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どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

アイドルマスターシンデレラガールズで学ぶ思考プロセス「TOCfE」入門


(via:http://imas-cinderella.com/story/13.html)

はじめに

 「制約理論」という言葉をご存知ですか。英語で「Theory Of Constraints(以下、TOC)」と書きますが、工場の生産管理から生まれた概念で、すげー大雑把にいえば「ボトルネック無くして生産性ガン上げしようぜ!」って手法です。
 「TOCfE」はその派生ツールで、「fE」=「for Education」、つまり教育を目的として作られています。この「TOCfE」はおおまかに

  • この考え方を学んでもらって、自分で考えられる子供を育てよう
  • この考え方を大人が自分で学んで、考えられる子供を育てられる大人を育てよう

というコンセプトのもと、広められています。この記事では、その「TOCfE」のツールを解説していきたいと思います。


アイドルマスターシンデレラガールズ」で!!


本記事のターゲット

 本記事は以下のような方を対象として書かれています。

 上記に当てはまらない方は、場合によってはこの記事を読んで不快に思われるかもしれません。特に本記事は「アイドルマスターシンデレラガールズ」のネタバレを含みます。同作品について、まだ視聴したことはないけど今後視聴したいと思っている方、「アニオタキメーーーんだよ!!」とか普段から思ってる方、申し訳ありませんが、そのまま速やかにブラウザタブを閉じていただけますようお願い致します。


「TOCfE」とは?

 冒頭にも書きましたが、「TOC」とは「Theory Of Constraints」の略で、日本語訳で「制約理論」、エリアフ・ゴールドラッド博士が提唱した知識体系を指します。、個人や組織がゴールを達成するのを妨げてしまうような障害を論理的にみつけだして乗り越えるためのツールが用意されています。詳しくは良い書籍がありますのでそちらを読んでみてください。分厚い本ですが、小説仕立てなので案外易しく読めると思いますし、マンガ版も出ています。




 この「TOC」を「fE = for Education」、つまり教育向けにカスタマイズしたのが「TOCfE」。「ちゃんと考えることができる人を育てること」を目的としています。
 でも「ちゃんと考える」ってなんでしょう? この記事をお読みの方は「ちゃんと考えた」経験はありますか? たぶん殆どの人が「ある」と答えるんじゃないかと思います。
 では、どこまで考えたら「ちゃんと考えた」と言えますか? 貴方が「ちゃんと考えた」ことを他人に論理的に説明できますか? 貴方の「ちゃんと考える」と他人の「ちゃんと考える」は本当に一緒ですか?


 おそらくこの問いかけをされると困っちゃう人が多いんじゃないかと思います。なんとなく当たり前で、他人もきっとそう感じているはず、と思っていることは、実は殆ど一緒じゃないことが結構多いです。TOCfEを活用することで、そんな「当たり前」を論理的に他者に説明できるようにし、議論の対象を明確にしていくことが出来るようになっていきます。


 「TOCfE」には3つの主なツールと、それを補助・強化するためのCLRというツールが存在します。まぁ言葉でグチャグチャ説明しても分かりづらいんで、実例を交えて説明していきます。ちなみに、本記事ではCLRの説明は省略します。説明を書くのが大変、というのもありますが、CLRは非常に危険なツールなので不用意に振り回すと他者を傷つけてしまうかもしれないからです。

  • ブランチ
  • クラウド
  • アンビシャスターゲットツリー



「ブランチ」とは?

 「ブランチ」は「物事を因果関係で考える」ためのツールです。「原因と結果がつながっているか」をこのツールでは確認できます。


 では早速例を挙げてみます。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1424053835)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1424053835)


 これはアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ」の第6話の終盤のシーン。卯月・凛・未央のユニット「ニュージェネレーションズ」のデビューCDのリリースイベントのミニライブが終わった直後です。リーダーの未央は自分が期待していた観客とは全く異なる、あまりにガラガラな会場にショックが隠しきれません。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1424053835)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1421997379)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1421997379)


 それもそのはず、彼女たちはデビューの前に先輩アイドルのバックダンサーとして、大観衆の前でパフォーマンスすることを体験していたからです。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1424053835)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1424053835)


 そんな未央に対し、プロデューサーは「今日の結果は当然のものです」と冷徹に言い放ちます。追い打ちをかけられた未央は「アイドル辞める!」と叫び、会場を走り去ります。



 それではこのシーン、なぜ未央が「アイドル辞める!」と叫び、逃げ出すほどショックを受けたかをブランチで表現してみます。



 読み方ですが、左下の箱から上に向かってひとつずつ読んでいきます。読み方は「もし○○○○ならば、結果として△△△△である」です。上向き矢印同士をくくる赤丸は「&条件」を意味します。ちょっと実際に読み方の例を以下に書きますので、それに合わせてブランチを目で追ってみてください。


