ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

今日でSIerを卒業するのでSIビジネスについてダラダラと書いてみる

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はじめに

 実際には有休消化があるので7/10が正式な退職日ですけどね。2年半働いた初台のSIerを退職することになりました。今日が最終出社で事務手続きとかも基本全部終わらせたので、事実上の退職日が今日となります。
 本当に色々なメに遭ったので、会社辞めたら色々書いてやろうと思ったんですが、ご他聞に漏れず「SNSやブログ等に会社に関わる一切を書くな!」って誓約書にサインさせられたので、ここは大人力を発揮してとりあえず黙ることにしました。残念ながらオレの人生ももうちょっとだけ続くんじゃよ。


 今回退社する会社で3社目の在籍、途中でコンテンツ配信サービスなんかにうつつを抜かした時期もありましたが、トータルで14年強もの間、SIビジネスの渦中にいました。これで一旦SIビジネスの会社に所属するのは最後になるので、2年半のうらみつらm……もとい、体験記を書く代わりに、SIビジネスについて思うことをダラダラと書いてみようと思います。個人の感想に寄るところが多いので、多少狭視的だったりピントハズレだったりするところは勘弁してください。

SIerは滅びぬ!何度でもよみがえるさ!

takigawa401.hatenablog.com


 この記事書いてから7年経ちます。あの時は「SIerが滅びるかどうかなんて分からん」って書きましたが、案の定滅びませんでしたね。少なくともオレの周りでSIビジネスがシュリンクしたという話は聞かないし、当時オレがいたn次請けのSIerは、オレがいた時よりも元気っぽいです。今のIT業界の好景気に支えられてる面は否めないのでしょうけど、大方の予想を覆して活況なんじゃないかなぁというのがオレの雑感です。
 旧態依然としたレガシーな開発も相変わらず同じような規模で存在しています。インターネット上では「アジャイル」のキーワードが跋扈するようになって久しいですが、そんな風潮はどこ吹く風、ウォーターフォール型だったり大型護送船団方式だったりも相変わらず健在です。

いつまでもSIerに頼ってばっかりでもない

 一方で、ServicerがSIerに頼らずに独自にITエンジニアを雇い、自力でシステム開発を進めるようになったのも、肌感覚としては増えているように感じます。外部に依頼すると契約に縛られてフレキシブルに開発が進められない、コミュニケーションコストばかりかかって本来の目的をなかなか達することができない、さまざまな理由があるんでしょうが、ITの価値を正しく理解した人たちが増えて、自分達の欲しい道具を自分達のコントロールしながら作るようになった、というのがその傾向の根底にあるんだと思います。

バブルはいつか終わる

 今はIT業界が好景気で活況、と前述しました。業界内では、どこで話を聞いても人手不足だと一様に言います。働き方改革とかクラウド移行とかBCPとか色んな理由があるんでしょうが、どれが原因で結果強烈な人手不足になるほどシステム開発が増えているのかはオレには不明です。なんでなんでしょうね? 誰か教えてぷりーず!

 とはいえ、オレが思うに、この好景気はあくまで一時のもの。しょせんはバブルで、いつか終わるんじゃないかと思っています。
 そもそもシステム開発の発注側である企業が倒産するリスクが非常に高い昨今です。三洋や東芝の例を挙げるまでもなく、大企業でさえいつ潰れるか分かりません。それらの企業が1つ潰れたら、いったいどれだけの工数の発注が消し飛ぶのやら(まぁその前に開発自体がストップするでしょうけど)。

「丸投げ」から「共創」へ

 大企業を見てると、ことITに関しては「ものづくりがヘタクソだなぁ」と思うときがあります。これだけ市場の変化が激しいのに、ユーザーの声を聞かずに思い込みだけで製品・サービスを作っているところが今でも沢山あるように感じられます。従来のマーケット調査みたいなのはしてるんでしょうけど、直接エンドユーザーの声を聞かない・ユーザーインタビューをしない、なんてのがザラ。延々とピントのずれ続けたモノを作り続けて、気付いたら数年・数十億費やしてる、みたいな悲劇だか喜劇だか良く分からないことが起こったりします。探索型開発ができないというか、アジャイルじゃないというか。
 じゃあアジャイルをやればいいかっていうと、そうは問屋が卸さなかったりします。


takigawa401.hatenablog.com


 以前こちらの記事にも書いたんですが、アジャイルな開発をしようとすると、従来のSIビジネスの根幹である一括契約が邪魔をして、そもそもアジャイルな開発にちっとも移行しないんですよね。トライアルでアジャイル専門プロジェクトを立ち上げて果敢に挑んでも、時をさほどおかずして失敗→元通り。フォルダ名だったりサーバーだったり施設名だったりに不自然に「アジャイル」がくっついてる資産が、その時の名残としてあちらこちらに残り続け、後世に引き継がれたりするわけです。デジタル時代の「つわもの共が夢の跡」は、他者から見れば滑稽でしかありません。


