ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

大学の先生を招いて法律に関する座談会を開催しました。

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はじめに

 4/29(日・祝)に四谷:HRインキュベーションをお借りして、法律に関する座談会を開催しました。今回は国士舘大学の法学部で刑法を中心に研究・教育されている方にお願いをして、その方に参加者が好き勝手にフランクに質問する、という形式で開催しました。



動機

 元々、この大学教員の方(以後「先生」と呼称)とオレは、とあるバーの常連で、飲み友達です。先生は法学部で法律、特に刑法の運用を専門に扱っています。もちろん大学の先生なんで、大学の運営自体にも深く関わっています。たまにバーでバッタリ会っては、彼から直近テレビを賑わす事件の見解を聞いたり、または大学運営の仕事の愚痴を聞いたりするのが、オレの楽しみの一つでした。

 つい先日バーで会うと、先生はいつになく疲弊している様子。話を聞くと、どうも仕事が上手くいってないとのこと。書いている論文がお師匠さん(=教授)からダメ出しの連発でほぼ書き直しになったり、新入生の迎え入れで面倒な雑用が押し寄せたり、出たくもないゼミで学生のへたくそなプレゼンのレビューをやらされたり、改心の準備をした授業で学生が堂々と居眠りしたり。う~ん、大学の先生ってのは大変なんだなぁ。

 話を聞いていると、体力的にしんどい、というよりは、精神的な疲弊感が強いように感じました。どうにか気分転換できないもんだろうか? お酒は今まさに飲んでいるので、それ以外の方法で。


 そこでオレから、ふと思いついた企画をその場で持ちかけました。「いつも大学の講義でやっているような話を、もっとフランクな形式で、社会人相手にやってみませんか?」と。単位目的の学生と違い、社会人……というよりは興味のある人を呼べば、学生より熱意を持って話を聞いてくれるはず。きっと教える事に対して気持ちよく臨んでもらえるのではないか。また、論文で煮詰まっているようだったので、好き勝手自分の話したいことを話す場があれば、喋りながら新しい発想が出てくるんじゃないか。そこまで行かなくても気分転換にくらいはなるんじゃないか。そんな風に考えたのです。


 その案に先生もその場で快諾してくれたので、発案から5分で開催確定しました。話が早いと気持ちが乗るってもんです。



前日までの準備

 企画がスタートした晩の翌朝、オレの友人の中から刑法……というよりは、猟奇殺人とかサイコパスとかに興味のある2人をピックアップし、「こういう企画を考えてるんだけど、興味ある?」と聞いてみました。簡単なユーザーインタビューのようなもので、同時に最低限の参加者(=ユーザー)の確保するための作業でもあります。2人とも即座に「ぜひ参加したい!」と言ってくれたので、改めてこの企画にGoを出しました。


 続いてイベントの立て付けを決めます。

 オレは最初、超小規模でやるつもりだったので、先生+オレ(企画者)+賛同してくれた2人+α、せいぜい4~6人程度での座談会を考えました。この人数なら温泉にでも行って合宿方式でやっても面白いかな、と思いましたが、さすがに初対面同士でそれはやりすぎだろ、と思いなおし、個室の居酒屋で飲みながら座談会(ディナーショー?)の形に、と考えました。

 ところが、そのアイディアを打ち明けたところ、賛同者の一人が「せっかく貴重な機会なのにお酒飲んだら忘れちゃう!お酒飲まないで話を聞きたい!でも酒は飲みたい!」とか訳分かんないこと言い出します。飲みたくないけど飲みたいって、なんだそりゃ?

 しょうがないので、会自体を二部構成にし、第一部をノンアルコールの座談会、第二部を居酒屋での懇親会としました。まぁ無難ですね。二部構成にした都合、平日開催は不可能なので、土日祝日に候補日を絞る事になりました。

 せっかくリフレッシュしてもらうつもりの企画なのに、かえって疲弊してしまうことになってしまうのは本末転倒なので、先生には真っ先に「準備コスト0で!」をお願いし、イベントのために特別に準備はしないで欲しい旨を伝えました。とはいえ、大学の講義用に作成済みの資料が既に沢山あったので、そちらは権利的に可能な範囲で使用をお願いしました。

