11/08(木)、「Enterprise User eXperience Design - ユーザー中心設計の実践 -」に参加してきました。 #devlove
はじめに
先週11/08(木)は、東京:有楽町は株式会社ぐるなびで開催された「Enterprise User eXperience Design - ユーザー中心設計の実践 -」に参加してきました。参加理由は、単に「UX」というキーワードに釣られただけ、という安直なものだったんですけどねw。
以下、記録したメモも掲載していますが、あまりの情報量でメモ仕切れなかった部分が多いので、メモはあまりアテにしないで下さい。オレ個人としては感想をメインに書いていきます。
OPトーク
- 始めての人
- →1/3 くらい
- DevLOVE ってなんですか?→@jun116代役(無茶振り)で説明
- 開発を楽しむ、開発を推進する
- DevLOVE2012宣伝
- UXがテーマ
- UX初めて聞いた→0人
- 結構調べてる方→ちょいちょい
- 現場でUXデザインやってる人5人
- DevLoveでUXは2ー3回目
- →やろうと思ったら知見が足りない
- →謎の人脈を使って呼び寄せました
DevLOVE船長:@papandaさんからのOPトーク。DevLOVEコミュニティの説明も毎回のことなので飽きたのか、突然裏方スタッフの@jun116さんに説明を無茶振りしてましたが、一瞬動揺を見せたもののつつがなく説明して見せたあたりはさすがw。あと、この日のゲストを連れてきた時の説明にあった「謎の人脈」って表現はオレのせいかw!
会場入口に最も近いテーブルに着席したので入場してくる人が良く見えていたんですが、見知った顔ばっかりだなぁと思っていたら、それでも1/3はDevLOVE初参加と聞いてビックリしました。常連ばかりのように見えて、ちゃんと人は入れ替わっているんですねぇ。
ユーザ中心設計(UCD)によるユーザインタフェース開発のススメ 日本ユニシス アドバンスド技術部ECラボ ユーザビリティ&デザインセンター 有家正博氏
- DevLOVE初めて
- エンタープライズでのUXへの取り組み
- どういうところにお金を使いますか
- Webデザイン
- ユーザビリティテスト
- 総務省U-Japan政策
- ICTを使ってない人に対して障壁がないように使えるように促していく
- E-Japan戦略
- ユーザビリティとUX
- 2000〜現在
- ユーザビリティ・エンジニアリング・プロセスの紹介
- UCD
- 製品を利用する人にとって使いやすく魅力的なシステムにや商品をデザインする為の手法
- ISO9241-201
- Web画面は単なる一枚の画像
- →後ろにあるもの
- 表面
- 骨格
- 構造
- 要件
- 戦略
- ユーザや組織の満足度を向上させる循環
- 現場調査
- 現場分析
- ペルソナ作成
- 要件抽出
- プロトタイピング
- 評価する(ユーザーテスト)
- ユーザビリティ&デザインセンター
- 支援組織設立までの歴史
- きっかけは?
- 5つのユーザビリティ特性(ヤック・ニールセン)
- なんでユーザビリティなのか
- 技術が急速に進歩複雑化
- 複雑なシステムの典型的な問題
- 解決すべき課題がなんなのか
- どのような処置で問題が解決できるのか
- 機能の充実と使いやすさ
- etc...
- ユーザビリティ向上の費用対効果
- なにが起きているか
- 次のステップユーザビリティ改善施策の思考
- 必要ツール
- 社内セミナー
- アセスメント準備
- 全社適用活動に向けた準備
- →一番大変だった
- 事業化計画作成
- 役割定義
- UCDを考慮したプロセス定義
- 活動に必要な予算確保
- →アフター5を使って説得して行った
- 大きな課題
- 従来の開発の進め方
- →プロトタイプって作らないの?
