1/19(土)、「水樹奈々 LIVE GRACE 2013 -OPUSII-」in さいたまスーパーアリーナ に行ってきました
はじめに
先週土曜日(1/19)はさいたまスーパーアリーナで開催された「アニメロミックス presents NANA MIZUKI LIVE GRACE 2013 -OPUSII- supported by JOYSOUND calbee ポテリッチ」ってタイトル長げーな、要するに「水樹奈々」という歌手のライブに行ってきました。
「水樹奈々」とは?
Wikipedia先生によると、元々「のど自慢大会荒らし」として鳴らしていたのがきっかけで歌手デビュー、その後所属事務所の勧めもあってアニメの声優として活躍し、近年は「声優出生の歌手」として数々の記録を打ち立てるような目覚ましい活躍をされているそうです。先日4年連続で紅白歌合戦に出場していたのは記憶に新しいところです。元々は演歌歌手として売り出そうとしてた、というんだから、人生は分からんもんです。
参加の経緯
さて、オレはこの水樹奈々嬢の歌を、これまでただの一度も聞いたことがありませんでした。紅白歌合戦は毎年我が家の茶の間に流れているので耳にしたことがあったかもしれませんが、「ながら」なのでどんな曲かは覚えていません。
ついでに言うと彼女が出演しているアニメ作品もただの一度も見たことがありません。声優さんであることだけは以前から知っていました。もしかしたらアニメは見たことあったかもしれないけれども、彼女が出演しているという認識の上で視聴した経験はありません。
ビジュアルはアキバの店舗でポスターとか見かけたことがあるので、美人さんだということ、堂本剛(Kinki Kids)の同級生というどーでもいいコネタから、年齢が割と近い*1、ということは知っていました。
要するに「年齢が比較的近いけどその割に若くて美人な声優さんで、歌は聞いたことないけどどうやら上手いらしい」というのがオレの「水樹奈々」嬢の認識。
ではなんでコンサートに行ったか?これは比較的単純。「たまたまチケットがあったから」。
前会社の後輩が重度のアニオタなんですが、彼が自身の業務状況の改善を直談判すべく上司と直接対決の場を要請したら、ちょうどライブの時間帯しか都合つけられなくなってしまい、泣く泣くチケットをドブに捨てるところだったのを、オレが定価*2で買い取った次第。元後輩はまだ平社員で給料が安いので、高額なライブチケットをフイにしてしまうのを気の毒に思い、救済の手を差し伸べた、という形になります。
しかし、オレにしたってライブチケットは高額なわけで。全然名前も聞いたことないアニソンライブだったら無視を決め込んだでしょう。
ですが、今回のライブはたまたま「声優でありながら紅白にまで出演した、飛ぶ鳥落とす勢いのスーパーアイドル」なわけですよ。彼女のライブチケットはなかなか手に入らないらしいし、入手の苦労が省けて珍しいもの今をときめくスーパーアイドルがどんなものか生で確認できるなら、そんなに悪くないんじゃないかな、と判断して、元後輩からチケットを引き受けることにしました。
事前準備
さて、繰り返しになりますが、オレはこのライブの日まで水樹奈々嬢の歌を、ただの一回も聞いたことがなかったのですよ。
なのでとりあえずは一夜漬けでも予習をしておこうと、事前情報をある程度仕入れ、それに基づいてiTunes Music Storeでベスト盤2枚と最新のアルバム1枚を購入。iTunesで\7,200-も買い物したのは初めてだ。
さいたまスーパーアリーナ
前置きが長くなりましたが、いよいよ本題。
今回の会場は「さいたまスーパーアリーナ」。ここにオレが行くのは2005シーズンのレッズフェスタ以来*3だったんで、場所をすっかり間違えていた*4のは内緒の話。
