこ動くゲームを作って楽しんでもらうのが目的。
 うちの会社はプログラミング完全初心者を採用するんですが、そういう事をしていると何人かは「ゲームも開発するんですか?」と淡い期待を抱いて入社する人も出てきます。残念ながらそういったニーズを業務では満たすことはできないんですが、プログラミングを勉強するモチベーションとしてゲームに取り組んでもらうのは悪くないですし、ならばそういう方向性をこちらから提示して、そういった想いを消化させつつJavaScriptに慣れ親しんで貰おう、という考えから企画しました。


 ただ、いきなり「ゲームをライブコーディング」だと、「ハァ?SIerがゲーム作ってどうすんだ!?」と社内のエライヒトに言われかねないので、事前にソーシャルゲームの現状を解説しといて「ソーシャルゲームは盛り上がってるから、その中の要素はちゃんと抑えとかないとね」「ソーシャルゲーム開発に携わる可能性だってあるから、準備しとこうぜ」というように話を持っていく、という予防線を張ることにしました。なのでこのプレゼン資料の最後では、enchant.jsと9leap、あとそれらが勉強できる「ドットインストール」についても紹介しています。




 それでは、以下簡単にプレゼン資料の内容について解説していきます。

 …と、その前に断り書きを。オレはソーシャルゲームメーカーで働いているわけでもでもありませんし、専門的にマーケティングを担当しているわけでもありません。単に興味があって独力で調べているに過ぎません。要は子供の夏休みの自由研究と一緒ですから、内容に誤りがあるかもしれませんが、どうかその辺はご容赦頂きたいと思います。コメント欄やTwitterはてブコメント等でご指摘頂くのは大歓迎です。













 それでは「30分で分かった気になるソーシャルゲーム入門」というタイトルで、昨今話題のソーシャルゲームについて簡単に発表したいと思います。30分とありますが、全くリハーサルをしていないので本当に30分で終わるかどうかは分かりません。早く終わるかもしれないし予定より長くかかるかもしれない。まぁ気楽にお付き合いいただければと思います。







 ちなみに、今回の話は「スマートフォン」に限定させてください。iPhoneAndroidのゲームとして遊べるものだけを対象にしています。フィーチャーフォンやPCで遊べるソーシャルゲームもあるんですが、今回はそちらは対象外とさせて下さい。







 さて、いきなりですが「なんでタキガワはソーシャルゲームの話なんかするのか?」というのを先に説明します。いくら話題だからって「仕事の時間に仕事に関係ないことを聞きたくない!」って人もいるかもしれないので、「全くの無関係でもないんだよ。」という辺りを話しておきたいと思います。







 まずこちらのデータは、2011年10月〜12月の間のソーシャルメディア4社の売上や利益を比較したグラフになります。資料はWebからお借りしました。売上額も物凄いんですが、特に注目して欲しいのは利益率。DeNAGREEは40%と54%という物凄い高利益率を叩き出しています。







 次は、2008年7月〜2011年10月期の売上推移です。GREEMobageの売り上げが物凄い勢いで右肩上がりなのが分かります。







 続いて、2011年第三四半期の売上比較です。注目して欲しいのはGREEMobageのグラフの色の違いなんですけど、緑がアプリ課金で茶色が広告収入、圧倒的に課金の売上が多いことが分かります。以前は「インターネットで設けるなら広告収入しかありえない」なんて言われてたんですけど、完全に覆されてることが分かると思います。







 次はARPU、「Average Revenue Per Users」の頭文字で、ユーザー1人当たりが月どのくらい課金してるかを表しているグラフです。GREEで見てみると、2011年12月には会員1人当たり500円の課金収入があったことになります。アプリ内課金を行っているユーザーは全体の10〜30%程度だ、と言われていますから、仮にユーザー全体のうち10%が課金していたとすると、10人に9人は無料のまま遊び続けて、残りの1人が毎月5,000円払っていることになります。コンシューマゲームだったら一本新作が買えちゃう金額を投入している人がいる、ということになりますね。







 最後に今後日本国内のソーシャルゲーム市場がどのように伸びていくかを予想したグラフです。まぁ要するに「今後もソーシャルゲームは伸び続けますよ」ってことです。







 次に見てもらうのは「東京ゲームショウ2011」のフロアマップです。このイベントは毎年幕張メッセで開催される国内最大のゲームイベントなんですが、この年最大のトピックは「初めてソーシャルゲームメーカーが東京ゲームショウに出展した」ということでした。