- 全部出来上がってからユーザに確認
- ↓こんなの違うよ
- ↓一からやりなおし
- 新しいUI開発の進め方
- →プロトタイプは要件定義フェーズでやるしかない
- →短いサイクルで
- →デザイナーとSEの間を取り持って
- 全プロダクトがこうなっているわけではない、試行中
- コストの部分が変わってくる
- →やりなおしになる危険を顧客に説得する
- →持ち出しになることも
- →成功する、実例が出てくると波及する
日本ユニシスの有家氏より、UXとはなんぞや?という説明から始まり、日本ユニシス社内のUXチームが出来た経緯と、実際に開発を受注案件で始められるようになるまでに行った準備の内容についてが解説されました。たぶん有家さんが喋っていたのは1時間弱だと思うんですが、2時間くらい聞いてたんじゃないかと思うくらいの情報量でした。後からスライド公開してくれないかなぁ。
日本ユニシスという、従来のシステム開発を生業とする、どちらかというとステレオタイプというか古いタイプというか、一般的にイメージされる「THE 日本のSIer」というイメージを持ちました。この時点で、今まで聞いてきた「UX開発」のイメージからは乖離があるな、と率直に感じました。違和感、と言ってもいいかもしれませんが、この「違和感」が後の気付きにつながります。
ユーザ中心設計(UCD)によるユーザインタフェース開発のススメ:後半 日本ユニシス アドバンスド技術部ECラボ ユーザビリティ&デザインセンター 小林誠氏
- UXとは?
- 難しい考え方、如何に簡単に説明するか
- 機能がある→使いやすい→嬉しい・楽しい(UX)
- UXの例
- iPhone
- Piano Stairs →階段利用者の66%増加
- The World's Deepest Bin →2倍以上の収集量
- →ビジネス上の目標を達成するのに使える
- UXのハニカム構造
- UXを実現するにはどうすればいいの?
- ユーザ中心のものづくり
- 表現豊かなUI
- UI改善案件におけるUCD適用事例
- 改善ポイント
- メニュー構成
- クリックしやすく
- 見やすく
- 階層だてて
- 入力フォーム
- なにが必須入力か
- 項目が多すぎる
- 本当に使いやすいの?
- 案件概要
- 金融系SaaS型インターネットシステムのリニューアル案件
- B2C向けたWeb画面のデザイン及び操作性の改善が目的
- 対象システム
- 「TRADEBASE 4 FX」
- FXのオンライン取引
- 一般投資家、投資事業家
- UCDプロセス
- スコープ特定
- →利用状況の調査分析
- →ユーザ要求の抽出
- →解決案の作成→解決案の評価
- 作業スケジュール
- 半年間
- 前半3ヶ月
- 要件定義;調査分析→ペルソナ作成→プロトタイピング
- 後半3ヶ月
- 製造
- 営業
- 出来上がったイメージを顧客と共有し続けた
- UCDの適用
- 0 スコープの特定
- 事前打ち合わせ
- 要望ヒアリング
- 画面デザイン〜HTMLモック作成
- 業務知識の習得
- レクチャー
- 体験版
- →SE(業務と向き合っている人たち)と話ができない
- 1 現行調査
- 2 ユーザ要求の抽出
- ペルソナ作成
- ペルソナ法とは?
- 具体的なデータを元に作り上げられた架空のユーザー像
- シナリオとは
- ユーザがシステムを使って何をしようとしているのか、を物語風に記述
- ペルソナ・シナリオ法とは?