会場は普段からなのか、水樹奈々ライブ仕様なのか、イルミネーションが鮮やかでした。観客も女性が意外に多くて、なんというかデートスポット感が満載。30代独身男(※彼女無し)にはきつい・・・。
今回の席はレベル500…要するに5階で、ステージに向かって左脇の席でした。主役から30m程度の距離があったと思いますが、ステージを俯瞰する形で会場全体が非常によく見渡せました。以前参加したライブではアリーナ席の後方だったこともあって、ステージ上の主役も会場の様子もまるで分からない、という状態だったので、「水樹奈々とは何者なのか?」を知りにきたオレとしては、この席はアリーナ最前列よりも喜ばしい限りでした。
しかし、この「さいたまスーパーアリーナ」というのは素晴らしいイベント会場ですね!前回は気付かなかったんですが、観客席が、まるで崖に張り付くような高低差で、絶対に前の人の頭が邪魔にならない。座席前の通路がやや狭くてトイレに行きにくいのも、この高低差をつけるための副作用なんでしょう。ただ通路が狭いだけの東京ドームとはえらい違いだ。
その中でちょっとでも通路を広くしようと工夫が見られるのがこのカップホルダー。普段はただの鉄製の輪っかで、ジュースを置くときだけ起こせばいいようになってるんですよ。ジュースの底はちょっとした突起に引っ掛けるだけ。すごく良いアイディアだなー、と感心しました。
ここでサッカーの試合見たいわ、札幌とか新潟とかに作ったら今すぐ秋春制に移行できそう。・・・あ、でもサッカーやるには会場中央の格闘技用リングっぽいのが邪魔になるか。
他の人からのアドバイスで、青色のサイリウムを1本持参。これは恐ろしいことに観客全員もれなく用意していたので、もし持参していなかったら壮絶に浮くところでした。あっぶねー。
ライブスタート!
「まもなく始まります」という館内放送と共に場内で一斉にサイリウムが輝きだし、歓声や掛け声で場内全体がざわつき出します。一瞬静まった間に小さな女の子と思われる「まだですかぁ〜?」という声で場内が和んだという一幕もありました。
ステージ上は比較的簡素な装飾のみ。ステージ中央に深紅のカーテンのかかった天蓋のようなものがあり、それ以外にはほとんど飾りがない状態でした。が、これには理由がありました。
オーケストラの音合わせと思われる音色が響くと、その音が止んだ数瞬後にステージ脇のオーロラビジョンでムービーが始まり、終了と同時に爆音が鳴り響いて、ステージ上唯一の装飾の中から主役が登場しました。
後の様子は、まぁ、ライブDVDが発売したらご自身で見て頂くとして、オレの感想をいくつか書いていきたいと思います。
一夜漬けは意味無かった
まぁ前日にアルバム買って、それからずーっと聞いてたとしても、各曲多くてたかだか1〜2回しか聞けないわけですよ。覚えられるわけないですよね、そんな回数で。そんな訳で直前の一夜漬け予習は完全に無駄になりました。ぜんっぜん分かんないんですよ、ただの一曲も。「○○の主題歌で〜*5」とか「オーケストラと言えば〜」とか色々前振りしてくれるんですけど、そもそも前提知識がないからちっとも盛り上がりポイントが分からない。う〜ん、これは弱った。
だからもう思い切り開き直りました。サイリウムを振るのもアイマスライブ5th以来数年ぶりでしたが、あの時はまだかろうじて数曲知ってる曲があったけど、今回は周りに合わせてサイリウム振ることばっかり考えていたらちっとも頭に入ってこないので、サイリウムは振ってるふりをする程度。極力楽曲を聞くことと、ステージや会場の様子を注視することに意識を傾けました。
だから、サイリウムの振り方は周囲から相当浮いていたでしょうけど、オレはオレなりにしっかり楽しんでこれましたよ。あと、購入した楽曲も無駄にはならず、ライブ終了後に復習がてら聞いています。やっぱりライブ中で歌われた曲はちゃんと覚えていて、耳に残りますね。
フルオーケストラ!!
