9/27(木)、「Experience Vison のはじめかた」に参加してきました。 #DevLove
はじめに
今日は東京:麹町のKDDIコミュニケーションズで開催されたDevLoveの勉強会「Experience Vison のはじめかた」に参加してきました。「UX」「人間中心設計(HCD)」なんてキーワードが最近話題になっていますが、デザインの立場からどうやって製品やサービスを作っていくか、その手法をまとめた本が出版されたタイミングで、その著者の方に説明していただくのが主旨です。
開会挨拶
DevLove船長:papadaさんから開会挨拶。いつものように「DevLoveイベントの参加は初めてですか?」という会場への質問からDevLoveというコミュニティの説明。ちなみにDevLoveは今回でイベント開催が93回目になるそうで、会場からは拍手がありました。年内に100回達成したいそうですが、記念イベントはどんなのになるんでしょうね?
Experience Vison のはじめかた
さっそく山崎和彦先生にバトンタッチ。ご自身の自己紹介から始まり、著書の紹介やその内容をレクチャーしていただきました。
以下、その際のメモ。
- 自己紹介
EXPERIENCE VISION
- 5年間かけて書いた
- ワークショップ
- 合宿
- 実証しながら作った
- いろんな企業で試しで使ってもらった
- 良い手法があったらどんどん取り入れてきた
- 自分たちのオリジナルにこだわらない
- ペルソナを作った人はペルソナですべてを解決する本を作ろうとする、ストーリーテリングやシナリオ手法でも同じ
- →そんなの嘘!
- いろんな手法を使いこなす
- 遠くを見てユーザーにとって本質的に大事なのはなにか
- 日本人は優秀
- どんどん品質の良いものを作る
- →それだけで競争していたら日本は今後難しいのではないか
- 欧米では「ゲームチェンジ」同じ土俵では戦わない
- 自分で勝手にルールを作っちゃう
- →いつも目の前の問題を片付けるんじゃなく、長い目で見てユーザーニーズを解決していく
- 新しいものを作る
- 本質的なものを捉えて提案していく
- 使いにくいところを直していく
- これまでにない新しいサービスを、他社にない、そういう視点でユーザ調査して、ユーザの価値に基づいたシナリオを考えていく
1、人間中心設計に基づくビジョン提案型デザイン
- ユーザニーズに基づいて
- ユーザーの価値を考えて提案していく
- 例) 目覚まし時計
- 今まで見てきた目覚まし時計の固定概念の中でデザインしてしまう
- →気持ちよく朝起きれるなにかを提案していこう
- 可愛い女の子の声で「お・き・て💜」
- 性能
- 見た目
- →そういうのとは異なるデザインになる
2、ユーザーとビジネスの両方を考えてデザインする
- ユーザー視点とビジネス視点は二律背反
- ←じゃなくて
- ビジネス自体も並行して考えていく
- この企業にとってビジネスとしてどういう風に取り組んで行くべきか
- ユーザーとビジネスの両方をにらみながら
3、オリジナルにこだわらない 世の中の良いとこどりをしていこう
- いきなり書くのは大変だからテンプレートを用意した
- ←無料DLできるよ
- 「プロジェクトの目標」
- 目標設定が曖昧だったり、あそこの会社に勝つこととかレベルの低い話
- ↓「ビジネスの提供方針」
- ↓「ペルソナ」
- ↓「バリューシナリオ」
- →だんだん具体化していく
- この手法だと全体像が大きくなりすぎる
- 最初から最後までやると時間がかかる
- 全体像のつかめる
- BMGを参考に
- ←最後の1ヶ月に使った まだワークショップを一回しかやってない
- 具体例
- 教育事例
- ワークショップ
- ここまでが前置き もうちょっと具体的に
- 人間中心設計と提案型デザインアプローチ