 そのソーシャルゲーム関連のブースをハイライトしたものがこの図になります。ハイライト部を大きく2ブロックに分けて解説すると、上がGREE、下がモバイル関連の小規模メーカーの集合ブースです。GREESCEに匹敵する広大なスペースを占有していることがパッと見で分かると思います。
 この「東京ゲームショウ2011」は私も参加してきましたが、GREEのブースでは、頻繁に次長課長若井おさむといった人気タレントを呼んでイベントを開催していたり、デモプレイ用の携帯電話1台に対しコンパニオンを1人つけてたり、ゲーム内で使えるレアアイテムをバカスカ配ってたりと、大盤振舞いをしていました。如何に稼いでるかが、見に行った人ならなんとなく体感できたんじゃないですかね。







 さらに、自分たちはプラットフォームを持ってないけど、GREEMobageのようなプラットフォームにゲームを提供する形で、サードパーティとしてソーシャルゲームに参入している会社もいっぱいあります。それらも合わせてハイライトしたのがこのフロアマップです。東京ゲームショウの半分以上がソーシャルゲームに関わっていることが分かるんじゃないでしょうか。







 さて、続いては、3/22に@ITというIT業界の情報サイトに掲載された、直近のIT業界の転職市場に関する記事です。







 まず、読み始めてすぐに「モバイル・スマホ業界が活発だ」とあります。ソーシャルゲーム関連で大手がガンガン採用を行ってるということですね。
 次に「Java & PHPの開発経験者のニーズが高まっている」とありますが、JavaAndroid開発に用いる言語ですから、スマートフォン開発が活況であれば当然需要は伸びてくるでしょう。PHPはどちらかというとWebサービス提供を行う会社なんかで好んで使う傾向がある言語です。ソーシャルゲームのサーバサイドエンジニアとしてPHPerの人気が高まっていることが考えられます。







 こちらはゲーム業界のくだりですが、思いっきりソーシャルゲーム・オンラインゲームと書いてありますな。







 で、こちらは我々システム開発業界、エンタープライズ向けなんですが、なぜかPHPPythonPerlといったLL言語の需要が高まっている、とあります。「開発経験があれば経験年数や年齢不問」とまでありますね。マジか!?
 こちらも先ほど言ったように、ソーシャルゲームのサーバサイド開発で用いられる言語ですが、もしかしたら企業の中にソーシャルゲーム開発に打って出ようとして、これらの人材を集めている可能性もあるのかもしれません。


 実際、うちの会社でもソーシャルゲーム開発に関わっていた人はいます。スマートフォンアプリ開発要員として参画していたら、大手SIerにゲーム開発の依頼が来て、そのメンバーの1人としてアサインされた、という経緯があるんです。元々ソーシャルゲームの開発はほぼWebシステムの開発と同じなので、SIerだからソーシャルゲーム開発に関わることはない、と思ってたらそんなことない、いつの間にかゲーム作ってた、なんてことも十分に考えられるんです。







 さて、それではソーシャルゲームってどんなものなのか、解説していきます。







 ソーシャルゲームの大半…ほぼ全てと言ってもいいと思いますが、始めるだけならタダで始められる。ソーシャルゲームはスタートの敷居が凄く低いゲームと言えます。







 元々ソーシャルゲーム自体の起源は大手SNSのオプションという形でした。その中で「FarmVille」のようにヒット作がいくつも生まれてきて、SNSの機能と連動しながら広まっていきました。







 それが日本に入ってきて、携帯電話と融合することで爆発的にマーケットが広がります。日本の携帯電話は、課金システムが整っていて、アプリ内で何か買うと携帯電話キャリアの通信費用と一緒くたにして請求されるんですね。ユーザーからすると面倒なクレジットカードの入力も要らないし、着メロとおんなじような感覚でアプリ内課金が出来てしまう。その気安さがお金を払うことに対する抵抗感を薄れさせ、高収益を上げるまでに至ったんです。