今回の「LIVE GRACE」は通常の水樹奈々嬢のライブとは異なり、演奏に神奈川フィルハーモニー管弦楽団90余名によるフルオーケストラを使うというゴージャスぶりでした。「LIVE GRACE」は2年前にも同じ形式のものを開催したことがあり、今回改めてチャレンジすることになったんだそうな。
ライブは大きく3部構成に分かれ、フルオーケストラをバックに歌う序盤、普段のライブで水樹奈々嬢をサポートするバックバンド「Cherry Boys」とアコースティックバージョンにアレンジされた楽曲を歌う中盤、フルオーケストラ、バックバンド、更にこのLIVE GRACEの為に結成されたコーラス部隊合わせた総勢183名をバックに歌うクライマックス、という豪華な構成。ステージの装飾が割合シンプルだったのは183名もステージに並ぶからであって、決してシンプルさを売ることが目的じゃなかったんですねぇ。
率直に言えば、このオーケストラを配した特別バージョンのライブは、水樹奈々初心者のオレにとって非常に助かりました。
まず注目するポイントが通常のライブより多かったこと。知らない曲しかないんでどうしても集中力が持たない(ましてやのめり込んで狂喜乱舞することなんて到底無理!)んですが、オケのどこが鳴っているのか、どんな風に演奏しているのか、指揮は、水樹奈々嬢との連携(?)は。目を配ると距離があっても案外様子が見て取れるもので、そうやって「特別バージョンの水樹奈々ライブ」を視線を様々に移すことで堪能していました。
あと、彼女がお色直しでステージを10分程度空けることがしばしばあったんですけど、これをつないで会場を盛り上げたのがオーケストラの演奏でした。スターウォーズや組曲惑星(ホルスト)といったメジャーな曲をフルオケで聞けるという、オレからしたら図らずもゴージャスなサプライズ!
オレは一時クラッシックにハマってた時期があって、スターウォーズも惑星も死ぬほど聞いてたんですよ。水樹奈々の曲は分からんけどもこっちなら分かる!なので、単純に楽曲を楽しんだ、という意味では、主役不在の「つなぎ」の時間が、オレにとっては一番楽しかったです。
水樹奈々は○○○系歌手だった
以前からずーっと疑問に思ってたんですが、「水樹奈々」という歌手はどのジャンルに分類されるんでしょうか? 声優でアニメ主題歌を多く歌うから「アニソン歌手」なのか、紅白歌合戦に出るほど日本のポップシーンで名をはせた歌手だから「JPOP歌手」なのか、ビジュアルが華やかでひらひらしたイメージがあるから「アイドル」なのか。これは予習で彼女の楽曲を聴き続けている間もずっと疑問のままでした。可愛らしいビジュアルとは異なりパワフルな歌声でアニソン歌手というにもアイドルというにも歌が本気過ぎるし、そうは言ってもJPOPに分類されるほど一般認知が進んでいるようにも見えないし。オンリーワンといえば聞こえはいいけど、他人に説明できるような言葉が見つからないうちは自分の中でとても気持ち悪い訳でして…。
でもライブの様子を見ていてやっと分かりました。水樹奈々はビジュアル系歌手だったんですね!!
ビジュアル系というと、オレと同世代の方だと昔のX JAPANとかSHAZNAとかMALICE MIZERとかをイメージするかもしれません(我ながら古いラインナップだ…)。今はあそこまで派手ではないものの、髪をカラフルに染め、容姿端麗なバンドマンたちが舞台映えする化粧とやや現実離れした衣装でパフォーマンスを繰り広げるところは系統として変わっていません。歌も、比較的耳に馴染み易いJPOPと近しい印象を与えるメロディーに、若い世代に共感を得やすい歌詞(恋愛・友情・ある意味では中二病的なものも含む)が多いです。あと、ロックに寄りすぎない、というのも大事。
アイドルと共通点は多いですが、アイドルは清純で親しみやすいイメージを大事にする(それこそがファンを引き付ける最大の要素であるため)ので、あまり髪や化粧を現実離れしすぎないようにしている傾向があります。
翻って水樹奈々嬢、ファッションはまんまアイドル寄り。楽曲も若い世代の共感を得やすいメロディーだったり歌詞だったりのものが多いです。彼女はアニメ主題歌を多く歌うので、歌詞やメロディーがやや中二病寄りだったりファンタジー寄りだったりする傾向が強いですね。ただし、彼女自身のヴォーカルのレベルの高さ・力強さがアイドルのそれと一線を画し、「そんじょそこらのアイドルや声優では比較にならない」と思わせるほどの迫力をもちます。(だからこそ彼女がどのジャンルに分類される歌手なのか、判別が非常に難しいのですが)