- 新しいサービスを構築するのに役立つ
- 背景:サービス産業への推移
- ユーザーの本質的に望む新たな体験
- 企業や組織が活用する
- 日本はユーザビリティという視点が強い
- HCDという考え方を新しい使い方をしている例も多い
- HCDの使い方に2種類ある
- 問題解決型に使う
- 顕在ニーズ
- 提案型
- 潜在ニーズ
- エクスペリエンスビジョン は 提案型
- ex)ダイソンの扇風機
- 市場分析を中心に
- 思いつき
- 人間中心
- →この本では3でやっていく
- →使い方を変える
- ユーザの本質的要求から
- 上位の価値をやサービスのレベルから発想
- ex)Google
- 検索
- →まずサービスを考える
- ユーザの本質的要求を要求仕様からシステム仕様まで一貫して表現
- 異文化の専門家同士のコラボレーションの促進
- 上位のレベルから常にユーザーに聞く
- ex)アメリカ
- 南米や中国など異文化の人がいないと新しいものはできないと考えている
- →人間中心設計に基づく
- みんなが言い出すこと
- まず上司に聞かせたい
- →上の人たちはなかなか変わらない ダメかな 時間の無駄
- ビジョン提案型のフレームワーク
- これが頭に入ればビジョン提案型はわかったも同然
- 構造化シナリオ手法
- シナリオ=ものと人間の関係を記述することができる
- 仕様書=もののことしか書いてない
- どういう風に使うかが書いてない
- シナリオだとものと使い方の両方が書いてある
- 全体像がつかめる
- 仕様書は専門ごとに作られる
- それぞれに長けた人しかわからない
- シナリオ=共通言語
- 知らない分野でも理解できる→コラボレーションできる
- 「Scenario Based Design」という本がある
- シナリオを3段階に書き分ける
- 1.インタラクション
- ex)目覚まし時計をどう操作するのか
- 2.アクティビティ
- ex)気持ちよく目を覚ます
- →目覚まし時計でなくてもいい
- 音が鳴る
- 照明
- エアコン
- 3.価値
- 目標
- →ユーザ視点
- だれが、いつ、どこで、どのような体験を
- →ビジネス視点
- 企業のブランドや事業としての位置づけ
- 市場での位置づけ
- 潜在ニーズと顕在ニーズを捉える手法 ニーズの発掘
- フォトダイアリーとフォトエッセイ
- ユーザーの本質的要求
- ユーザーの事象
- →インタビューでも観察でも
- →ユーザーがどういう行動をしたいのか
- →ユーザーがどういうことを望んでいるのか
- ユーザ設定
- ステークホルダーを明確化
- 具体的な対象ユーザーの明確化
- →ペルソナ、キャスト
- ビジネス設定
- BMG
- ビジネス環境を捉えやすい
- ビジネスという視点で
- 構造化シナリオ
- 3つの階層に分けて考える
- バリュー : 価値 : Why
- アクティビティ : 活動 : What
- インタラクション : 操作 : How
- 各シナリオの特徴
- 目先のシナリオだけならインタラクションだけでもいい
- 今までだったらそれでもいい
- 3つとも書かなくちゃいけないわけじゃない
- ビジネスのことまで考えるならバリューシナリオから考える
- その代わり手間はかかる
- バリューシナリオ
- ユーザーにとっての価値
- ユーザーにとっての本質的要求
- ビジネスにとっての価値
- ビジネス提供者による提供方針
- どういう方針でやるか
- ユーザー情報とビジネス情報
- アクティビティシナリオ
- ペルソナ
- ユーザー情報
- シーン情報
- なにを使うのか、はここでは書いていない
- ユーザの行動しか書いていない
- インタラクションシナリオ
- 製品
- システム
- サービスの機能性
- 具体的なツールのイメージ
- まとめ
- 構造化シナリオの特徴