- ペルソナを定義した上でペルソナがどのようにシステムを活用するのかをシナリオ作成する
- アクタ:ユーザを抽象化
- ペルソナ:利用者そのもの
- ユースケース:機能要件の抽出
- シナリオ:UIに対するユーザの要求
- UI要求の抽出
- 3 解決案の作成
- ペーパープロトタイピング
- 手書きで大まかなワイヤーフレームを決めていく
- HTMLモック作成
- ユーザーにとって見たい情報がすぐに見れる画面構成になるようにしてある
- 優先度をユーザーが自分で選べるように
- 初心者向け→マウスクリックだけで操作が出来て売買ができる
- UIの実装が出来るSEはそう多くない
- UI設計書を製造前に作成して開発に渡す
- →JSやCSSや使用画像をできるだけ丁寧に
- まとめ
- 大幅な改善が実現できた
- UCDに忠実に則ったUI設計が出来た
- ノウハウ蓄積
- 成功要因
- 成功事例としてあげることができる
- 次の顧客獲得につながる
- 体制として開発サイド(SE)に協力的に理解してもらいながら開発が出来た
- →プロジェクトスタートの段階で懇切丁寧に説明したのが実った
- 今後の支援活動について
- この成功事例を糧に次につなげたい
- UCDプロセス
- カスタマーエクスペリエンスを最高にする方法
- 良い驚き
- 特別な取り扱い
- 思い出
- 実現するには
- プロセスを効率良くする
- 適切な場所とタイミング
- 価値ある機能
- Webシステムではユーザビリティ&UX
- お問い合わせ→ユーザビリティ&デザイン【日本ユニシス】
休憩挟んで後半戦は、発表者が小林氏に代わって、話の内容も実例を踏まえた「日本ユニシスのUX開発」についてに変わります。
Excelで画面モックを作ると言う話題が出た時には会場が一瞬どよめいたような気がしますが、よくよく考えればオレもこれまでお客さんに画面を提案するのに使ったのは全部Excelでしたし、ハイパーリンクで画面遷移も説明できるし、何よりみんな使っている(一部の人しか入れていないアホみたいに高いデザインツールとかじゃない)んだから、ツールにつきまとうイメージはともかくとして、非常に便利な道具だよなぁ、と改めて思い直した次第。あと、Excelはやろうと思えばここまで出来るしね(やる気になるかどうかは別として)。
【エクセル講座】オートシェイプで書いてみた【双葉理保】 by Rev ニコニコ動画講座/動画 - ニコニコ動画
やっていることはこれまで他のところで伝え聞いた「UX開発」と一緒なんですが、実際にやっていることがSIerらしいというか、非常にキッチリしているというか、色々付随するものを積み上げている印象を受けました。オレ自身はちょうど今どウォーターフォール開発のど真ん中なので非常に親近感がわきましたが、他の人はどうだったんでしょうね?
やっぱり後半も情報量が凄くて、時間もやや押し気味だったこともあり、この後予定されていたダイアログは急遽中止に。Q&Aのみとなりました。
Q&A
社内の啓蒙活動の進め方
- 社内にユーザビリティという言葉を知っている人はいなかった
- でもシステムが使いづらいと思う人は多かった
- →数値化して金額化してみんなに見せた
- 確定申告システム
- ものすごく使いづらい
- 改善したらどうなるか→デモを作った
- →共鳴してもらえる人が増えた
- →取り入れないと今後どうなるか分からないよ(半ば脅し)
- →洗脳して行った
プロジェクト実現化の際タスクが上がった、どうゆう優先順位で
- ロトタイピングの前後で課題の優先順位の調整を行うことが多い
上位組織とはどういう関係?(社内での立ち位置))
- 横串組織
- 基盤
- 流行る技術の追求
金銭面では?
- 研究開発→徐々にプロフィットセンターへ
組織の人数は?
- 5ー6人
案件のチョイスの仕方
- 来るもの拒まず
ユニシスに入ったらこういう仕事はできますか?(@papanda)
- 全員にはやらせてあげられない
- 熱く語ってくれるなら!
