ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

これを読んで他業種の人がどう思うか聞いてみたい「なれる!SE」


 久々に書評。知り合いから借りてたのすっかり忘れてて、昨日一気に3巻まで読んだんですが、読み物としては非常に面白かったです。ラノベだから読み口も軽いし2時間くらいで読み終われるのが気楽に楽しめて良いですね。


 あらすじを簡単に説明すると、就職戦争オチコボレの主人公が入社したのは超絶ブラック会社で、OJTに着いたツンデレ(?)ロリッ娘上司にジャイアントスイングばりに振り回されながらインフラエンジニアとしてちょっとずつ成長しつつハーレム的に女の子にモテていくという小説です。


 いきなり横道逸れますが、ラノベにはヒットする傾向がいくつかあって

  • 主人公の男が地味、もしくはさえない、もしくは普通、またはその全てを満たす
  • ツンデレ、ロリッ娘、ヤンデレ、巨乳、おっとり、などなど複数パターンの容姿美麗な女の子が登場する
  • 登場する女性の好意がすべて主人公に向く
  • 一見無茶苦茶な難題を根性と気合で意外性の有る解決法を見つけ見事に収拾を付ける

 これらの条件を全て満たしかつ「他の作品には無い斬新な切り口」を盛り込める作品が市場ウケするようです。要するに非モテオタク男子に受けそうで安心のテンプレ踏んでて何となく目新しければ良い訳です。言うは易しですが、書くのは大変でしょうなぁ。ちなみに本作もその点はしっかり踏襲しており、まぁライトノベルにはありがちな展開をSIerという特殊な舞台でやってのける、なんていう離れ業で斬新さを演出しています。現在までに5巻まで発売されているところを見ても人気作品である事が伺えます。・・・って、最新作はAmazonで品切れ起こしてますね、どんだけだ!?


 この作家の方、元SEだったようで、時折出てくる技術用語も前職の知識と経験に裏打ちされた確かなものであることが伺えます。・・・そしてこれは本当に気の毒なんですが、在職中はそれはそれは酷いデスマーチに何度も放り込まれたみたいですね。作品やあとがきからそのことが伝わってきます。まぁ嫌になっても仕方ないわな。


 オレ個人としてはここまで小規模の会社で仕事をしたことがないし、そもそもインフラエンジニアが主役とヒロインなので、どうもフロントエンドを主戦場としているオレには彼らの仕事がいまいち実感が沸かんところがあります。用語もけっこう知らんの出てくるし。(基本情報処理の勉強し直せと言われそうだw)


 で、冒頭の3巻はRPFから提案書を作って案件取ってくる話なんですけど、この辺はやっとオレでも分かる話なんで興味深く読ませてもらいました。いやぁ、やり方無茶苦茶ですな。そもそもこんな零細な会社規模のSIerに機器の購入まで含めたコンペに乗っけるとかありえんだろw。普通財務諸表見ただけでハジくと思うんだがw。もしあれをオレが担当してたらどうするかなぁ、と考えてみたんですが、そもそも畑の違う分野だし、勉強だと思って必死にトライはするでしょうけど、最初から受注自体は諦める気がしますね。



 で、ちょっと気になるのは「IT業界以外の人たちがこの本を読んでどう思うか」です。それは単純に「SEが昼も夜も無く働く人種で、就いたら最後まともな死に方は出来ない」と思っているのか、についてもそうですが、そもそも「このストーリーを読んで内容がわかるのか?」という事が気になるんです。割と頻繁に技術用語が出てきますが、新人SE・PGだとその耳慣れない言葉でKOされることも少なくありませんし、それが普段ITの内側に慣れ親しんでない普通の人なら尚更だと思うんです。その上でもこの話を読んで楽しめているのか?は、やはり興味の対象にはなります。


 ちょっと話は逸れて、うちの妹が昔、オレが買っていた「じゃじゃ馬グルーミンUP!」を読む時、「馬の話は正直分からないし読んでも飛ばしてる」と言っていました。じゃあ何が楽しくて読んでいるのかと聞くと「それがなくても話は十分追える、恋愛話だけですごく楽しい」と言うんですな。
 なるほど、それがうちの妹の特殊能力でなければ、この「なれる!SE」にも当てはめて、IT業界の事情にさほど首を突っ込まなくても話の筋は理解出来る、ということになりそうです。


 ・・・でもそれって、システムエンジニアの面白さとかは伝わんないよなぁ。やっぱりブラックだ社畜だと蔑まれる不人気業種のままこの業界は学生からの地位が確定されてしまうんですかねぇ。まぁ確かにSIerに未来は無いのかもしれないけど、仕事自体は面白いと思うしやたら滅多デスマーチに突入する訳でもないので(オレに限って言えば10年間働いてきて2ヶ月だけです。それでも十分嫌だけどw)、もっと好意的に受け止めて貰えると嬉しいんですけど。


 ここはあれか、オレがラノベ版「アジャイルサムライ」を書くべきか・・・ッ!!