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ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

会社を辞めたので自転車で四国八十八ヶ所参りをやってみた。其之四:ロープウェイ

第十三番札所:大日寺

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 6:20起床。うっかり寝過ごしてしまった。寝心地の良い布団と環境とは、圧倒的な正義だが、時に暴力である。
 神山温泉を出ると、最初は上り坂。神山温泉が谷間にあるからだ。あっという間に汗をかく。が、この道は昨日、焼山寺に向かう時に通った道。基本的に下り坂ばかりになる。上り坂でたっぷり汗をかかされた後、朝の寒空を猛スピードで自転車で坂を下るとどうなるか、おわかりいただけるだろうか。


 大日寺自体は細い道が大きくカーブするその脇にある。交通量が割合多いのにカーブにあるものだから、危なっかしくてしょうがない。ただまぁ、そもそもそのカーブができた理由が、おそらく「道を大日寺が避けたから」なのだろうが。

第十四番札所:常楽寺

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 寺の境内に剥き出しの岩がゴロゴロしている。おそらくこういう意図でデザインされているのだろう。お遍路さんの多くは老人なので、彼らには優しくないな、と個人的には思わなくもないが。


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 寺に着くとちょうど団体のツアー客が一斉に般若心経を読経していた。たとえ素人とはいえ、これだけの人数が一斉に読経しているのを聞くのは、なかなか壮観である。


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 たまたまなのか、昨日焼山寺で見かけた老人に、またここで出会うことになった。おそらくはオレと同じ順打ちなのだろう。老人の歩き遍路で自転車のオレに追いつけるわけがないから、おそらくは車で回っているのだと思われる。それにしても彼の詠唱は朗々としていて素晴らしい。

第十五番札所:國分寺

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 本堂が立て直し中で、仮本堂が設置されていた。仮本堂とはいえ、十分立派なものだと思うが。


 ここでも団体客に遭遇。納経所に行くと、案の定ツアーコンダクターとおぼしき人物が、大量の納経帳をカウンターに積んでいた。オレも自身の納経所を手にその様子を眺めていたら、受付の人が団体客のを差し置いてオレの納経帳に優先して御朱印を授けてくれた。どうやら団体客より個人客を優先させるというルールになっているらしい。でないと個人の人いつまで経っても次行けないもんなぁ。

十六番札所:観音寺

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 次第に天気が晴れて、暖かくなってきた。こんな日ばかりでないのは知っているのだが。
 徳島の道路は、歩道が広くて段差が少なく、とても走りやすい。のに人が徒歩で移動することが基本無い(車社会だ)から、自転車が走るには都合が良い。オレは東京では安全のため自転車では車道を走るようにしているが、徳島では自転車は歩道を走った方がみんな幸せになれる気がする。

第十七番札所:井戸寺

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 途中で見つけた徳島の電車。2両編成。オレは電車マニアじゃないけど、なんとなく親近感があって撮ってみた。たぶんオレの地元の電車と同じ車両編成だったからじゃないかな。


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 自転車のタイヤがいよいよ不安になって、たまたま通り掛かった自転車屋に飛び込む。その店はいかにも「街の自転車屋」といった風情で、腰の曲がった老人が一人でやっているボロボロの店だった。ダメで元々、のつもりで尋ねたが、やはりこの店にはクロスバイク用のタイヤは無いらしい。かわりに老人は、オレの自転車を見てくれそうな店を教えてくれた。老人の店から1kmと離れていないとのこと。多少遠回りだが、自分の自転車に不安を感じながら走る苦痛に比べればなんてことはない。
 そして実際にたどり着いたのが上の写真の店。本格的な自転車ショップで、店員さんがとても丁寧に応対してくれた。後輪タイヤの交換だけでなく、空気の入れ方(量・タイミング)の目安を教えてくれ、さらに前輪ブレーキ交換の必要性を指摘してくれた。せっかくなのでブレーキ交換も行ったが価格が東京:三軒茶屋で行った時の半額程度だったことに驚いた。(交換したブレーキ部品のグレードは一緒) こんな店が近所にあればなぁ、とつくづく思う。


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 タイヤを交換した後の走りは爽快で、井戸寺にはあっという間に着いてしまった。どうでもいいけど、井戸寺っていぼ痔と音の響きが似てるよね。

第十八番札所:恩大寺

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 井戸寺から意外と距離がある上、最後が割と急な上り坂。つらい。


十九番札所:立江寺

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 オレがこの旅で見かけた中で、たぶん最も若いお遍路さん発見!
 ……若い、というより、幼い、という方が正しいか。

二十番札所:鶴林寺

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 徳島2つ目の「遍路ころがし」と呼ばれる鶴林寺に向かう。恩大寺からやや遠くにあるのはまだいいが、最後の5kmが険しい急勾配なのだ。昨日の焼山寺みたいなものか。
 上の写真はそこへ向かう道の田園風景。一見穏やかで気持ち良い光景に見えるが、ものすごい向かい風が吹いていて、平地なのに全然進まなかった。


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 右に行くと鶴林寺、左に行くと太龍寺。急勾配が待っていると思うと、ここに自転車を置いていきたい衝動にかられる。結果的にはここに自転車を置いていかなくて本当に良かった。


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 急斜面を利用した柑橘系の果実の畑。そういえば柑橘系の果樹園を初めて見た気がする。オレは長野の農村の育ちなのだが。やっぱり育てるものは地域ごとに違いが出てくるのだなぁ。
 ……のんびり景色を眺めているようだが、空前絶後の急勾配を自転車で登っている最中だ。漕ぐこともできず時たま自転車を降りて押して歩くが、あまりの急斜面に10歩ほどしか続けて歩けない場所もあった。時折足を止めて息継ぎをしながら、必死で一歩ずつ歩く。