 さて、ソーシャルゲームは大きく分けて2つに分類されます。







 まず一つ目は広告・マーケティング目的のもの。今見て貰っている画像はバンダイナムコゲームズのPSPゲームの「魔法少女まどか☆マギカポータブル」というゲームのキャンペーン用に作られたiPhoneアプリで「マミのドキドキ ティロ・フィナーレ」というゲームです。ゲーム自体は非常にシンプルで、昔のゲームウォッチみたいな感じですね。このゲームは、ゲーム自体で稼ごうということは全く考えてなくて、タダで配ったゲームを遊んで貰うことで、本当に買ってほしいゲームの情報へ誘導することを目的としています。







 このゲームはTwitterと連動していて、クリアするとスコアをTweetすることができます。Tweet内容にはキャンペーンサイトへのURLも貼られていて、それをクリックすることでユーザーに対し本当に売りたいゲームの情報を見せることができる。また、頻繁にゲームで遊んで貰うために、キャンペーンサイトでも企画を行っていて、ハイスコア者が○人になったから特典壁紙画像を配布、なんてこともやってたりします。


 こういうゲームは、実は割と一般的になりつつあって、こういうマーケティング目的のゲームだけを専門に企画したり開発したりする会社も出てきています。







 ソーシャルゲームの分類のもう一つが、アプリ内課金を目的としたゲーム。今回の話の主題になります。







 今見て貰っているのはAppleiTunes Music StoreApp Store、つまりiPhone用アプリを売っているマーケットプレイスの中の、トップセールスランキングです。「トップセールスランキング」なんで売上を稼いでないアプリは絶対にここには載らないはずなんですが、この赤丸で囲っているゲームは全て「無料」のゲームです。でも「トップセールス」に名を連ねるくらいどこかでお金を稼いでる。つまり、アプリ内課金でそれだけの収益を上げているんですね。ちなみにトップ20位までで一個だけ有料アプリがありますが、これはパチスロゲームで一本1,000円以上するものです。







 肝心の課金の対象ですが、いくつかあります。ソーシャルゲームの多くは行動するのに「スタミナ」要素が必要で、それは現実世界の時間経過で回復するんですが、それを課金で無理やり回復させるアイテムだったり、他者から攻撃を受けた時に防ぐアイテムだったり、逆に攻撃の時に有利に働くアイテムだったりを買う事ができます。


 が、そんなものよりなにより一番大きな課金対象は「カード」です。このカードがプレイヤーキャラであり、強化アイテムであり、トレード対象であったりと、ゲームの主軸を担います。現在のソーシャルゲームのほとんどは、このカードのキャラクターでパーティを組んで、ダンジョンを潜って行ったり、他のプレイヤーと対戦を行ったりする形式を取っています。


 この「カード」というのがミソなんです。

 ゲーム内でお金を手に入れる為にはカードを売ったりする必要がありますし、また特定のカードを強くするために、他の有象無象カードを「融合」させる必要があります。これが通常のゲームキャラクターだとそうはいかない。売ったり買ったりすれば人身売買になっちゃうし、強くするために融合とか、カニバリズム(食人行動)か怪しい宗教儀式か、と言った印象を持たせてしまい、想像力豊かな人だったら嫌悪感でゲームどころではなくなってしまう可能性があります。

 でもカードなら「物」です。「人」じゃありません。そういう倫理的にネガティブなイメージを一切持たせず、ゲームキャラクターであり経験値でありトレードアイテムでもある、という非常に使い勝手の良いものとして扱えるんです。もしこれを別の要素で用意しようとすると、ゲーム内要素が増えてゲームが複雑になり過ぎてユーザーは続けてくれないかもしれませんね。







 で、今ちょっと話題になっているのが「RMT = Real Money Trade」。要するにゲーム内のアイテムを現金で取引することを指すんですが、これが横行してて社会問題になりつつあります。今見て貰っているのは楽天オークションですが、特に真ん中あたり、「ドリランド」の「冬姫メイチェリ」というのが3万円強の値段がついていて、7人が入札しています。これがそのまま落札されると、入金を見計らってゲーム内で交換という形で落札者にわたることになるわけです。カードには熟練度が備わっていて、大体こうやってオークションで取引されるものは、出品者がレベルをMAXまで上げて付加価値を付けていることが多いようです。ゲームでレベル上げるのもなかなか一人ではシンドイですから、それを生業としている業者が数人がかりでシコシコレベル上げを行っているんでしょう。ちなみに、これは楽天オークションですが、ヤフオクも似たようなもんです。むしろヤフオクの方が有名ですから、出品数はヤフオクの方が多いと思われます。


