ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

本を読むときは頭をカラッポにしないと頭の中でツッコミが止まらなくなって最終的に挫折する

 こないだ友人と飲んだ時に話題に上った話です。その場の全員がIT勉強会のコミュニティで知り合った仲で、必然的に話題もそっち方面になったのですが、そのときは「研修」の受け入れ方というか受講する際の姿勢が話題のひとつになりました。
 

 ITシステムの開発には「スクラム」という開発プロセスフレームワークがあります。「アジャイル」という組織のカルチャーを指すキーワードとセットでIT業界で採用される*1ケースが昨今多くなっているのですが、アジャイルスクラムもそれ以前の開発スタイルとはマインドセットからして大きく異なるんですね。なので、「認定スクラムマスター研修」みたいなセミナーに、そういう「それ以前の開発スタイル」しか体験してこなかった人が会社の金で参加したりすると、かなり面食らうのだそうです。ま、そりゃそうですよね、システム開発と言う目的は同じなのに、今まで自分がやってきた仕事の進め方と全然違うやり方を教えられるわけですから。参加者は、教わるやり方で本当に上手く行くのか……もっと言えば、自分たちがこれまで培ってきた仕事が新しいやり方で台無しにされんじゃないか、と懐疑的になり、疑心暗鬼になり、その姿勢としてセミナー講師を質問攻めにするんだそうです。だから研修は表面的には非常に活発になる。でも当の参加者は、疑問点や不安点のリストで頭が埋め尽くされており、実際研修が終わってみると、払った費用分には到底見合わない程度の学びしか得られない、アジャイルスクラムが全く身についていない、なんてことがあるんだそうです。さもありなん。




 このエピソードに対する友人の一人の指摘が鋭かったです。友人曰く

 「このケースの場合、参加した人のそれまでの成功体験というか身についた体験が邪魔しちゃってるんでしょうね。本来は終わりまで講習受けて全部受け入れて身についてから『さあじゃあ今までの方法とは何が違くて何が良くて何が悪いんだろ?』って比べるのがフェアじゃないですか。それを教わった端から自分の体験と比較して、あれがダメだ、これは役に立つのか、なんて全体像も見えないうちにいちいち比べてたら、そりゃなんも頭に入ってこないですよ。

 それを受けてもう一人の友人曰く

 「俗に言う『Unlearn』ができてない状態で研修に臨んじゃってるってことですね。

 「Unlearn」とはそれまで身についた知識や体験を一回横に置いて、目の前の学びの機会に対してまっさらな気持ちで臨む、という準備のことです。詳しくは以下の記事を参照してみてください。


project.nikkeibp.co.jp


 この「Unlearn」、言葉自体はよく耳にしていたんですが、オレ自身それまでピンと来ていませんでした。学びを捨てて学びを得る?我ながらちょっとピントの外れた理解をしていたんです。が、このエピソードを通して考えると、なるほど「Unlearn」の重要性は非常に良く分かります。



 と、ここまで話していて、オレ自身の「読書」の時にも、前述の研修受講者と同じことが起こっているんじゃないか、と思い至りました。
 オレがよくあるのが、本を読んでいると記述内容にツッコミを入れたくなることが頻繁に起こるのです。ツッコミの対象が気になって読み進まず、粗探しをはじめ、やがて本の話の流れを忘れて章のはじめまでページを戻し……なんてことを繰り返しているうちに、その本を読む意欲を失ってまた積読の山に戻す、ということを繰り返してしまうのです。


 そんなの単にオマエが集中力無いだけだろ!と思われるかもしれませんが、一方であっという間に読み進められる本もあるのです。小説やラノベは寝食を忘れて読みふけることもあります。自分が既に習得済みな知識領域の技術書やビジネス書については、特に抵抗無く読み進めることが出来ます(途中で退屈になって積読に戻したくなる衝動に駆られることはままありますが)。
 前述のように頭の中でツッコミを繰り返した挙句に放棄してしまう本は、主に自分が未修得・未理解の知識領域の技術書・ビジネス書に多い、と、この時初めて気がつきました。改めて自己分析すると、なるほど、読み通せない本にはそれ相応の特徴があったわけです。小説やラノベは創作だから事前知識がそもそも無いし、続編モノでも前作以前が前提に書かれているため、そもそもツッコミの必要が無い。習得済み知識の技術書・ビジネス書は、基本的に自分が同意できる内容しか書かれていないのだから突っ込みの必要が無い。読書の際に頭の中でツッコミが止まない本は、自分のそれまでの知識や体験が邪魔をして新しい知識の受け入れを無意識に拒否していたからこそ起こっていた、ということが分かりました。
 つまりオレは、特定の本に対して、読書をする準備……「Unlearn」をしないで本を読もうとしていたために、読破できずに挫折していたのです。


 そんな自身の話を宴席の友人たちに話したところ、そこそこ同意を得られました。読書中に頭の中のツッコミが止まらなくなるのはオレだけじゃなかったんだ……ッ!!(と信じたい)


 そんなこんなを踏まえると、新しい知識領域の書籍(技術書・ビジネス書・実用書)を読むときには、以下のような読み進め方をした方がよさそうです。

  • 今から自分が読む本は100%正しいと自分を信じ込ませる
  • 読み進んでて頭の中でツッコミが発生したら、とりあえず印だけ付けて、頭に浮かんだ疑問や反論は一旦飲み込み、そのまま読み進める
    • 印つけたついでに頭に浮かんだ疑問や反論もついでにメモってもいいかも
  • 全部読み終わった後で印の箇所を見返し、整理する


 要は、本読むときは極力頭をカラッポにして読むってことなんでしょうね。昔人気アニメの主題歌が「頭カラッポのほうが夢詰め込める」なんて歌っていましたが、詰め込めるのは夢だけじゃなかったみたいです。森雪之丞鳥山明は偉大だなぁ。

*1:カルチャーなのにツールだと思って導入するバカが日本のIT業界には溢れ返っている、という話は今回は触れないでおきます。