- →3段階に分ける
- 全体
- シナリオ評価
- シナリオにスケッチをくわえて評価
- シナリオ段階で価値があるかどうかをつかめる
- 全部作ってからだと時間もお金もかかる
- 対象のシナリオで評価する基準が異なる
- 図式化などのビジュアルな表現やプロトタイプで表す
- よりわかりやすく
- プロトタイピング
- ビジネスモデル
- ビジネス側面の視覚化
- インフォメーショングラフィックスによる表現 図式化
- 具体的な数値をいれていく
- 評価
- ユーザー側面から
- 魅力性
- 新規制
- →満足度
- 有効性
- 使えるかどうか 役に立つか便利か
- 効率性
- わかりやすく早くできるか
- ビジネス側面から
- 戦略性
- ビジョンに合っているか
- 経営戦略に即しているか
- 事業性
- 採算がとれるか
- 市場性
- 市場規模があるか
- 実現可能性
- 本当に出来そうかどうか
- 社会性
- コンプライアンスに沿っているか
- →プロジェクトによっても段階によっても違う
- 効率性とかはモノがないと評価できない
- 今までだといつでも同じように評価してた
- 具体的なモノが出来てから使いやすいかどうかを評価する
- それぞれの段階によって評価の軸を変えていく
- 段階的にビジネスの視点も評価していく
- 企画提案書
- 総合的なビジネス企画
- ユーザ視点の提案書
- ユーザーにどんな価値を提供するか
休憩
講義が一区切りついたところで10分ほどの休憩。オレはこの時間を利用して前回(DevLoveのリーンスタートアップ勉強会)のレポートを仕上げることに。周囲からの「ブログ書けぇ!」圧力に屈しました*1。ぐぬぬ…。
ディスカッション
テーブルごとに分かれてのディスカッション。我々はコンサルティングをされている方と、「7人のアジャイルサムライでもご一緒させていただいてる@garden_treeさんの3名。お二人ともサービスや製品を構築する仕事に携わっているそうで、お一方はビジネス・マネタイズの視点から、もうお一方はユーザの問題解決という視点からトライされている傾向にあるそうです。Experience Visionが推進している「提案型」とは、どちらも異なるのでしょうが、やはり実際にそのフェーズに身を置いているだけに、色々と考えることが多かったようです。
また、「Experience Vision」の手法について、「固い」という意見もありました。たしかにあれだけのFWに当てはめる、というのは、従来のアイディア出し作業のイメージと比較して、カッチリし過ぎている感覚はあるかもしれません。同様に、「シナリオを作ること自体のコストが重い」の意見も。山崎先生は講義中で、「全部やらなくちゃいけないわけじゃない」と仰られていましたので、状況に応じて行うフェーズや作るアウトプットを調整していけばいいんでしょうけど、いきなりやると、そのさじ加減がわからないかも知れませんね。
その他、「細分化されているもの同士がどこでリンクしていくかがイメージしにくい」という意見も。これに対しては「一番最初に立てる『目標』を軸にして統一していくのでは?」という案も出されました。また、「いきなり仕事でやるのは難しいので、もっと身近な簡単なものに置き換えてみたら?」とも。例えば子供の野球大会をデザインする、なんてので試していくのがいいのではないか、仕事でいきなり試したら火傷しそうw、という意見もありました。
Q&A
ディスカッションに続いて山崎先生に対するQ&A。みんな未知の知識領域で上手く質問が作れなかったみたいで、2件に留まりました。この本が売れて、体験者が増えてくれば、また質問も増えるんでしょうねぇ。
ステークホルダーに信用されない。課題を決める段階ではユーザー調査をしているが、実際に調査するのは少なめ、人数が信用してもらえないのか どうやって乗り越えるべきか?