  1. もし「城ケ崎美嘉のライブにバックダンサーで出演する」かつ「城ケ崎美嘉のライブでミスなく楽しくダンスができる」かつ「城ケ崎美嘉のライブに大観衆が盛り上がっている」ならば、結果として「大観衆のライブでの成功体験が頭に焼きつく
  2. もし「大観衆のライブでの成功体験が頭に焼きつく」かつ「城ケ崎美嘉のライブ以外に出演したことが無い」ならば、結果として「ライブに出演すると大観客の前で盛り上がれると思いこむ
  3. もし「ライブに出演すると大観客の前で盛り上がれると思いこむ」かつ「自分のデビューCD発売ミニライブがある」ならば、結果として「自分たちのライブも大観客で盛り上がれるはずと期待する
  4. もし「新人アイドルにはファンはほとんどいない」ならば、結果として「デビューライブ会場にはほとんど観客がいない
  5. もし「自分たちのライブも大観客で盛り上がれるはずと期待する」かつ「デビューライブ会場にはほとんど観客がいない」ならば、結果として「自分たちのライブの閑散とした状況にショックを受ける
  6. もし「自分たちのライブの閑散とした状況にショックを受ける」かつ「ライブの客入り状況は当然の結果だとプロデューサーにいわれる」かつ「ニュージェネレーションズのリーダーは自分である」ならば、結果として「ライブの失敗は自分のせいだと言われたように感じる


 ブランチで因果関係を追っていくと、未央はデビュー前の成功体験に引きずられて、自分たちの実力からかい離したイメージを持ってしまったことが原因でショックを受けたことが分かります。それだけだったらまだ良かったのでしょうが、サポートするはずのプロデューサーから「当然の結果」と突き放されてしまい、自分が責められていると感じて「アイドルを辞める!」とまで思ったのではないかと推測できます。


 なにか問題が発生したとき、ブランチで因果関係を整理していくと、後でどこで何が問題の種になったかを分析することができます。この未央のケースでは、先輩アイドルのステージに立つこと自体は良い経験なので、無理やり止めさせたりすることはあまり宜しくないと思われます。であれば、デビューライブより前に「新人のデビューとはこういうものだ」と現実をきちんと認識させ、それに対して絶望や失望ではなく、闘志と勇気を持てるように気持ちを誘導していれば、あるいはこのような事態は防げたかもしれませんね。




クラウド」とは?

 クラウドは、対立する2つの行動を通じて問題を特定し、両者に共通する目的を達成するための解決策を見出すためのツールです。
 誰もが色々な悩みや問題を抱えています。そんな問題の奥底には、多くの場合「〜したい」「〜しないといけない」という気持ちがあります。でもそれに相反する「〜したくない」という気持ちもあります。
 そんな目先の対立ではなく、その先にあるものに目を向けて、より良い選択をすること、場合によっては一挙両得の選択が無いかを模索するのが、このツールの活用する目的になります。


 では例を挙げてみていきましょう。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1440732563)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1440732563)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1440732563)


 このシーンは第20話、美城常務から渋谷凛・アナスタシアの2人が、常務が陣頭指揮を執るプロジェクトに参画してアイドル活動をするように求められるシーンです。美城常務はこの時、凛には学校の友人でもある神谷奈緒北条加蓮と組んで「Triad Primus」というユニットを、アナスタシアにはソロ活動を要求しています。
 ですが元々、2人ともシンデレラプロジェクトに参画しており、既に凛はニュージェネレーションズ、アナスタシアはラブライカというユニットで活動しています。それに美城常務はシンデレラプロジェクトを潰そうともくろんでいる当事者、実質敵対関係にあります。美城常務は「既存の活動は継続して構わない」と言いますが……。