 カード自体は課金して入手しようがそうでなかろうが、何が手に入るかは、完全に抽選、「運」で決まります。それを売買するのはパチンコやパチスロと同じ「三点方式」という賭博行為に当たります。現在、日本で三点方式が認められているのはパチンコとパチスロだけですから、RMTは違法に当たります。そもそもパチンコやパチスロだって違法だって言われてるんだから、さもありなん、って感じですね。


 ちなみに、こうやって手に入れたゲーム内のカードなんですけど、実はユーザーには所有権がありません。著作権はゲーム提供元のものですし、データも提供元サーバの中にだけ存在、ユーザーは「カードを使って遊ぶ権利」のみをアプリ内課金で買ってるにすぎないんですね。後からゲームの公開が中止されても、ユーザーはせっかく買ったカードをどうすることも出来ず諦めるしかない、という現状があるんですが、あんまりそれに気づいている人はいないみたいですねぇ。







 そのカードですが、入手手段、というか購入手段は「ガチャ」と呼ばれる抽選で行われます。これが課金に拍車をかける要因になっていて、運が良ければお目当てのカードを一発で引き当てられますが、運が悪いとなかなか強いカードが出てこない。なにくそ次こそは!とかムキになって繰り返しトライしているうちに課金額がかなり行ってる、なんてことが起こるわけです。


 もっとタチが悪いのが「コンプガチャ」ってやつです。これは、何枚かを一組としてガチャで提供し、全て揃うと特典の物凄く強いレアなカードが手に入る、という期間限定キャンペーンとかで開催される仕組みです。たとえば6枚をコンプリートすると特典カードが貰えるものだとすると、最初の3枚くらいは確率の関係もあってポポポ〜ンと手に入っちゃうらしいんです。半分も手に入ったのであればもうちょっと頑張ってみるか、とコンプリート目指してガチャを続ける。でもそこから先はなかなか出ない。諦めようにも課金額はとっくに相当のレベルまで行っていて、今更引き下がれない。結果として全て揃うまでに相当の課金を行ってしまう、といったことが起こるようです。







 それではソーシャルゲームを構成する要素をもうちょっと詳しく見ていきます。







 まずはネットワーク。元々SNSのオプションとして生まれてきたのがソーシャルゲームですから、SNS同様にインターネットに繋がってないとプレイできません。これがけっこうストレスで、GREEとかMobageとかは割とサーバレスポンスも早いんですけど、それでも一行動ごとに、しかもネット環境の貧弱なモバイルでいちいち通信されるとユーザーからしたらたまったもんじゃありません。良くできたソーシャルゲームはゲームの基本部分は殆ど通信を行わずに遊べるような親切設計にしているものもあります。人気ゲームにしたかったら開発側はそういう部分は気を使わなくちゃいけないでしょうね。







 続いてゲーム性。よく既存のコンシューマゲームのヘビーゲーマーは「ソーシャルゲームは画面遷移があるのが気に入らない!あんなのタダの紙芝居じゃないか!」という人がいます。実際のところ、スマートフォンソーシャルゲームは殆どがWebベースの技術要素で構成されているので、画面遷移は当たり前のように存在します。じゃあ画面遷移があるからゲームがつまらないか、というとそんなことは無いし、そもそも画面遷移なんてソーシャルゲームの本質からすればどうでもいい部分なんですね。


 ソーシャルゲームで一番大事なのは「如何に入り易いか」です。課金で稼ぎたくてもまずは始めて貰わないことにはどうにもならない。だから、ゲームはできるだけシンプルで分かり易いルールなのが良いし、さらにゲームのルールや面白さを理解しやすくするために、チュートリアルを徹底的に丁寧に作りこんで、分かり易く段階を追って覚えていけるようになっているものが多いです。で、「熱しやすく冷めやすい」って言葉もあるように、熱中し過ぎちゃうと飽きるのも早くなる。コンシューマゲームなら1ヶ月で飽きられても問題ないんですが、ソーシャルゲームは数か月、できれば何年も遊んで欲しい。長く続けてればそのうち課金してくれることもあるでしょうからね。だから、夢中になり過ぎない程度の面白さであればいい、ゲーム性はそこそこでいいんです。まぁ人気ランキングに入るようなのを目指そうと思ったらそれなりに作りこむ必要はあると思いますけどね。