 ユーザー企業の実施するアジャイルな開発にSIerが関わろうと思うと、信頼関係を築いた上で納品物の取り決めを物凄く緩く設定した一括契約にするか、あるいはSES(準委任)契約でやるしかないんじゃないかなぁ、と思っています。しかもできるかぎり常駐でやるのが望ましいです、当然リモートワークをある程度許容することも前提で。ユーザー企業のシステム開発を肩代わりするのではなく、ユーザー企業と一緒になって同じ目線で開発するわけです。アジャイルな開発が主となった世界でSIerがユーザー企業とかかわり続けるのなら、一括契約を捨てると言う判断をしていかなくちゃいけないんじゃないかと推測します。

集団の力から個の力へ

 一括契約からSES(準委任)契約に切り替わるとなると、これまでよりも個人の技術力にフォーカスされるようになるでしょう。一括契約なら誰が開発に関わっていようが、何人関わっていようが、モノさえちゃんと納品されれば関係なかったわけです。ところがSES(準委任)契約、特に常駐型だと、どうしても顧客から個人が見えるので、会社うんぬんよりは個人の能力が問われることになります。優秀な技術者がいっぱい輩出される会社は必然的に優秀なSIerとして評価される、みたいな。まぁ個人の技術力が重要なんてのは今だって違いは無いんですが、十把一絡げで一括開発ばかりやってた会社だと、それなりにインパクトがあるのかもしれませんね。

教育とR&Dを頑張れるところが良いSIer

 となると、SIerの役割が「システム開発の肩代わり」から「優秀な技術者の育成」に変わってくるんじゃないでしょうか。更に言えば、開発チームは解散せず長く一緒に開発に携わるのがよいとされるので、「優秀な開発チームの育成」が出来るのが望ましいと思われます。会社全体でITエンジニアの技術力を高めるのであれば、整備された教育カリキュラムが必要ですし、新しい技術要素の活用方法を探究し、他者に伝播できるようブレイクダウンする必要があるはずです。必然的に社内の教育部門とR&D部門の重要性が高まるんじゃないでしょうか。

SIerの株式市場上場に初めて意味が出てくる

 オレはこれまで、SIerの株式市場への上場は無意味だと考えていました。SIerって結局ビジネスが人駆ありきなんで、投資先が「人」しか無いんですよね。一方で上場には莫大なお金がかかり、上場してからも莫大なお金がかかります。その割に得られるメリットが、SIerの場合少なすぎるように感じます。上場にかかる費用を給料に上乗せした方が、人駆だったらもっと質も量も集まるっての。顧客企業だって結局は信頼した会社にしか発注しないので、上場が信頼の証でそれによって仕事が集まるかと言うと、わりと眉唾じゃないかなと思っています。あんなもの、経営者のステータスのためか新卒を騙して集めるためのカンバンにしかなりえないってのがオレの持論です。


 しかし、社内の教育部門とR&D部門の重要性が高まるのであれば、投資先が「人」以外にもできたことになります。ここまでいって初めて上場で資金調達する意味が出てくるんじゃないかな、と。
 現在でも上場が企業の社会的ステータスを高めるという事実は変わりませんし、個人を売るために企業のステータスを高めるのは、どうしても必要だと思います。

ITエンジニアがタレントになる時代

 個人やチームが注目されるようになれば、バイネームで顧客企業から呼ばれるようになるでしょう。単価も人気によって変わるでしょうし、SIerも個人をタレントさながらにアピールする必要が出てくるかもしれません。
 以前きょんさんが「ITエンジニアで武道館ライブをやりたい」と言っていたのを思い出しました。あの時は突拍子が無さ過ぎてピンときていませんでしたが、もし個人やチームがバイネームで呼ばれるのが当たり前の時代になれば、ITエンジニアで武道館ライブをやるのも絵空事ではなくなるのかな、なんて思いました。


おわりに

 以上、ダラダラとSIer卒業記念にSIビジネスについて考察してみました。当たるも八卦、当たらぬも八卦。今日はプレミアムフライデーですし、これを酒の肴に色々と夢想してみるのも面白いかもしれませんね。


 来月からオレは一旦フリーランスとして働く事になります。故郷に年内に帰ることを大前提にしていたので、リモートワークを認めてもらえる顧客企業と個人で契約する、という方法しか思いつかず、結果良縁に恵まれてそれを実現することが出来ました。
 その後のビジョンも当然ありますが、まずは新しい働き方を確立して自分の足でしっかりIT業界に立ち続けることを目指したいです。