美城常務:「私は君たちの才能を買っている。それをもっと伸ばしてみたいとは思わないか。



 では実際にクラウドを書いてみます。下の図が凛とアナスタシアのクラウドです。2人の状況は微妙に異なりますが、今回は簡略化して同一のものとしてとらえました。



 ここでは、シンデレラプロジェクトと美城常務のプロジェクトが対立している(同時に実現することができない)ものとして書き始めています。ここで「本当にこの2つの手段(行動)は対立しているのか?」をチェックします。
 感情的に考えれば、敵対する美城常務のプロジェクトに2人が参加する、ということは、シンデレラプロジェクトに対する裏切りとも捉えられかねません。感情論的には「この2つの手段は対立している」と言えるでしょう。
 ですが、美城常務は「今の活動を続けても構わない」と言っています。なので、美城常務からの制約だけを鑑みれば「実は対立していない」ともいえるでしょう。シンデレラプロジェクトのプロデューサーが「裏切り行為ではない」と他のメンバーに誠意をもって説明すれば、おそらく感情的なわだかまりも緩和できるはず。
 それはそれとして、2つの活動を掛け持ちすることは時間・体力ともに相当の消耗を強いられるはず。ましてや彼女たちは学生です。学生の本分と2つのアイドル活動をどれも全力で取り組む、などということができる人は、そうそういないでしょう。
 この課題は、彼女たちがどこで線引きするかによって、手段が対立しているかしていないか、が分かれることになるのです。


 仮にこれらの手段は「対立する」ものとして進めます。
 そこから、それぞれの「手段(行動)」を取らなければ実現できない「要望」を探しました。今回はシンデレラプロジェクト側は「シンデレラプロジェクトを継続させる」という要望を、美城常務のプロジェクト側には「新しいチャレンジができる」という要望を挙げました。
 さらに、そこから「仮に両者に共通する目的があったとしたら」という仮定を立てます。今回は「アイドルとして輝けるようになる」という割とフワッとした目的を作りました。


 これを確認する際には逆から、つまり目的から要望、容貌から手段(行動)へと読んで行きます。読み方は「もし○○○○なら、△△△△の必要がある」です。ちょっとやってみましょう。


【A:目的→B:要望1】
もし「アイドルとしてもっと輝けるようになる」ならば「今の仲間たちとシンデレラプロジェクトを存続させる」必要がある。
【A:目的→C:要望2】
もし「アイドルとしてもっと輝けるようになる」ならば「新たな仲間や新たな環境で、まだ見ぬ可能性にチャレンジできる」必要がある。
【B:要望1→D:手段1】
もし「今の仲間たちとシンデレラプロジェクトを存続させる」ならば、「シンデレラプロジェクトを継続する」必要がある。
【C:要望2→D':手段2】
もし「新たな仲間や新たな環境で、まだ見ぬ可能性にチャレンジできる」ようにするならば、「美城常務のプロジェクトで新たに活動する」必要がある。


 とりあえず違和感はなさそうですね。では、それぞれの手段(行動)では、もう一方の要望を満たせないのか、を検証します。


【C:要望2→D:手段1】
もし「新たな仲間や新たな環境で、まだ見ぬ可能性にチャレンジできる」ようにするには、「シンデレラプロジェクトを継続する」ことでは満たせない。
【B:要望1→D':手段2】
もし「今の仲間たちとシンデレラプロジェクトを存続させる」には「美城常務のプロジェクトで新たに活動する」ことでは満たせない。



 どうでしょう? 違和感がありませんか?
 シンデレラプロジェクトの中は複数のユニットで成り立っているので、組み替えをすれば新しいチャレンジはいくらでもできるでしょう。
 一方、美城常務に現在の活動が認められている都合、新プロジェクトに参画してもシンデレラプロジェクトを継続させるための取り組みは可能です。


 このようにして、対立する悩みを分析して、よりよい答えを導き出せるのが「クラウド」の特徴です。


 実際、この続きの話では、凛もアナスタシアも、シンデレラプロジェクトの活動を継続しつつ、美城常務の提案を受け入れます。アナスタシアはパートナーである新田美波の応援も受けて円満に新しいチャレンジを始めますが、一方でニュージェネレーションズではまたひと悶着があります。ですが、ここでの言及は避けることにします。




「アンビシャスターゲットツリー」とは?