 次にソーシャル性。他のプレイヤーとのつながりは、ゲームを継続して貰う上で非常に重要です。多くのソーシャルゲームは、ゲーム要素の一部として他のプレイヤーとコミュニティの形成を促すよう設定されています。でも一回他者とつながってしまうと、いざゲームを辞めようと思うと、他の人に悪い気がして辞めにくくなっちゃうんですね。ソーシャル機能があることで集団から抜けるのが抑制される、結果としてゲームを続けてしまう、といったことが起こり得ます。
 また、コミュニティ単位でミッションを遂行する類のイベントも存在します。自分の利益も絡むから、やはり頑張らざるをえなくなる。以前知り合いから聞いた話ですが、ブラウザ三国志で同盟を結んでいると「自分がこの戦で負けると同名全体が危機に陥ってしまう!どうしても食い止めねば!」と課金を行う事がままあるそうです。責任感からゲームをプレイしたり課金を行ってしまう。集団とは恐ろしいですね。
 コミュニティが形成されると、ユーザー同士で背中を押し合うようになるので、よりゲームが盛り上がります。それを狙ってきちんとゲーム設計がなされていることが、ソーシャルゲームでは非常に重要なんですね。







 課金の目的は人それぞれですが、できればゲーム側で「ポジティブ」な課金対象を用意してあげることが望ましいです。スタミナ回復とか罠とか蘇生とか、ゲームを続けるのには確かに必要なんですが、そういったものに金を払うと勿体ない気がしちゃうもんです。それよりはコレクター精神を煽るようなもの、先ほど紹介した「カード」のようなものが望ましいです。なにせ日本人にはライダーカードやビックリマンチョコのように、お菓子捨ててまで買い続けるほどコレクター精神が浸透していますから、これをソーシャルゲームでやっても効果は抜群です。実際今ソーシャルゲームが稼ぎまくってるのも、このコレクター精神を刺激して「ガチャ」で運任せにしているあたりです。







 で、ソーシャルゲームのターゲットユーザーなんですが、どちらかというとライトゲーマー、もしくはそれまで殆どゲームをやったことない人の方が望ましいです。ソーシャルゲームはゲームを殆どやった事無い人でも入り易いように設計されているのもあるんですが、ヘビーゲーマーは、物足りなくて「自分ルール」を作っちゃうことがあるんですね。バイオハザードでナイフオンリークリアとかをやっちゃう人がいるように、課金を絶対にしない、というルールを設けてプレイすることは全然あり得ます。逆にライトユーザーは過度なレベル上げとかやったことが無いから、めんどくさくなって課金に走るのも早いんじゃないかと思ってます。だから、もし自分でゲームを開発・公開するのであれば、ライトユーザーに狙いを定めた方がいいでしょうね。







 ところがですね、そういう今まで上げてきた要素を全て覆すほど強烈なコンテンツが最近あらわれました。







 今見て貰っているゲームは「アイドルマスター シンデレラガールズ」という、バンダイナムコゲームズがMobageで公開しているゲームです。ファンの間では「モバマス」とか「モゲマス」と呼ばれているみたいです。自分で育てるアイドルを攻守に分けてユニット編成し、他のユーザー…プロデューサーと呼んだ方がいいかもしれませんが、とライブで戦ったり、衣装を集めたり、アイドルの女の子を集めたりします。この辺のゲームシステムはその他のなソーシャルゲームと殆ど変りません。







