ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

祖母は病床にあっても女だった。

今週頭に故郷の下伊那から戻ってきて、5日より仕事も始動しました。結局生家に滞在したのは三ヶ日含む5日間でしたが、その殆どを病院巡りで過ごすことになりました。


これはオレ自身が体調を崩した訳では無く、お見舞いの為です。父方の祖母は患っていたパーキンソン病を悪化させてしまい現在は寝たきり状態に、数年前から病院付きの養護施設に入っています。そして母方の祖母は昨年末に脳血栓で倒れ(?)、病院に担ぎ込まれていました。幸い良い治療をして頂いたようで、オレがお見舞いに行った時には既にほぼ以前と変わらぬ状態まで回復していました。


「倒れ」に「?」に付けたのは、母方の祖母はこれ以上倒れる事が出来無い為。何故なら祖母は、かなり昔の農作業中の事故で首から下が殆ど動かず、以前から寝たきり生活を送っているからです。脳血栓にも関わらず、わずか半月で「以前とほぼ変わらない」とオレが感じたのは、以前からそんなに身体の自由がきかないからなんですね。喋れれば大体以前と一緒。オレが物心ついた頃にはもうその状態で、ベットの上で寝ている姿か車椅子に腰掛ける姿しか見た事がありません。車椅子姿でさえも加齢に伴い見掛ける頻度がめっきり減りました。


で、そんな祖母のお見舞いに行って、少なからずショックを受けた事があります。祖母の世話をするのは決まってオレの母(つまり母方の祖母の娘)なんですが、決まって要求内容が一定なんです。有り体に言えば身仕度関連に、やや大袈裟に言えばオシャレ関係に。

  • 顔を洗う(拭く)
  • ヒアルロン酸化粧水を顔に付ける
  • 同クリームを顔に付ける
  • 同クリームを手や首に付ける
  • 髪をとかす
  • 首に捲くタオルを新しいものに変える
  • 寝間着を整える

祖母が身仕度を整える際、オレや弟妹、娘婿である父がそこに立ち会うことは、(シモの処理も伴う場合が多い為)今まで一度もありません。大体において別室に移動していました。病院の狭い病室ではそういったエスケープゾーンが無かったことから、今回初めて目の当たりにしたのです。


ひとつひとつの行動が丁寧で、慎重で、慈しみがあります。無配慮なのはそれに応える母の行動だけ(ま、母は生来気が短いので)。自分が素っぴんのまま人前に立つ(?)為の準備に怠りが一切無い。実際に祖母は、寝たきりでさえ無かったら年齢より20歳は若く見えます。つい半月まで命に危険があったとは思えない程肌にツヤがあり、一見若々しい様です。首にまくタオルひとつ取っても、ただの汚れ防止に過ぎ無いのに、天候や気分に応じて色や長さや柄、配置を変えます。


祖母の見た目、というか見た目に出る加齢の度合いについて、オレはそれまで体質だと思ってました。というより、彼女の見た目になんて興味なんて欠片ほども無かった。オレにとって、ただ祖母は祖母のままであれば良かったんです。でも祖母はその自らの美しさを、自らの不断の努力によって守ってきたのです。たとえ30年以上病床にあっても。それに付き合わされる介護側はたまったモンじゃ無いでしょうが(笑)、結果としてそれが彼女を若々しく保ってきたというのが事実なんだと思います。


祖母は間も無く退院し、リハビリ専門の病院に転院する予定です。オレとしても祖母にいつまでも若くあって欲しいのはヤマヤマなんですが、世話をする際の母の怒りっぷりを見ているととてもそんな事気軽に口には出来無いので(笑)、一日も早く以前程度に動ける様になって、自力である程度ケア出来るようになって欲しい、と願う次第です。