 アンビシャスターゲットツリーは、ambitious(野心的な)目標を達成するための手段を明らかにしていくためのツールです。ではさっそくですが、また例を挙げてみます。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)


 こちらのシーンは12話シンデレラプロジェクトはアイドルフェスティバルに向けての合宿を行っています。
 シンデレラプロジェクトは、普段は「ニュージェネレーションズ」「ラブライカ」「キャンディーアイランド」「凸レーションズ」「*(アスタリスク)」、そして「神崎蘭子」のソロ活動という異なるユニットで活動していますが、合宿の最中にプロデューサーから「アイドルフェスに向けシンデレラプロジェクト全員で参加する楽曲を1曲仕上げよう」という指示が出されます。残り短い期間に、ユニットとは別に全体曲をしあげなくてはならない、この難題に最年長者の新田美波が、みんなのまとめ役として挑みます。


 まずはアンビシャスな目標を明確にします。プロデューサーからは「アイドルフェスに向けシンデレラプロジェクト全員で参加する楽曲を1曲仕上げよう」という指示がありましたが、「1曲を仕上げる」というのが、どういう行為で、どの程度を指すのかを明確にしておくしておく必要があります。特に今回の目標はシンデレラプロジェクト:14人全員で同じビジョンを共有していることが必須です。誰かが「とりあえず歌えてなんとなく踊れてればいい」と思っており、一方で「ダンスが完璧にシンクロしていて歌が全員生歌でMISIA顔負けで歌えなくては駄目だ!」と思っていたら、同じゴールにはたどり着けませんよね。ちょっと理屈っぽくても、何を目指すのかは明確に定義しておく必要があるのです。
 とはいえ、アニメの中ではそこに具体的に言及しているシーンはありません。ここでは仮に「シンデレラプロジェクトの全体曲を、合宿中の期間に、歌・ダンスともに全員が揃っていて、アイドルフェスで歌っても恥ずかしくないレベルで仕上げ、自信を持ってステージに立てるようにする」という目標にしたことにしましょう。まだだいぶ曖昧な気もしますが、このくらいで許しといてやるか。



 次に目標を達成を阻害する「障害」を列挙します。「アンビシャスターゲットツリー」のとっつきやすいところは「そんなことできっこないよ。だって〜じゃん。」という愚痴や不安・不満をとっかかりにして、そこから野望への道を見出すことができる、という点です。最初は出来るだけダメな人になって、出来ない理由をグチグチ言ってみてください。
 では実際にシンデレラプロジェクトの面々がこぼす愚痴を集めてみましょう。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)

みりあ:「何回やってもふりつけ全然あわないね。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)

卯月:「全体曲、難しいですね。ふりつけ覚えるのがせいいっぱいで、全然ついていけませんでした。
未央:「わたし、CDデビューのステージ、全然楽しめなかった。リーダーだったのに、みんなにも迷惑かけちゃって。
卯月:「わたしも、最後まで笑顔でいられなかったこと、残念で。
凛 :「わたしたちのステージ、まだちゃんと終わってないのかも。
未央:「ねえ、アイドルフェスは全体曲もユニット曲もやれるだけやってみよ!今度はどんなステージでも頑張るから。ね?



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)

杏:「一曲歌うだけでも大変なのに、もう一曲増えるなんて大丈夫かな?今日やってみて分かったじゃん。全体曲今からやって、みんなと合わせるなんて難しいんじゃない?無理に詰め込んで本番に失敗、なんてことに……。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)

みりあ:「え、みくちゃん全体曲やるの反対なの?
みく :「反対ってわけじゃないけど、ちょっと難しいんじゃないかって。
李衣菜:「それに私達、ユニット曲だって完璧じゃないし。今はユニットの方を大事にしたいんだよね。私達、(デビューが)一番最後だったから。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)

きらり:「きらりはね、みんなで歌うのって、たのすぃ〜かなって思ったんだけどぉ、練習も大変でしょ〜ぉ?両方上手くできるかどうか、不安な娘もいるんだなって思うと……。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)

美波:「まとめ役をするのはいいんですけど、全体曲のことが気になって。フェスまでそんなに時間も無いですし、今からだと大変じゃないかって。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)

蘭子:「今日、みんなと上手く合わせられなかった。やっぱり、誰かとステージに立ったこと無いからかなぁ。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)


李衣菜:「でもさぁ、これって難しくない?
みく :「みんなバラバラで、全然合ってなかった。
未央 :「だから、もっと練習しなきゃ!でないとフェスに間に合わないよ!
智絵里:「ヒッ
杏  :「このままやっても、エネルギーの無駄遣いな気がする。


 いくつか重複している不満・愚痴(=障害)もありますので、整理するとこんなかんじになるでしょうか。



 続いて、この障害を仮に解決できたとできる「中間目標」を挙げます。言葉的には「障害」をそのまま裏返したような表現になることが多いですが、可能であればより具体的な表現が望ましいです。あと、中間目標は行動や意思ではなく「状態」で表現する必要があります。



 「中間目標」には実現可能な順番がある場合が多いです。目標に向かってマイルストーン的に並べ替えていきます。もし並列に実現可能な「中間目標」があれば、横に並べてしまって構いません。



