5/27(金)、「TdX講演会#02「チームと漫画づくり」」参加メモ
だいぶ前の話ですが、先月5/27(金)に東京工業大学大岡山キャンパスで開催された東京工業大学CBECプログラム主催「TdX講演会#02「チームと漫画づくり」に参加してきました。
スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックのふたりを中心に、Macintoshを作り上げ販売していく漫画「スティーブス」の原作者(松永肇一氏)と漫画家(うめ:企画・シナリオ・演出担当:小沢高広氏、作画・演出担当:妹尾朝子氏)のお三方を講師に、どうやって「スティーブス」を作っているかを解説して頂く、というような内容でした。
漫画「スティーブス」の内容紹介は以下。(Amazonから抜粋)
Mac、iPod、iPhone、iPad…世界を変え、世界を作った企業・アップルコンピュータ。今から約30年以上前、その中心にいたスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックは、まだ無名だった。二人の武器は圧倒的な向上心と探究心、そして遊び心。向かうところ敵だらけ、障害だらけの1970年代のシリコンバレーを舞台とした二人の革命に浸れ…熱狂せよ…!!
最近は講義形式の勉強会自体に参加してないこともあって、勉強会に参加してもメモを取らない・取ってもツイートで済ませてしまうことが多いんですが、今回は珍しくメモを取ってきました。メディアにも取り上げられていたので今更感はぬぐえないですが、せっかくなので備忘録も兼ねて公開しておきます。
- マンガを作る体制
- 通常の原作ありマンガ
- 原作者→編集→漫画家
- 原作と漫画家は会わない、ちょいちょい喧嘩する
- スティーブスの場合
- 原作者・編集者・漫画家(2人)がほぼ毎話顔を合わせて話し合う
- 原作者(松永さん)
- リサーチャーとしての役割も
- 事実関係の確認
- 作品を完成させて雑誌に載せると、読者から「この資料持っているよ」と声がかかることも
- 編集(谷川さん)
- スティーブスの1話ができるまで
- 確認するのは:年表(縦軸:時間/横軸:キャラクター)←松永さんオリジナル
- ザックリした話の構造を考える
- 使えそうなエピソード
- 泣かせに行くのか笑わせに行くのか
- 原作(松永さん):資料を漁ってエピソードを考える
- 早い時は打ち合わせの最中に出来上がることも
- ダメな時にはパズルを合わせて持っていく
- ※スティーブ・ジョブズのネタ(逸話)はどこにでもあるが、他のキャラはエピソード探すのが大変
- →プロットは通勤中にiPhoneで書く(Textforce:DropBox対応)
- DropBoxで漫画家(うめのお二人)に共有
- 打ち合わせで決まったプロットと違うことがある
- 1話20ページでやってる→上がってくる原稿の内容は20数ページ分
- →マンガ家側で取捨選択、良いところ・絶対入れないといけないところをピックアップ
- →あんまり言い争いにはならない(事前に打ち合わせしているので)
- 三幕構成(OP→展開→クライマックス)
- 問題を解決させる:OPで誰かに言わせる
- 原作をベースに
- エンジニアが喋る内容は松永さん任せ
- 吹き出しだけ開けといて「これ埋めといて」
- ネーム
- Photoshopで作成
- 白紙の20pを作成
- 原作のテキストを20pに分割
- コマ割り
- キャラ描き
- ネームになった段階で編集・原作者に共有
- フィードバック
- 原作者:技術的な内容
- 編集 :感情的な揺れ動き
- 原作者に追加依頼
- 参考資料探し
- ex:原作「基盤が箱に入っている」→妹尾さん「箱って何?木箱?段ボール?」
- ジョブス映画はけっこういい加減、ちゃんと検証してない
- ポエム(詩的なナレーション)→ex:OPトーク
- 「ポエムが要るんだよ!」「ふぁ!?」
- 「今日はもうポエムったから寝る!」
- 松永さんはエンジニアなのにポエムが得意
- 松永さん「ポエムは書いてて楽しい♪」
- 動きは原作では描写しにくい
- スティーブスも大東京トイボックスも漫画には不向き、事件は会議室で起こる
- 打ち合わせ
- 対面:2weekに一度
- 他:Facebookグループ(非公開)で議論
- 作画:フルデジタル
- 小沢さん:美術監督、背景の3Dを作ったり
- 3Dは一度作ると使い回し出来る
- 最後はアシスタントが手を加えてCGくささを消す
- ちょっと手が開いたから、といって先行着手すると、だいたいその3Dモデルは使われなくなる
- 単行本
- 8話で1冊
- 後半3話が凄く大事
- 最初はふろしき広げるだけ広げられるので楽しい
- 最後の方は見せ方を考えた時に原作1話で3話分くらい作れてしまう
- スティーブスを作る
- 現実歪曲空間
- 原作
- 台詞をいっぱい書いて相手を説得する
- マンガ
- バシュ!(風を吹き起こす):マンガ的演出
- →どう理詰めで書いても限界がある、マンガのずるさを使う
- →原作にもフィードバックされていった「ドアを開けて風が吹く」
- リリース直前に「これ、能力者にしようよ」(※最初はWeb限定)
- 「スティーブスの最大の売りは現実歪曲空間の可視化だ!」
- フィードバック
- 原作→シナリオ→マンガ
- さらにフィードバックがかかることも
- クリスとランディのエピソードが好きで原作には良く書くけど、マンガにはたいていならない
- →メインストーリーから距離が離れるので、切ってしまう場合がある
- 書いた瞬間に「あ、このセリフ絶対使われる!」と思うとだいたいマンガに使われる
- 小沢さん「うちのネームは「決め台詞」「すごくかっこいいセリフ」みたいに入ってることがある」
- 話の流れさえちゃんと作れていれば、台詞はあとからなんとかなる場合も多い
お三方のお話を伺った個人的な感想ですが、原作者の松永さんも、うめのお二人も、良い意味で「越権行為」ができているんだなぁという印象がありました。
漫画の原作って、作画担当の人にとって不可侵領域なんじゃないかと勝手に思っていたのですが、話を切り捨てたり、逆にエピソードを膨らませたり(ex:アラン・ケイ)と、漫画家サイドも割とストーリーに対しても大きな裁量を持っているのにはビックリしました。
一方で、松永さんもビジュアルについて注文をつけていたり、素材提供という形で作画に協力していたりと、手戻りなしのアニメ制作なんかと違って行ったり来たりの相互コミュニケーションが行われていることがよく伝わってきました。効率重視じゃなく、手間をかけても良い作品を!と心がけていらっしゃるからこそなのかもしれませんね。