ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

彼女の「つくられた歌声」が届けるもの

(via: http://ameblo.jp/gsc-mikatan/entry-10300376453.html)


課題-あさぽんの小屋


 上の記事は、下田麻美さんという声優さんのブログエントリです。6月の終わりに、とあるゲームに関連した大きなイベントがありました。要は声優さん達がキャラクターに扮してステージ上で歌って踊る、というもの。それも小さなライブハウスじゃない、横浜アリーナという国内でも有数のコンサート会場です。オレ自身はこのイベントには参加していませんが、多少の縁があって周辺の他愛も無い出来事に関わることがあり、それを通じて上記記事を知ることとなりました。


 彼女の主張はこうです。

 彼女はステージに立つ時、それがゲームやアニメのイベントならば、自分の担当したキャラクターに100%なり切って、キャラを演じたまま歌ったり踊ったりすることをポリシーとしているそうです。それが小さなイベントなら、プロである彼女にはそれほど難しく無いのでしょうが(とは言え、難易度の高い業であることは違いないでしょう)、今回のライブは数万人規模の会場で、一公演あたり数時間、2Daysに渡る非常に大規模なものです。広い会場をところ狭しと駆け回りながら歌い・踊り続けるだけで相当困難なはず。その上キャラクターになりきったままでい続けることは、とてつもなく成し遂げるのが難しいことなのでしょう。加えて、そのキャラクターの声がいわゆる「アニメ声」で、日常生活ではおよそ出すことのない、声優ならでは技巧により発している、非常に特殊な声質であることも彼女はブログで説明しています。



 以前、彼女が出した上記のCDを聞いた事があります。彼女の声を使って作られたVOCALOID鏡音リン・レン」の楽曲を彼女自身がカバーしたものです。聞いた時に正直驚きました。一曲毎に全く別の人が歌っているかのようだったのです。男女の掛け合いなどもあり、とても1人の女性が歌っているようには聞こえませんでした。その彼女が困難だと思うもの、どれだけ難しいかが窺い知れます。


 上記の記事を読んだ時、まず真っ先にオレが思ったのは「うらやましい」「くやしい」という感情。率直に言えば「嫉妬」です。彼女は、おそらく20代前半の若い声優さんです。年齢だけで判断すれば、普通の社会であれば新卒の新社会人、もしくは2〜3年目の経験の浅い社会人に相当するでしょう。そんな・・・こういっちゃなんだけど小娘が、自分の意思で届けたいものを消費者・ユーザーに届けることが出来る。たとえ力及ばずで多少品質を自分のイメージから落としてしまっても、十二分に顧客が満足できるレベルのサービスとして成り立たせることが出来る、受け入れてもらえる。それは、オレが願ってもまず叶えることができない、非常に高いレベルでの仕事です。彼女がそういうレベルで仕事が出来ることを、オレはうらやましく思いました。


 そんな考えが一瞬頭をよぎった刹那、その考えを捨て去りました。だって、オレに嫉妬なんてする資格は無いんだから。


 彼女はおそらく十代から声優として仕事をしてきたのでしょう。もちろんビジュアルや声質など、持って生まれた才能は当然あったと思います。でも今も彼女が声優として生き残っているのは、彼女自身が不断の努力をし続けたからに他なりません。歌にダンスにラジオのパーソナリティ、もちろんアニメやお芝居の演技もです。オレは当然それらはひとつもできません。彼女にしても、当初はなにもできなかったでしょう。出来るようになり、人より秀でた能力として確立させたのは、他ならぬ彼女自身の努力です。


 それを差し置いて、たとえ別ジャンルとはいえ、何も積み上げていないオレごときが、どのツラ下げて「羨ましい」などと言えるでしょうか?


 何かを欲しいと思うなら、相応の対価を支払うべきで、彼女の「届けたいもの」はきっとその対価が非常に高いのだと思います。彼女がそれを届けられる日が来るのかどうかは分かりませんが、少なくともその日が来るまでには、オレはせめて堂々と彼女を羨ましがれる程度には研鑽を積みたいと決意した次第です。






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