 このゲームが他と大きく異なるのは、コンテンツ自体が元々持っている魅力やポテンシャルです。ちょっとオタク的な解説になっちゃうんですが…。


 「THE IDOLM@STER」通称「アイマス」は元々2005年7月26日にアーケードで稼働が開始されたゲームです。ちなみに7/26は私の誕生日でもありますのでよろしくどーぞ。話は戻して、アイマスはその後マイクロソフトのゲーム機「XBOX360」に移植されますが、本格的に人気が出るのは動画サイト「ニコニコ動画」がサービス開始されたあたりからです。このゲームは3Dのキャラクターが良くできているんですが、ステージシーンがあって曲に合わせてキャラクターが歌ったり踊ったりするんですね。それを動画に撮影し、別の自分の好きな曲にかぶせ、編集して踊りがピッタリ合うように調整する「MAD」と呼ばれる動画が引き金になって注目を浴びるようになります。キャラクターの設定も凝っていて魅力的だったことから二次創作が発展し、徐々にファンが増えていきました。動画をuploadする人は「プロデューサー」と呼ばれて尊敬され、プロデューサー同士でつながりが出来るようになり、今では巨大なコミュニティを形成するまでに至っています。TwitterなどのSNSを活用してコミュニケーションを取り合い、ネットだけではなくオフ会や同人誌即売会、キャラクターの誕生日イベントのような、現実世界でも交流を持つ機会が数多く作られていきました。

 その人気に呼応する形で、昨年アイマスは深夜枠でアニメ化を果たします。それの出来が良かったもんだから更に人気に拍車がかかりました。そのアニメ放映のタイミングで「モバマス」は公開されました。こういう人たちはライトユーザーもヘビーユーザーも関係ありません。キャラクターとコンテンツに対する愛だけでどこまでも突き進んじゃいます。元々ネットワークが形成されているから、MobageSNSなんか活用しないで、Twitterとかでガンガン情報を交換し合う。熱意もハンパないので個人でWikiとか作って公開しており、それらを見れば初心者でもあっという間にベテランと同様の情報が手に入るようになる。

 更に、元々「XBOX360」のアイマスには、楽曲や衣装、ミニドラマといった後付けコンテンツを有料配信(ダウンロードコンテンツ = DLC)する仕組みが用意されていました。作品のファンはこれを買うことに慣れているので、それがソーシャルゲームに代わっても課金に躊躇することなく踏み込めるわけです。







 こういう超強力コンテンツを捕まえることができると、圧倒的に強いですね。まさに大漁。遊戯王カードが人気だった頃に担当者が「まるで金を刷っているいるようだ」と高笑いしてた、なんてエピソードを聞いたことがありますが、こちらはその印刷や流通のコストさえ不要なのだから、もっと効率のよいビジネスと言えるでしょう。







 結果としてこのモバマスも、重課金者、どころじゃない、いわゆる「ソーシャルゲーム廃人」を生み出すまでになってしまいました。今見て貰っているのは、モバマスコンプガチャに15万も突っ込んでしまった人の話を、別の人が冷静に分析している記事です。15万って、一か月じゃないですよ、たった一週間で15万もの大金を使ったらしいです。スマートフォンじゃないですが、ブラウザ三国志には年間数百万単位で突っ込んだ廃人がいたようですが、上手くコンテンツの魅力を作り上げると、とんでもない収益を上げることが出来るようです。それが正しい・正しくないの話は別にして、ですが。







 さて、最後にソーシャルゲームの作り方を解説していきます。といっても軽く言語やFWを紹介する程度ですけどね。







 今見て貰っているのはiPhoneGREEMobageの画面です。どちらもMobile Safari上で表示しています。この画面はまだゲーム画面ではないんですが、このまま個別のゲームまで掘り進んで遊ぶことができるようになっています。







 先ほどからもちょいちょい言ってましたが、ソーシャルゲーム、特にスマートフォンで動くソーシャルゲームは、その多くが「HTML5」を中心としたWebベースの技術で構成されています。

 iPhoneのAppStoreの仕組みを知っている方には説明不要かもしれませんが、iPhoneのアプリって、公開日を開発側がコントロールできないんですね。AppStoreにアプリを公開するためには、Appleの審査を通らないといけないんですが、ちょっとした理由でリジェクト(やりなおし)になってしまう、もしくは他のアプリが多すぎて審査自体が行われるまでに1ヶ月近く待たなくてはいけない、なんてことが平気で起こるんです。ソーシャルゲームは飽きさせない為に、頻繁にイベントを開催したり、キャンペーンを行ったりするんですが、iPhone開発のデファクトスタンダードであるObjective-Cを使っていると、その都度アプリをリリースしてコンテンツを入れ替えなくちゃいけない。でもAppStoreを対象とした場合、バレンタインイベントのような季節がらのイベントを予定通りにリリースことなんて、ほぼ不可能です。
 ところが、HTMLベースなら簡単。アプリに元々含まれるのは、ブラウザ機能とユーザビリティを向上させるためのいくつかの実装のみ。あとは都度通信を行ってサーバからHTMLをダウンロードさせればOK。いちいちイベントごとにAppStoreに更新申請を出さなくても済みますし、人気が無い仕掛けがあれば即時廃止にすることができます。ソーシャルゲームのようにユーザーログを見ながらゲームの方向性を変えていくものであれば、HTML5ベースというのがベストチョイスと言えると思います。