 座談会内の話題は事前にFacebookで非公開イベントを作成し、参加者から聞きたいことを予め書いて貰うようにしました。先生とイベント当日までに何回か対面で(※正確には、バーのカウンターに並んで)打ち合わせを行い、参加者の希望を眺めながら、どんな順番でどんなテーマを扱うかを決めていきました。

 第一部の座談会は5時間と長丁場なので、参加者から1人1,000円ずつ徴収し、お菓子とドリンクを用意することに。余ったお金は、懇親会時の先生の飲み代(=イベント登壇のお礼)とさせてもらいました。


 その次に日程の決定。まず先生の空き日程を聞き、その中から賛同者とオレの予定を調整。すったもんだの末、開催日を4/29(日・祝)に確定しました。
 合わせて会場探しも実施。これは元々ツテがあるHRインキュベーター(=オレの古巣の関連会社)の担当の方に相談すると、二つ返事で快諾をもらえました。この会場は就活生向けのラウンジがあり、ホワイトボードや50型超のディスプレイもあるため、設備にも不足無し。念のため立会いで社員の人にも1人イベントに参加してもらって、会場周りは万全の状態。


 ここで大問題が発生します。
www.itmedia.co.jp
 これの体験会に、オレが当選しました。しかも座談会イベントと日程・時間が丸かぶりな形で。


 初音ミクが大好きで、俺妹が大好きで、社長の武地さんとも何度かお話させていただいたことがあって、Gateboxもずっと応援してて、何度も何度も体験会に落選し続けて、やっと当選したのに!まさかの座談会イベントとの日程かぶり……orz
 座談会は調整に苦労した挙句の日程決定だったので、今更変更するわけにもいかず、企画発起人が欠席するわけにもいかず。血の涙を飲んで体験会への参加を断念しました。人生でこれほど自分のたしない幸運を呪ったことがあろうか!いや、無い!!


 最後に参加者募集。権利関係も若干あったので、イベントは非公開扱いとしました。そのため参加者の募集も口コミONLY。10人前後を上限と想定していましたが、日程がGWど真ん中とあってなかなか難儀しました。結局、賛同者の多大な協力もあって10名の方が参加してくれました。



当日の準備

 当日はお菓子とドリンクの買出し、事前に参加者から貰っていた質問の印刷(A4用紙に1つ一枚ずつ書き出して会場の壁に貼った)、若干のレイアウト変更くらいです。



第一部:座談会

 座談会中は殆ど先生が話の流れを作ってくれました。オレは一応司会進行という位置づけではあったんですけど、さすが普段から教鞭を取られているだけあって、オレの出る幕は殆ど無し。休憩時間等にちょっと気を使う程度で、後は他の参加者と同様に先生の話を楽しませてもらいました。



第二部:懇親会

 会場近くの居酒屋を懇親会場としました。いやぁ、さすがGW、全然店が開いてない(そもそも開店してない & 開いている店が少ないから客が殺到している)から、予約するのに苦労しました。(※予約したのはオレではなく後輩。多謝。)
 座談会からの流れの話もありましたし、先生の趣味が「怪談集め」だったので、その辺でも話が盛り上がりました。こわいはなしたのしいよねぇ(白目。


感想

 参加者や登壇者である先生の話を聞く限りでは、予想以上の大成功でした。

 参加者側からすると、やっぱり先生の話がバツグンに面白かったです。もちろんコンテンツの主旨=刑法の話自体が非常に面白く、自分たちの知らないことばかりでした。今回の機会が無ければ

  • 刑務所に入るのは確率だけで言えば東大より難しい
  • 食い逃げは詐欺罪
  • 刑務所が通常の福祉施設よりはるかに高いコストを払って福祉施設化している
  • etc...

