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ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

シマフクロウが撮影出来る旅館の話。

Business



 TwitterFacebookではちょいちょい呟いてましたが、昨年、オレの親父が二科展の県の写真部門で大賞を受賞しました。よっぽど嬉しかったんでしょうねぇ、上の写真のパネルは出展用なので仕方ないとして、ポストカード作ってたり、祖母の入っている養護施設に額縁に入った写真があったり、本当にそこら中ツバメの写真だらけでした。


 まぁ鳥の写真ってのは、撮るのがそもそも難しい(フレームに入れる事がまず困難)なのに加え、ちょっと珍しい鳥を撮ろうと思うと、朝早く出掛けにゃならんわ、高速で何時間も車出さにゃならんわ、挙げ句の果てにポイントでジッとファインダーにらんだまま数時間、場合によっては離島まで船でン10時間とかもあるわけで、それだけ頑張っても良い写真が撮れるかどうかは機材と腕とやっぱり運次第になっちゃうわけです。
 昔、物凄く苦労して撮ってきた写真を、娘(=オレの妹)に「なにこの消しゴムのカスみたいなの」と吐き捨てられた時の親父のショックな顔は忘れられません。


 さて、この正月中は毎晩親父と晩酌していたんですが、その際の話題も殆どが野鳥の話でした。野鳥撮影の苦労と言うのは、他の趣味とは比較にならないくらいストイックですねぇ、どれもなかなか面白かったんですが、そんな中でちょっと興味深い話を聞きました。




 絶滅危惧種に指定されている「シマフクロウ」という鳥がいます。当然人間は飼えないし、生息域への立ち入りも厳しく制限されています。更に場所が雪深い北海道。野鳥ファンなら色んなリスクを負ってでも、雪を背景に悠然と羽ばたくシマフクロウを撮影したいはず。

 そのシマフクロウの生息域の一部に「養老牛」という温泉郷があります。野鳥ファンが時折やってくるのに目を付けたんでしょうね。とある旅館が面白いサービスを始めたそうです。


 まず中庭が見える広い窓の個室を野鳥ファン向けに用意します。値段については親父から聞きそびれましたが、おそらくちょっと他の部屋よりお高めなんじゃないでしょうか。当然温泉も料理も提供しますが、重要なのはこの「中庭が見える広い窓」です。中庭に深く積もった雪に大きな穴を掘り、水を張って生きたヤマメかイワナを放します。近くには薄明るく中庭を照らす照明を焚いておきます。


 そうすると、夜になるとシマフクロウがやってきて、中庭の魚を獲っていくんだそうです。それを野鳥ファン達は、部屋に居ながらにして撮影出来るようになっているんですね。


 これは野鳥ファンにとっては本当に凄いサービスなんだそうです。

 まず高確率でシマフクロウの補食シーンを撮影できること自体にメチャクチャ価値があるのです。もしこのサービスが無かったら、シマフクロウを発見することがまず困難、仮に見つけられたとしても羽ばたいてくれるかどうかはかなり怪しい。さらに、羽ばたいたとしても、どっちに飛ぶかなんて人間には教えてくれませんから、フレームに収めることが物凄く難しいのです。
 それが「高確率でここに餌を獲りに来ますよ」というポイントが提示されるのです。部屋の中で撮影出来るから、真冬の深夜に外で待ち続ける、といった辛さも回避出来ます。シマフクロウを撮影したい野鳥ファンにとって、願ったり叶ったりのサービスになっているわけです。
 最悪シマフクロウがやってこなくても(野鳥撮影は空振り、つまり目当ての鳥がみつからない・やってこない、ということが非常に多い)、温泉に入れて美味しい料理が食べられるわけだから、ただ「撮影できなかった」よりは全然満足度が高いのだそうです。


 このサービスは非常にニッチなもので、これをやっているから大儲けできる、ということは無いと思います。そこまで沢山の客は来ないんじゃないでしょうか。でも、競合が数多くいるなかで自分のサービスを選んで貰おうと思った時には、差別化の大きな武器になるんじゃないかな、と思いました。
 野鳥ファンのような普段どこにいるんだか分からないような人達の特性も、知っておくと自分のビジネスの助けになるのかもなぁ、と今回の話を聞いて思いました。色んな人の話は常々聞いておくものですね。