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ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

「食のキュレーション」を生業とする外食サービス



 昨晩もいつもの行きつけのお店に寄りました。天候は大雨にも関わらず大盛況だったようで、カウンターに座り、マスターにおかえなさいと声をかけられるのに続いて、「ちょうどついさっきお客さん捌けて落ち着いたところなんですよ。」と一言。この店も最近人気のようで毎日目の回るような忙しさだそうです。わりかし早い時期から利用していた身としては、自分の先見眼に鼻を高くしたいところですが、繁盛しているのにオレは一切関係無くマスター以下スタッフの努力の結果ですから、身の程をわきまえておこうかと思います。


 カウンターで飲みながら話をしていると、その忙しいさなかに東京ビッグサイトで開催されている食品業者用の展示会に行って来た、という話を聞きました。ランチのディナーの合間に高田馬場から国際展示場まで行ってきたのですから、その気合いたるや大したものです。とはいえ、一時間程度しか見ることができなかったそうですが。試供品もいっぱい貰ってきたらしく、見せてくれたのですが、ベーグルやドレッシングなどなどアラカルトに富んでいました。IT業界の同会場のイベントと比べるとずいぶんと華やかそうです。

 マスター:「ドレッシングとかいくつか試食してきたんですけど、すっごい美味しいんですよ。うちも使おうかな。
 オレ  :「いやいや、ここのドレッシングだってマスターのオリジナルでしょ? 美味しいじゃん。オリジナリティとか考えると、今のままか、自分で別の味作るとかした方がいいんじゃない?
 マスター:「でもケータリングサービスとか始めたし、これ以上(注文が)増えると手が回らないんですよね。手間かけると人件費ばっかりかかっちゃうんで、こういうところで何とか工面できないかな、とか。それにすごく美味しいから。
 オレ  :「そんなに美味しいんだ。
 マスター:「美味しいですよ。値段もそんなに高くないし。さすがにドレッシングとかはそのままサラダに使ったりはしないですけどね、ソースのアクセントにしたりとか。あー、パンフレットもっと貰ってくれば良かった。


 マスターは忙しく手を動かしながらも、展示会をゆっくり見てこれなかったことを悔やんでいました。その後の話だと、どうやら彼は今日も展示会に行く覚悟を決めたようです。よほど衝撃的だったのでしょうね。ちなみにその試供品のドレッシング、オレもマスターからひとつ貰いました。今晩にでもさっそく試してみたいと思います。





 マスターは人気店のシェフで、かつては丸の内の大きなフランス料理店で修業をしてきた人です。その舌と腕は確かで、手頃な値段で美味しい料理を提供してくれます。だからこそ、オレも中身の乏しい財布を握り締めて通い続けているわけでして。
 そのマスターが絶賛するほど美味しい調理済み製品が、あの広大な東京ビッグサイトを埋め尽くすほど、世の中には出回っている、というのがオレには衝撃的でした。それはおそらく我々が店舗で見ることの無い、専門店とかでしかお目にかかれない品ばかりなのでしょう。上記のイベントは、招待チケットを持たない人は有料らしいんですが、それでも覗いてみたい衝動に駆られます。


 こういう製品は外食産業で働く人向けに開催されます。おそらくマスターがそう考えたように、実際に店舗で出す食事に利用している店もいっぱいあるのだと思います。一般家庭で醤油や味噌を選ぶような感覚で、調理済み食品をチョイスして自分の店で提供しているのでしょう。よくよく考えれば肉だって魚だって調理済み製品にちがいないわけです。冷凍してあったり加工して真空パックなんかされていると余計「製品」っぽく見えるようになります。どの程度調理してあるか、その度合いの違いがあるというだけなんでしょう。そうやって考えていくと、基本的には「素材」と「調理済み製品」の境目はあまり無いのかもしれません。


 「調理済み食品を使っている」と聞くと、一般人としては「オリジナルじゃないのかよ!」とツッコミたくなる部分もあるのでしょう。一方で知らなければ「美味しい」と絶賛して食べているわけですよね、昨年末に大騒ぎになった食品偽装問題しかり。その店オリジナルが食べたいのか、美味しいものが食べたいのか、我々は何を求めて外食に繰り出しているんでしょうか?

 たぶん、ケースバイケースなんだと思います。単に腹を満たしたい、安くて美味しいものを食べたい、インパクトがほしい、高級感を味わいたい、どれも外食産業に求められるニーズなんだと思います。その一方でお店側は、より美味しいものを提供しようと値段と手間とを秤にかけて、必要に応じて調理済み製品を利用する、という選択を取ることもある。それはズルとかではなく、企業努力の一部と呼ぶべきです。



 ならば、いっそ逆に「当店のメニューには調理済み製品が使われています」と大々的に掲示して、それを売りにできないか、調理済み製品を必ず使用した料理だけで構成されたメニューを出す店ってできないのだろうか、と考えました。


 まず、「この料理にはこれとこれが使われています。」とメニューに表示しておきます。
 同時にそれらの注文方法も掲示します。可能であれば、テーブルの上にタブレット端末があって、そこから直接注文できるのが望ましい。
 実際に購入が完了すると、その調理済み製品を製造した企業から店舗に対して広告報酬が支払われます。アフェリエイトの実世界バージョンですね。


 お店に食べに来た客からすれば、「購入すればこのお店の味が自宅でも再現できるかもしれない!」と思いますよね。まぁそうは問屋が卸さない、お店側で一工夫して出しているので、簡単には再現できないわけです。客はどうやったらお店の味に近づけるのか知りたくて、結果的に繰り返しお店に通うようになるんじゃないでしょうか。


 お店側に求められるのは、それだけじゃありません。冒頭の展示会に溢れるほど数多くの食製品の中から、美味しい製品を見つけ出してくる能力が必要です。昨今の情報社会では「キュレーション」がもてはやされていますが、これはいわば「食のキュレーション」です。美味しい調理済み製品を見つけ出して、その店ならではのアレンジを加えて客に提供する。星の数ほどある調理済み製品から選定するのはなかなか大変でしょうが、それゆえに価値があるんじゃないかと思います。




 レジ回りでドレッシングなんかを売っている飲食店は良く見かけますが、大体その店オリジナルのものを売っている程度です。開き直って「調理済み製品を使った料理だけ」を扱った豪胆な店はおそらく無いはず。このアイディアを実現させるためには料理人としての腕とセンスが必要ですし、まだリスクの洗い出しとかはしてないのでそのほかにも課題はいっぱいあるでしょう。実現性については分かりませんが、実現したらこれまでとはまたちょっと違った面白いビジネスになるんじゃないかな、と勝手に思った次第です。