- mixi サカイさん
- バリューシナリオに共感してもらえるか
- シナリオ共感度
- 検証(インタビュー)人数をこなせば共感してもらいやすい
- 先にシナリオ作って見る→評価を行って絞っていく
- 評価にはお金がかかんない
- 価値があるんじゃないかと仮説を立てて、バリューシナリオをつくる
- 成功するアイディアは砂金取り
- そんなに取れるわけがない
- いかに早く穴をほっていくか
- いままで日本の企業は深く掘って掘ってやっとたどりつく
- 広く早く手軽にユーザーにたどりつく
- いっぱい穴を掘る
- 発想の転換
今日の話はシステム開発だとウォーターフォールに近いという印象を持った。アジャイルやリーンスタートアップとの比較してどう思う?
- ナビタイム オノダさん
- アジャイルとバリューシナリオは近い
- アジャイル=クイクイ作ってクイクイ評価する
- ウォーターフォールに見えるかもしれないが、シナリオ単位でクイクイ回したっていい
- リーンスタートアップとの近さはビジネス視点・ビジネス価値を早くに問うところ
- 早い段階でビジネスの可能性を見ていこう という姿勢は一緒
- いかにクイックにものを作るか
- スケッチング ザ エクスペリエンス
- 検証的な視覚化=プロトタイプ
- 探索的に探す=スケッチ
- 新しいアイディア、砂金取り、できるだけ早く 探索的に =スケッチング
- ex)音声認識
- プロトタイピング→プログラミングしちゃう
- スケッチング→しゃべって別の人がタイピングする
- すぐ試せる
- ユーザーが実際に使ったらどんな感じになるか、をできるだけ早く確認する
- クイック&ダーティでもいいから
- ビジネスの側面から
- ↑本(Experience Vison)には書いてない
- 確かめる方法
- →イベント
- 今日だけ売ってみる
- ビジネス的な可能性を見ていく
- 今の心配事:日本人の潔癖さや法律が阻害するのではないか
クロージング
papandaさんから、山崎先生へのお礼と、「本を買うことが感謝の気持ちですよ〜♪」との一声が。
続いて次回開催するDevLoveイベントの予告。SIエンジニアの自分戦略に関する勉強会が開催されるそうです。…その日は別の予定が。グギギ。
最後に、会場をご提供頂いたKDDIコミュニケーションズさんから一言。「手元にあるチラシのVPS使って下さ〜い!」
総評
個人的な感想としては、ディスカッションの時にも話したんですけど、ユーザに対する価値…例えば、iPhoneが単に新しい電話を提供したのではなく、ライフスタイルそのものを変化させたような、提供するトータルの価値を、Experience Visionの手法を使えばデザインできちゃう、もしくはデザインにトライできる、というのが驚きでした。そういうレベルの価値の提供って、一部の天才…ジョブズのような人物のひらめきによってのみ生まれると思っていました。FW化するなんて思いもしなかったです。Experience Visionが教えてくれるFWを使いこなせるようになれば、ある程度誰でもハイレベルな価値提供ができる、というのは凄いことだと思います。
ただ、山崎先生も再三繰り返していたように、ビジネスニーズもユーザーニーズも満たすアイディアは、「砂金取り」のレベルの困難さであり、そんなにホイホイ見つからないからこそ、スピードを意識して下手な鉄砲数打ちゃ当たる的な心構えが必要なんでしょう。
その辺を鑑みても、Experience Visionの内容は、非常にアジャイル的だなぁ、という印象を持ちました。リーンスタートアップの要素もたぶんに含んでおり、…というか、リンスタでいう「仮説」の部分、MVPより更に前を、このFWで作っていくことができるんじゃないかという印象を受けました。
道具のひとつとしてビジネスモデルキャンパスを使っていたことも含めて、これまで色んな勉強会で教わってきたことは、全部地続きで、全部つながって「新しい価値提供」の為の道具として使えるのか、目から鱗が落ちた思いです。今まで「なんとなく役に立ちそう」「面白そう」と思って取り組んできたものが、ちゃんと一本の線につながったような気がして、ちょっと嬉しかったです。
*1:ダラダラしているオレが悪い、という意見も。