 最後に、それぞれの「中間目標」を実現できる「行動」を記述していきます。



 ……で、ここまでやっといてなんなんですが、ここで困ったことが。実際のアニメで美波が取った行動は「ミニ運動会を開く」というものでした。彼女らはユニット間で分断した状態から、美波の開催した運動会を通して、互いの能力を把握したり、コミュニケーションを図ったり、一体感を出したり、といった効果を得て、結果それによって全体曲を完成させました。
 それはとても素晴らしいことなんですけど、その「ミニ運動会」という「行動」は、オレが「障害」から抽出した「中間目標」を解決する策としては合致しないんですよね。しかも「行動」としてはたった1つしかないし。


 しかし、スーパーマリオなど任天堂の人気ゲームを多数プロデュースした宮本茂氏の言葉で「イデアというのは 複数の問題を一気に解決するものである」という格言もあります。美波の採用した「ミニ運動会」という「行動」は、まさに複数の「中間目標」を一度に解決するためのアイディアだったのでしょう。あと、言い訳にはなりますが、アニメのような物語ではどうしても描かれない部分がありますので、ある程度は想像で補完するか、または分析の追及を諦める必要があるかと思います。なんにせよ「みなみんリーダーは凄かった!」という結論としておきたいと思います。(これ以上は勘弁してくださいマジでマジで。)



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1428286347)




問題

 さて、駆け足でしたが、TOCfEの3つのツールを紹介しました。本当はまだもうちょっと使い方を説明しなくてはいけないんですが、文章だとなかなか伝わらないので、この辺にしておきます。


 では、突然ですがここで問題です。このシーン、貴方ならTOCfEの3つのツールのどれを使って、どのように分析してみますか? 「アイドルマスターシンデレラガールズ」最大の見せ場です。



(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1442572948)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1442572948)


(via:http://www.nicovideo.jp/watch/1442572948)



 23話のこのシーン、アイドル活動を休止し養成所に戻ってレッスンを続ける島村卯月。それに詰め寄る凛と、話を聞かせてほしいと耳を傾ける未央。卯月からは笑顔が失われています。仲間がアイドルとしてキラキラと輝きだして、自分だけが輝いていない、取り残されていると感じていた卯月は、大粒の涙を流しながら自分のアイドルとしての未来への不安を、拙い言葉で紡ぎます。そしてその葛藤は、24話のプロデューサーとの対話、クリスマスライブまで続きます。


卯月:「笑顔なんて!笑うなんて!誰でも出来るもん!!なんにもない。私には何にも……。
P:「今、アナタが信じられなくても、私は信じています。アナタの笑顔がなければ、ニュージェネレーションズは、私達はここまで来られなかったからです。
P:「島村さん、アナタが選んだその先で、アナタは独りではありません。私達が、みんながいます。




おわりに

 「TOCfE」のツールの使い方を学ぶには、一応書籍や教本もあるのですが、やはりきちんと知識を習得している人から教わる方が効率が良いです。この記事を読んで「TOCfE」に興味を持って頂けたら、できればワークショップに参加して体系的に学んでみませんか。ちょうどタイミングのよいことに、今週末土曜日に、神保町で本記事では中途半端な解説だったアンビシャスターゲットツリーのワークショップが開催されます。


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【東京開催】TOCfE BootCamp 雷鳥が目指した頂への軌跡 ~アンビシャスターゲットツリー~ - TOCfE BootCamp | Doorkeeper

  • 日時 :2/20(土) 9:30 - 18:00
  • 場所 :株式会社万葉
  • 参加費:1,000円(おかし代、文房具代) ※学生無料


 このワークショップでは、Jリーグ松本山雅FCを題材に、アンビシャスターゲットツリーを解説していきます。人口24万程度の、県庁所在地でも地方政令都市でもない街で、毎試合2万人もの観客がスタジアムに駆けつける、そんな信じられないようなことが起こっています。故:松田直樹選手が文字通り命を賭してまで成し遂げようとした何かのその先を、アンビシャスターゲットツリーで探求してみませんか。


 開催日まで殆ど間がありませんが、まだ週末予定を入れてない、急に予定が空いてしまった、という方は、是非参加を検討してみてください。本記事の最後に上げた「問題」はこのワークショップ内では扱いませんが、もし希望があれば終了後の懇親会で扱うかもしれませんよ。


 参加してみたい、ちょっと興味があるという方はこちらから。スタッフ一同お待ちしております。