 あと、HTMLベースで作ると、iPhoneでもAndroidでも、更にWindows Phoneでも殆ど内容を変えずにリリースすることができます。クロスプラットフォーム対応を考えても、HTML5というチョイスは優れているんですね。







 今見て貰っているのはDeNAが公開している「ngCore」というゲーム開発FWです。このFWはフロント…つまりスマートフォン上で動く部分は、HTML + JavaScript + CSS で開発することができます。更に、サーバサイドにnode.jsを使っているのでサーバサイドもJavaScriptが書ければ実装できちゃうんですね。







 つまり、JavaScriptさえ書ければソーシャルゲームが作れちゃう。JavaScriptが今非常に重要な技術要素であることが、分かってもらえるかと思います。







 というわけで、やっと本題です。今日はJavaScriptでゲームを作って貰おうと思っています。といってもまっさらな状態で書くのは時間的にも無理があるので、ゲーム開発用のライブラリを使用します。こちらはユキビタスエンターテイメント(UEI)という会社が開発・公開しているゲーム開発用FWで「enchant.js」と言います。メインライブラリは30k程しかないんですが、かなりしっかりしたゲームを軽量に作ることが可能です。







 ちなみにこちらはそのUEIの社長の清水亮さん。どちらかというとアルファブロガーとして有名ですね。後は電脳空間カウボーイズのケイス淀橋氏…のお兄さんとしても知られてたりします。非常に面白い文章を書かれるので、良かったら読んでみて下さい。







 こちらは同社が公開するサイトで、enchant.jsで作ったゲームを投稿・公開できる「9leap」というサイトです。25歳以下の学生が投稿した場合には原稿料が払われることもあるそうです。その他、ゲームコンテストも頻繁に開催していますが、やっぱりこちらも学生のみが対象です。我々は残念ながら対象外ですねぇ。


 enchant.jsにしても9leapにしても、全部無料で公開・運営されています。これだとUEIはどこにメリットがあるんでしょうか…?これは私の憶測ですが、UEIは「青田買い」がしたいんじゃないでしょうか。コンテストやゲーム投稿などで新しい才能をいち早く見つけられる環境を整備し、優秀な人がいれば学生のうちから声を掛け、同社に関わって貰う。そうやって若い才能を集めて、自分たちのビジネスの推進力にしたいんじゃないかと思っています。







 ちなみに、enchant.jsはライセンス的にも商業利用が可能で、企業がアプリ作って公開することも可能です。ただ、9leapやwise9(enchant.js他ゲーム関連の情報サイト)で紹介したいので、できれば一報が欲しい、とありました。また、実際にenchant.jsを使って開発したアプリを公開した事例もあります。このゲーム自体は無料なんですけど、有料でもたぶん大丈夫なんじゃないですかね? なので勉強ついでにゲーム作って、こっそり小遣い稼ぎでもして貰えればいいんじゃないかなと思います。なお、うちの会社は副業禁止なので、あくまでこっそりね。







 というわけで早速コーディングを始めましょう。enchant.jsで開発する為にはブラウザにGoogle Chromeを利用して下さい。エディタは何を使ってもらっても構いません。







 こちらは今回開発する予定のゲームです。「jsdo.it」というJavaScriptを公開出来るサイトに、サンプルを用意しておきました。これは熊をタッチした回数を競うゲームですね。







 もう一個。たぶんこの課題までは出来ないと思いますが。上から降ってくる林檎を熊を動かして取っていくゲームです。先ほどのゲームもそうですが、enchant.jsのサンプルとして公開されていた物を私が「jsdo.it」に写経したものです。







 あと、個人で勉強してみたいけどイマイチJavaScriptの書き方が分かってない、という方は「ドットインストール」というサービスを利用すると、動画を見ながらプログラミングを勉強して行くことができます。JavaScriptのメニューもいっぱいあるので、是非トライしてみて下さい。