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どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

礼儀・礼節のプラクティスってなんだろう? - 組織改善(俺なら相撲協会をこう導く) Advent Calendar 2017 2日目

はじめに

 本記事は「組織改善(俺なら相撲協会をこう導く) Advent Calendar 2017の2日目です。長久さんの

アジャイル界隈の人たちに「組織改善アドベントカレンダ2017(俺なら相撲協会をこう導く)」をやって欲しい。

という呟きを見て便乗してみました。



自己紹介

 滝川と言います。新宿の奥の方にあるSIerで働いていますが、今は赤坂あたりに常駐しています。炎上芸人とか転職失敗請負人とか変人吸引機とか色々言われていますが、当人は至ってどこにでもいる普通のシステムエンジニアです。アジャイル界隈の人かどうかは不明ですが、「LeSS Study」と「アジャイルディスカッション」というコミュニティにちょいちょい参加しています。



大相撲:日馬富士引退騒動

 オレ個人としては、大相撲とも関係者とも、基本的にも応用的にも無関係です。が、毎朝テレビを垂れ流しながら身支度する習慣があるため、今回の騒動はテレビ・インターネットメディアを介して割としっかりウォッチしてきました。12/01時点での情報だと、以下のような経緯で暴行事件が発生したそうです。


 う~ん、これが本当かどうかは定かではないですが、もし仮に本当だとすると、オレ個人の意見では悪いのは圧倒的に貴ノ岩です。日本において大相撲とは神技であり、横綱とは神位に相当する立場です。そんな立場の人から、ごくごく当たり前の一般的な社会マナーに関して注意されたにも関わらず、再三礼儀・礼節を欠いた態度を取り、貴ノ岩は結果逆鱗に触れた、というように聞こえます。
 しかも日馬富士は、貴ノ岩が自身の話を聞かなかったから、ではなく、白鵬の話を聞かなかったことに激高した様子。オレみたいなオールドタイプの人間なんかだと「日馬富士、いいヤツだな!」なんて思っちゃったりなんかします、ひとのために我を忘れるほど本気で怒ってくれる人なんてなかなかいませんよ。
 手を出したのは日馬富士1人で、横綱の行為に対して精神的にも腕力的にも介入できたのは同じ横綱(=白鵬)だけだったことを鑑みれば、事態の急変に呆気に取られたか何かで対応が遅れても不思議は無いと思います。報道の一部にあったような集団暴行や「かわいがり」などとは一線を画すものでしょう。「酒にもそれほど酔ってなかった」という日馬富士自身の発言にも合致しますし、引退会見で何度も繰り返し「礼儀」「礼節」という言葉を用いた日馬富士の真意も理解できます。


 日馬富士がもし引退を余儀なくされるほどの過失を犯したとすれば、それは「凶器を用いた」ことだと思います。無手を旨とする大相撲の頂点にある者が、土俵の外で、あろうことか凶器で殴って他人を汚させた。神技:大相撲を著しく汚す行為と言えなくもありません。まぁ暴力自体良くないという話はもちろんあるにせよ、とっさの怒りから殴りかかった経緯までは情状酌量の余地はあるとオレは思います。



「礼節」は誰が教えるのか?

 繰り返しになりますが、これらは12/01時点までの報道を元にしたオレ個人の仮説です。正しい保証はどこにもありません。が、仮説のまま話はやっと本題に入ります。


 今回の騒動が起こった経緯を敢えて列挙すると

  1. 貴ノ岩が礼儀・礼節を欠いた態度で神位たる横綱に接したこと
  2. それに激高した日馬富士が凶器を用いて相手を殴り怪我をさせたこと


 2 は前述の通りです。では 1 はどうでしょうか? 貴ノ岩が礼儀・礼節を欠いていたのは、それをちゃんと教えてないからでしょう。では誰が教えるのか? モンゴルにいる彼の親であり、現在親がわりである貴乃花親方であり、同部屋の兄弟子たちが本来その役割を担うべきなのではないでしょうか。今回の騒動のきっかけを深掘りすると、実は特に貴乃花親方の責任は重いということが分かります。


 まぁ起こってしまったものは仕方ない、今後同じようなことが起こらないように対策を練らねばなりません。
 今回の原因の遠因が「若手力士に礼儀・礼節をきちんと教えていなかった」ことだと捉えた場合、対策はシンプルで「若手力士に礼儀・礼節をしっかり教え込む」になると思います。でも、これってどうすればいいんでしょうね?


 礼儀・礼節は日々の生活の節々に表れるものであり、身につけるには都度指導していく必要があります。それこそ幼少の頃に親がつきっきりで子供にそうするように、です。時には厳しい指導も必要でしょう。オレのイメージは「アルプスの少女ハイジ」のロッテンマイヤーさんですね。でもあれを組織でやったら今だとそれこそ「体罰だ」「指導として行き過ぎだ」と言われかねません。

 で、お題に戻るんですが、オーダーの中には「アジャイル界隈の人に」とありました。アジャイルのプラクティスの中に「礼節」に関するものは果たしてあるのか?


 ぶっちゃけて言うと、ITエンジニアという生き物は礼節とは程遠いように思います。生産性や技術力こそ全て、怠惰は美徳とされ、効率は正義とみなされる。効率と怠惰を追求した挙句、布団から一歩も出ないでコードを書き続けられる環境を構築した輩も存在しているくらいです。この人たちから「礼節」を教えてもらわなくちゃいけないくらいなら犬から教えてもらった方が良い気さえしてきます。「礼節」をアジャイルやソフトウェア開発の文脈から教えることは無理!ハイ解散!