この時点でオレ自身結構バテててメモをだいぶ取り逃しましたw。会場挙手による最後の質問者は、割と枝葉に思われることをずいぶん細かく聞いてたのが印象に残っているんですが、何か具体的にやりたいことがあるのかも知れませんねぇ。
クロージング
時間もなかったので、以降の質問・問い合わせはメール、Twitter、ブログでお願いします、とのこと。会場に残った人で一斉に片付け(机と椅子の配置の原状回復)をやってお開き。少人数で軽く反省会を開いて帰路につきました。
総括
今回の話を聞いて、率直に思ったのが「重い!」という感想です。アレをやるのは相当しんどいんだろうなぁ、という印象を持ちました。紹介された方法でやってると、開発メンバーが疲弊しちゃうんじゃないかなぁ、と。
ですが、勉強会が終わった後で@take3000さんや@_N_A_ さん、@TAKAKING22さんと反省会的に意見交換し、その後色々と考えてみたところ、実は日本ユニシスさんの事例はものすごい事をやってるんじゃないか、という思いに至りました。
だって、SIerとしてのこれまでの仕事のやり方を一切変えずにUXだけ導入したんですよ。たぶん単純に巷に存在する「UX」をそのまま導入しようとしたら、社内外の反発が大き過ぎて頓挫していたはずです。
今巷で聞かれる「UX開発」はアジャイル開発とワンセットです。が、今の大手SIerの中で開発手法をウォーターフォールからアジャイルに変えるのは、強烈なトップダウンでもない限りほぼ不可能です。組織が大き過ぎて体質変換に時間が掛かり過ぎる、大企業の顧客のクリティカルな案件ばかり抱えていてワンミス・即・信頼失墜という状況、顧客も長い間大手SIerの出すアウトプットに慣れていて今更他のアウトプットなんて望んでいない、人材が若手から年配まで幅広くいて新しい物事の吸収度合いにばらつきが出過ぎる、これまでのビジネススタイル(契約形態)を簡単に崩せない。
そもそも顧客にとってウォーターフォールだろうがアジャイルだろうが、望んだものがちゃんと出来てくるならどっちでもいいんですよね。日本ユニシスさんは一番大事なのは「ユーザー体験を向上させること」だと見極めて、そこにだけは絶対に妥協しないように目指したんだと思います。「UX」を顧客に提供したい、提供できるようにならなくては組織として危機に立たされると考えた。でもそのまま「UX」を組織に導入出来ない。相当のジレンマで苦しんだはずです。それでも組織のあり方は極力変えず、抵抗が最も少ないであろう方法でソフトランディングさせていった。それも5年以上という長い年月をかけて。ISOの規格が頻繁に出てくるのも、指標やドキュメントを沢山準備しているのも、従来のやり方の中で説得力を持たせる為の有用な手段として必要になったのだと思います。想像を絶するような苦労だったに違いありません。本当に頭が下がります。
その結果としてプロトタイプ開発を事前に行う「本物のウォーターフォール開発」に辿り着いたり、と期せずして本質に近い答えを出しているのも非常に興味深いですね。
勉強会の反応はTwitterでは賛否両論だったそうです。そりゃ「アナタ達が知ってるUX」だったらそうでしょうよ。でも日本ユニシスさんの「UX」はどこにもない、新しいトライの結果です。試行錯誤で現時点までに辿り着いたのがお話し頂いた内容なんでしょうし、あの話はまだ道の途中で、これからも進化し続けるんだと思います。
オレは、今回の話で日本ユニシスのお二人が示してくれたのは、オレのように大手SIerの潮流の中で働く多くの人間にとって「光の道」だと思いました。その気になれば自分たちの元々持つコンテキストの中でも十分顧客に価値を提供出来る。アリエナイなんて有り得ない。
この話を5年前に聞きたかった。ここまで辿り着けず、大した事もできずに挫折してしまった自分を本当に情けなく思うと同時に、自分が目指したけど手に入れなかったものを見せてもらえたような気がして、本当に感謝しています。
それにしても、@papandaさんはどうやって日本ユニシスさんを見つけてきたんでしょうね?本当に謎の人脈っすわ。@papandaさんとDevLOVE裏方スタッフの皆さんにも感謝。