これだけだと、彼女がアイドル(アニメソング歌手含む)なのかビジュアル系なのかの判別はつきません。が、それに加えて、オレの中でたったひとつだけそれらを明確に分ける基準があり、それによって彼女が何者かが明確になります。それは
「間奏でオイッ!オイッ!と合いの手を入れるか入れないか」
前に、過去にかなり有名だったビジュアル系バンドの元ギタリストから、「ライブ中にオイッ!オイッ!言うのが清く正しいビジュアル系だ」という話を聞いたことがあるんですよね。ロックバンドでも同様の傾向はあるかもしれませんが、少なくとも自他共に認めるビジュアル系バンドの中の人がそういってるんだから間違いないでしょう。
で、水樹奈々嬢のライブの最中にもこの「オイッ!オイッ!」という合いの手はありました。彼女自身が拳を振り上げてあおっている様子もありましたし、まぁまずビジュアル系と分類していいんじゃないかなと思います。ビジュアル系が男だけだという決まりはどこにもあるまい。
総括
とにかくパワフルなライブでした。楽曲が分からないなりに、しっかり料金分楽しんでこれたと思っています。
この日ライブを見れて本当に良かった、と思うのは、なんといっても彼女のプロフェッショナリズムです。
オレには、水樹奈々嬢がこの舞台の為に120%完璧すぎる準備をしてきていることが、素人目にもはっきりと感じ取ることができました。様々な仕掛けが施された演出。観客を魅了してやまない歌唱力とパフォーマンス。3時間近いライブを歌いっぱなしに踊りっぱなしでも最後まで一切声のかすれや疲れを見せなかった体力。あれだけの人数ならば全員で合わせての練習の機会などそれほど持てなかったはずなのに、オーケストラやコーラスと完璧なハーモニーを紡ぎあげていたこと(当然歌詞の間違えなんか一切ない)。スタッフ全員をリスペクトし、MCで上手に観客と一体化させていった話術。どれをとっても超一流のエンターテイナーとしてライブをまとめ上げていました。
それもおそらくは「努力」で。
あんな緻密な舞台、「才能」なんかではそうそう作れるわけがない。何十回、何百回とシミュレーションとリハーサルを繰り返し、数少ない本番に近い環境での練習のチャンスまでに完璧な準備を済ませ、本番までにありとあらゆるものを積み重ねて臨んだ。当然それらは楽しみながらこそやれているんでしょうが、我々からしたら気の遠くなるような途方もない努力の果てに、あのライブが成立していたんでしょう。本当に頭が下がります。
オレは以前、トータス松本のライブを観に行ったことがあるんですが、彼のライブはもっとフランクで自由な印象を受けました。トータス松本が仲間たちと歌いたいように歌う。ライブ終盤の「まだ聞ける?もっと歌ってもいい?」と観客に投げかけた言葉に集約されるように、彼が歌いたくて聞いてほしくて、伸び伸びと歌い、それに観客が共感する。そんなライブでした。
それと比べると、今回の水樹奈々嬢のライブはもっと緻密さを感じました。準備の量の多さがなんとなくでも窺い知ることができました。もちろんトータス松本が準備に手を抜いていた訳が無いし、水樹奈々嬢が楽しさをある程度放棄して(完璧さだけを求めて)ライブに臨んでたなどとは欠片ほども思っていません。2つのライブの間には会場の違いもあったし、経験、客層、スタイル、楽曲、ありとあらゆる違いがあった。トータス松本と水樹奈々嬢からは全く対極の印象を受けましたが、それはそれぞれが高いレベルで音楽業界でプロフェッショナルでいるということを表しているのかもしれません。
今回のライブは、水樹奈々というプロフェッショナルの存在を知ることが出来た、良い機会になりました。同時に彼女がオレと同世代である以上、単に尊敬の対象ではなく、彼女のようにプロフェッショナルな仕事を目指して、彼女に負けないように頑張らなくちゃなぁ、と闘志を奮い立たせた次第です。
蛇足
オレにチケットを譲ってくれた元後輩は、どうやら上司とのバトルには条件付きで勝ったようです。ただ、今後もしばらくストレスフルが状況に置かれるようで、当面の間はその発散のためにオレが頻繁に酒の席で彼の愚痴をきくことになりそうです。オレがいなくなったことで、あの会社でオレがやってた緩衝材的な役割をできる奴が一人もいなくなっちゃった、ってのは良くないねー。大丈夫なんだろうか、あの会社?