 でもまぁもうちょっと考えてみましょうか。そもそも「礼儀」「礼節」はなぜ必要なんでしょうか? 今更ですがちょっと調べてみます。

れい‐ぎ【礼儀】

1 人間関係や社会生活の秩序を維持するために人が守るべき行動様式。特に、敬意を表す作法。「礼儀にかなう」「礼儀正しい人」「親しき中にも礼儀あり」「礼儀作法」
2 謝礼。報謝。

礼儀(レイギ)とは - コトバンク

れい‐せつ【礼節】


礼儀と節度。また、礼儀。「衣食足りて礼節を知る」「礼節を重んじる」

礼節(レイセツ)とは - コトバンク

人間生活の習慣として、身を守り、生活体である社会を守っていくにもっともウエットな知恵が要請される。それが道徳であり、道徳が形として現れたのが「礼儀作法」です。
相手を尊敬し、自分を謙遜し、行いを丁寧にすることが「礼」です。この「礼」を時に即し、場合に応じて、自分の行動ができるように、わきまえる事が「節」です。「礼節」を知って初めて一人前の人間といえるのです。と言うことです。

礼儀と礼節の違いについて詳しく教えてください。 - 礼儀と礼節の違いに... - Yahoo!知恵袋

「礼儀」とは、敬いや慎みの気持ちを表す行動や作法、気持ちを伝える言動のこと。「マナー」は、事柄に対する行儀や作法で、みんなで決めたことです。

つまり、「礼儀」は対人関係があります、敬意表現、相手に対する心づかい、行動規範です。一方「マナー」は、他人を意識しているとは限りません。ご飯を箸で食べるのは人が見ているからではありませんね、あくまでも行儀や作法です。

礼儀とマナーは本来違います


 なるほど、他者を尊敬し尊重する姿勢として取るのが礼儀作法であり、礼節ということなんですね。であれば、アジャイルのXP(エクストリームプログラミング)が提唱する5つの価値のうちの1つに「尊重」があります。

XPを始めとする、アジャイルソフトウェア開発手法は、「ヒトの関連」を重要視している。そのため、XPでも「コミュニケーション」という価値が存在するが、恐らくそれだけでは足りなかったのではないかと想像している。

しかし、コミュニケーションには「情報・伝達」という意味はあるが、相手を思いやる人間性が薄いのではないかと考えている。一方、「尊重」(=respect)は、他人に対して敬意を払うという意味の言葉で、我々日本人が古くから重要視してきた概念である。


ただ単に情報を伝えるだけでは、有効なコミュニケーションは構築できないどころか、ミスコミュニケーションによるロスが発生する危険性がある。

情報を発信する際、相手を思いやり、「どうすれば正しく伝わるか」または、「どう伝えれば分かってもらえるか」そこまで考えて情報の伝達方法を考える必要がある。

Developer'sCafe: 5つの価値その5「尊重」


 円滑なコミュニケーションのために相手を尊重する。その尊重を示す姿勢・態度として礼儀・礼節がある。相手や相撲を尊重する姿勢があれば、その振る舞いは自然と礼儀・礼節に則ったものになるのではないでしょうか。だとすると、一番最初に行うべきは「他者を尊重する」「相撲を尊重する」ことを教えていくことになりそうです。


 力士同士の尊重は、実力がモノを言う世界ですからシンプルです。上位者が土俵で力を示し、稽古の姿勢を示せば、自然と敬意を払うようになるのではないかと予想されます。貴乃花親方は現役時代は偉大な大横綱でしたが、現在は相撲協会からも孤立しがちな印象です。もしかしたら他の相撲部屋との交流が少ないのかも……なんて邪推をすると、自身の孤立しがちな姿勢を改め、多くの目上の力士と自分の弟子たちが身近に稽古できるようになれば、ある程度改善できそうな気もします。
(※実際に貴乃花親方が孤立してるかどうかは不明です。勝手な妄想だったらゴメンナサイ)


 相撲に対する尊重は、これまでの大相撲の歴史や、日本における大相撲の位置付けや役割、社会的意義を、座学なりファンサービスなり社会貢献活動なりで定期的に教え続けていくことで、ある程度実現できるんじゃないかと思います。もちろん今の相撲協会もやっているとは思いますが、効果測定まで含めてどの程度できているか、内外にさまざまな観点を入れて定量的・定性的に判断基準を設けてより一層推し進めることはできるんじゃないかと思います。


 以上、今回の騒動から見えた原因の一部を、ソフトウェア開発の観点から改善点を考えた結論となります。オレが大相撲や相撲協会に関して詳しくないので、少なからず的外れな点はあると思いますが、あくまで思考実験の範囲としてお読みいただければ幸甚です。



最後に

 ここまで書いておいて今更なんですが、今回のお題を改めて読み返すと

アジャイル界隈の人たちに「組織改善アドベントカレンダ2017(俺なら相撲協会をこう導く)」をやって欲しい。

これ、お題の真意は「俺なら(隠蔽体質の)相撲協会をこう導く」ですよね……。騒動そのものに目がいきすぎて、だいぶ違う意図になっちゃったなぁ。……ま、いいか。