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 鶴林寺まで残り2.0kmほどまで登ると、太龍寺ロープウェイ乗り場への分かれ道にたどり着いた。さっきの分かれ道を最終的に通ることはなかったのだ。あそこに自転車を置いてこなくて、本当に良かった。


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 そこからしばらく登ると歩き遍路道に出会う。歩き遍路だと1.0km弱、車道を行くと2.0km。体力も気力もとっくに尽きている。散々迷った挙句、ここに自転車を置いて歩き遍路道へ。


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 とはいえ、歩きでも随分と急な斜面。決して楽では無い。


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 とても良い景色だが、写真を撮れているのは、余裕があるからではなく、あまりの登りのきつさに休憩を入れないと続けて登れなかったから。


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 20分ほど登り続けると、ようやく鶴林寺の山門にたどり着く。


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 なんとか鶴林寺にお詣りを果たす。
 ここの納経所で若いカップルが話しかけてきた。男性は白人系の外国人で無精髭を生やしている体躯の良い男、外国人の年齢は見た目ではなかなか分からないが、おそらく20代だろう。女性は日本人で、やはり20代半ばと思われる。話を聞くと、どうやら自転車を押して歩くオレを車で追い抜いて鶴林寺に来たらしい。そのオレの様子を見て随分と驚いたらしく、男性が「頑張ったあなたに」と焼き菓子をくれた。その様子を見ていた納経所の方からも大きな飴玉をいただく。お接待をいただくのはこれが初めてだ。
 しばしその場で談笑。オレが東京から来たことを伝えると、彼らはもっと驚いていた。オレに対する言葉や態度から察するに、どうも彼らはオレがかなり若いと勘違いしているらしい。確かにオレは、FC東京のトレーニングパーカーにチノパン、トレッキングシューズと、一見若い格好をしているかもしれない。実はアラフォーなのだと伝えてみようかとも思ったが、意味の無いことなので止めた。
 10分ほど話すと、太龍寺までの道を納経所の方に確認して彼らと別れた。「頑張ってね」「気をつけてね」なんでもない彼らの気遣いが、とても嬉しかった。

二十一番札所:太龍寺

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 先ほど息も絶え絶えに登ってきた歩き遍路道を、今度は一気に下っていく。登るときは階段より斜面の方が登りやすかったが、おりる時にはきちんと足を踏ん張って止まれる階段の方が下りやすかった。
 自転車までたどり着くと、今度は車道を自転車で下っていく。先ほどの分かれ道で太龍寺ロープウェイの方に曲がり後は、ひたすら下り坂。鶴林寺の納経所の方は「自転車だったら30分くらいでロープウェイ乗り場に行けるはず」と言っていたが、本当に30分間ひたすら下り坂だった。オレは鶴林寺までどれだけ登ってきたのだろうか。下りていくのは楽は楽だが、夕暮れ前ですでに気温はかなり寒い。


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 およそ30分で太龍寺ロープウェイ乗り場に到着。オレの他には熟年夫婦が1組いるのみ。我々が乗るのは上りの最終便だった。下りは17:20の臨時便と決められていて、それまでに戻ってきてほしいと係の人から言われた。


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 ロープウェイから見える景色。すっかり夕焼けの風情だが、係りの人の話だと、帰りの方がもっと景色は夕焼けが良いらしい。


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 大急ぎでお詣りと御朱印の記帳を済ませる。


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 ロープウェイ乗り場に戻る頃にはかなり暗くなっていた。悠長に写真を撮っていたら、早く乗ってくれと係りの人に急かされた。頂上駅の係員も、この臨時便で下界に帰るらしい。


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 帰りの便から見える景色は絶景だった。まさに日が暮れんとする際、逢魔時というやつだ。ロープウェイの乗車料金はそれなりに高価で、たかだか20分程度の滞在時間だとやや割高に感じてしまうが、この光景が見られるのであれば、悪く無い出費だったかもしれない。


 麓駅に着く頃にはすっかり日が暮れていた。気温も一気に下がり、震えるほどの寒さになる。12月であったことを今更のように思い出した。宿を取ろうと方々に電話をかけたが、残念ながらどこも満室。仕方なくこの晩は野宿することになった。この旅初の野宿である。
 次の平等寺の付近まで移動すると、適度に人目に触れない空き地を探した。1時間ほどでちょうどよく野球グラウンドほどの空き地を見つけたが、暗いこともあって何のための空き地かいまいち分からず。まぁ人も全く来ないようだし、都合が良い。急ぎテントを張って、携帯コンロで晩飯にコンビニで買った炒め用野菜の袋詰めを煮た、簡単なスープを作って食した。二度目の遍路ころがしに疲れたのか、あまり食欲がなく、半分残す。残りは明日の朝食へとなった。


 テントと寝袋で12月に野外で寝られるか? 当たり前だが答えはNoだ。ユニクロヒートテックを何枚も重ね着したが、それでも寒かった。また、風が吹くたびにテントが音を立て、それを「誰かが来たのではないか」「何かが来たのではないか」といちいち怯えることになった。深夜2時頃にあまりの強風でテントが大きな音を立てたときは、恐怖のあまりテントから飛び出したが、周囲には誰もいなかった。ホッと胸をなでおろし、落ち着いて周囲を見渡すと、天上には満天の星空が広がっていた。三脚を持っていればこの光景が写真に収められたのに。そう思いつつも、再びテントの中に戻る。以降、夜明け直前まで、浅い眠りと風音による覚醒を繰り返し続けた。

この日の走行距離

  • 94.3km(+歩き11.9km)