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どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

「この世界の (さらにいくつもの)片隅に」を観てきた。

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 この記事は「今年観た映画2019 Advent Calendar 2019 - Adventar」の21日目です。今年観てきた映画っていうか、ついさっき「この世界の (さらにいくつもの)片隅に」を観てきました。昨日(12/20)公開の作品で、おそらくはこれから劇場へ足を運ぶ予定の方も多いでしょうから、以降、極力ネタバレなしで感想を書いてみます。


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 パンフレットに掲載された片渕須直監督のインタビューによると、この作品は「完全新作」という位置付けだそうですが、一般的に見れば2016年に大ヒットした「この世界の片隅に」の拡大版というか豪華版というかの位置付けになるかと思います。ストーリーラインは一緒ですし、結末も一緒です。
 ですが、鑑賞したてのオレの印象で言わせてもらえれば、作品から受ける印象は随分と変わりました。片渕監督が「完全新作」と言い切るのも、ある意味では頷けるものではあります。


 2016年版を観てない方に向けて、簡単にあらすじを説明します。
 第二次世界大戦に突入せんとする昭和の時代、広島市江波に住む絵を描くのが好きなマイペースな女の子:浦野すずは、ある日突然、呉港につとめる若い軍人の北条周作から求婚を受け、そのまま流されるままに結婚、呉市に移住します。当時の一般家庭の貧しい厳しい生活に翻弄されながら、しかしマイペースに生活を営むすずと北条家。開戦、空爆、原爆、敗戦、第二次世界大戦の呉と広島の庶民の生活の様子を丁寧に描いた作品です。

 今回の「この世界の (さらにいくつもの)片隅に」では、2016年版と比べて、遊郭で働く女性「白木リン」の物語が大幅に追加されています。それによって、第二次世界大戦当時の女性の生活・生き方・考え方に強く焦点が当たり、結果として主人公である北條(浦野)すずの感情も色濃く現れるようになっています。2016年版ではなんだかよく分からない現象として扱われていた伏線もいくつか回収され、物語としてより深みを増しています。すずの周作に対する感情の移り変わりも、2016年版とは大きな違いが見られますので、色恋の面で2016年版で消化不良を起こしていた人(がいたかどうか知らないけど)にも、より楽しめる内容になっていると思います。


 2016年という年は、邦画の名作が大豊作だったとオレは記憶しています。「シン・ゴジラ」「君の名は。」そして「この世界の片隅に」。「どの作品が一番好きか」は好みで意見が分かれると思いますが、「どの作品を一番見るべきか」はダントツで「この世界の片隅に」であるとオレは思っています。その意見は「この世界の (さらにいくつもの)片隅に」を観た今、より強いものになっています。



 オレは今作を、2016年版と含めて今まで全部で3回劇場で観ました。うち一回は現地(聖地?)である呉の映画館で観ています。1回目は今回と同じくシネ・リーブル池袋で観ましたが、その結果としてどうしても現地である呉の様子が観たくなったのです。その年の12月まるまる1ヶ月かけて四国八十八箇所参り(お遍路)を自転車でやっていたのですが、途中無理やりコースを曲げて松山からフェリーで呉に渡り、呉の港と街並み、大和ミュージアムを観てきました。(お遍路もちゃんと八十八箇所全てお参りしましたよ、念の為)

2016年時の呉港
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大和ミュージアム
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2016年12月の呉の映画館
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 現地:呉市で同作品を観たことそのものよりも、大和ミュージアムで当時の資料を目にした後で観たことが、当時自分にとってとても大きかったです。特に終盤の座礁した重巡洋艦:青葉のシーンでは、1回目の鑑賞時にはそうでもなかったのに、青葉の受けた被害を知った後では思いが膨らんでしまい涙が止まりませんでした。


 また、同作品とは全く関係のない文脈でしたが、事前に「艦隊これくしょん:艦これ」をプレイしていたことも大きかったです。青葉、利根、大和、武蔵といったいくつかの艦船が作中に登場します。艦これは、プレイすると大戦時に実際の戦艦がどうなったのかが自然と気になるゲームでした。結果として多くの戦艦とその行く末を知るきっかけになり、第二次世界大戦を教科書以上に深く知るきっかけにもなりました。作中には登場人物が嬉々として艦船の名前を並べ読み上げるシーンがいくつかありますが、そんな時自分自身も知っていると、より身近に感じられると思いますし、その後の行く末を知っていればより親身に感じられるのではないかと思います。


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 「この世界の片隅に」そして「この世界の (さらにいくつもの)片隅に」は事前に鑑賞者が持つ知識で全然違って見える作品だと思います。まだ2016年版を観たことのない人は今回の新作公開を機に劇場に足を運んでいただき、既に鑑賞済みの方は、以前よりちょっとだけ知識を深めた上で鑑賞に臨んでいただければより楽しめるんじゃないかなと思いました。




 文句無しに他の方にオススメできる作品だと思います。ぜひこの年末年始に劇場で鑑賞してみてください。


この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の(さらにいくつもの)片隅に 公式アートブック さらにいくつもの増補

この世界の(さらにいくつもの)片隅に 公式アートブック さらにいくつもの増補

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/12/07
  • メディア: 単行本