なんてことは知りえなかったと思います。本来刑法はかかわりがあっては困るもので、でもメディアからは犯罪やトラブルの溢れるほど流れてきて、なんとなく身近なようなそうでないような法律であり知識でしたが、こうやって改めて専門家から話を聞くと、なるほど間違って憶えている部分が多々あったり、自分とそれほど遠くない存在なんだなと気付くことができます。
 参加者が前のめりで聞き、ガンガン質問していく様子を見ていると、自分だけじゃなくてやっぱりみんな興味のある話なんだな、と改めて確認することが出来ました。
 今回は、TOKIO山口メンバーの事件や経産省の事件といった、新鮮な時事ネタもテーマに挙げていたこともあって、適度にゴシップっぽさも出してフランクに話を楽しむことができたのが大きかったと思います。


 一方で登壇者である先生から感想を聞くと、「こんなに意欲を持って聞いてくれた聴講者は久しぶりだ。」と嬉しそうに語ってくれました。
 学生はどうしても単位目当てや就職までの通過点として大学の講義を受けていることがあるので、出席しない・寝る・ろくに聞いてない・理解していない、なんてことはザラだそうです。また、普段は大教室で100人単位で相手をしているので、ひとりひとりに細かな質問を受けたり返したり、といったことができないのだそうです。

 そこへいくと、今回の参加者は休日を割いて、小額ながらお金を払ってまで先生の話を聞きに来た人たちです。スタート時点からやる気が全く違います。人数も10人と少人数で、座談会という立て付け上、いつでも気軽に疑問点を質問することができ、即座にリアクションすることができる形式でした。「話が四方八方に飛んでしまって全体として分かりづらかったかもしれない。」と座談会後に先生は言っていましたが、結果参加者が一番聞きたいことが一番聞きたいタイミングで聞けたと思っており、個人的には非常に良い形で場を築けたんじゃないかと考えています。

 また今回の参会者は全員が20代後半~40代の社会人で、学生の倍以上の人生経験があります。その経験から考察して質問をしていることもあって「みなさんの質問が学生よりも鋭く深く、僕としても非常に勉強になりました。」と言ってくれました。そういう効果はオレは想定していなかったので、嬉しい誤算ですね。

 実は昨晩もバーで先生に会ったんですが、本当に楽しかったらしく「ぜひまたやりたい!今年中にもう一回やりましょう!」と言って貰えました。イベントを企画・開催してここまで喜んで貰える事はまずないので、本当に嬉しい限りです。(あやせの尊い犠牲は無駄にはならなかったんだ……)


 オレ自身が得たものも非常に大きかったです。

 オレが先生から聞く話はどれもとても面白くて、この話はきっとオレ以外が聞いても面白いはずだ、とずっと思っていました。だからこうやってそれが実現できたことが、そもそも何よりも嬉しかったです。イベント企画の動機は色々冒頭に書きましたが、結局のところ、オレはオレのすごい友人を自慢したかっただけなのかもしれない。

 先生はたまたま大学の教員で刑法のスペシャリストで、出会ったのはバーカウンターの前でしたが、この年で独りフラフラと生きていると、先生に限らず、面白い人に本当に沢山出会います。自分なりの処世術を取得し、自分の仕事に誇りを持ち、その人でしかありえない体験を積んできている。そういう人たちは普段の生活では「普通の人」なんだけれど、スポットライトを当てて改めて確認すると、実は自分では想像もつかないような別分野のスペシャリストだったりします。そういう人たちの話を聞くのは本当に楽しいですし、何か機会があればその人たちの話を他の人にも紹介したい、といつも思っていました。


 そういう「隣のスペシャリスト」に出会うたびに、普通の人なんかどこにもいないだな、みんな何かしらのスペシャリストなのだな、と気付きます。でもそれに気付くためには、相手を尊重し、相手の話を傾聴する姿勢を常に持つことが大事なんじゃないかと思います。
 オレがそうだとは言っていません。オレは自分の話をするのがあまり好きではないだけです。自分の知ってる話をしたって、自分に情報が増えないから面白くないんですよね。その結果として、たまたま他人の話を聞く場面が多くなっていっただけだと思っています。でも、そういう姿勢で常にありたいな、とは思っています。


 相手を尊重する姿勢を常に持っていれば、世の中みんなスペシャリストだらけです。面白い話がいくらだって聞ける。それって最高にエンターテイメントな世界じゃないですか!みんながみんな、そうある必要はないけれども、少なくともオレの手の届く範囲はちょっとだけそうあれるように頑張ってみようかな、と今回改めて思いました。



おわりに

 オレと先生の出会うきっかけになったバー「BAR blue moon」に最大限の感謝を。
15周年おめでとうございます。
www.bar-bluemoon.com