ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

面白い人を採用するということ


 上の記事を読んでいて思い出したのは、前職…ライフガードバイトの頃の事です。


 当時オレはバイトだったけれど、色んな事情があって都内の市民体育館の温水プールの副責任者でした。当時のオレは22-23歳、若造もいいところです。その頃の上司は40を少し回った年齢の男性で、その管理会社内でプールサイドに立つ社員としては最高齢でした。人格者で誰からも好かれる上司でしたが、30代後半までフリーターでバックパッカーみたいなこと繰り返して生きてた人だったのでちょいちょいかっ飛んだ、ちょいワル風親父でした。今思い返せば当時のオレは彼にずいぶんと迷惑をかけたはずです。今はもう50近いはずだけど、元気かしら?


 屋内プールは夏になるといくつか立ち上がる屋外プール案件に責任者候補を派遣します。その上屋内プール自体も客数は普段より多くなるので、どうしても人手が足らなくなる。なので高校生・大学生が夏休みに入る直前にアルバイトを大量募集をかけます。7月はほぼ毎日採用面接が入るので、オレと上司で分担しました。それがオレにとっての初めての「採用側」としての採用面接でした。


 まぁバイトの面接なんでそんなにキッチリしているわけじゃないんですけど、ちゃんと時間を守って出勤してくれるか、とか、こちらの話をちゃんと聞いてくれるか、とかは見極めなくちゃ行けません。あと、プールと言う職場はけっこう肉体的にも精神的にも(いつ事故が起こるか分からないから)ハードなので、その辺も説明します(というか脅しますw)。練習も学生の部活並にしっかりやりますし、掃除もやらなくちゃいけない。その辺の説明を一通り行って尚ビビらない、怖気付かない人間が採用対象になります。あ、あと泳げること。時々泳げないのに面接受けに来る人がいましたが、こちらも空前絶後の人手不足なので仕事をちゃんとやってくれそうなら採用する場合も多いです。ぶっちゃけ死ぬほど泳ぐからカナヅチでも3ヶ月程度で人並み以上に泳げるようになるし。


 面接にかけられるのは1人30分程度、こちらが業務内容や心構えを伝えるのに15分くらい、こちらから質問して相手の人と也を探るのに15分くらい。大した質問ができるわけじゃないけど、上司から簡単にレクチャーを受けた上で10人近い採用面接をオレが担当し、結果として夏休みが始まるまでにトータルで10人程度、オレと上司で半々くらいずつ採用しました。


 そうすると、オレと上司で採用した面々に明確な差異が生じていたんです。簡単に言うと、上司が採用した人間の方が個性的だったんですね。喋り方が馬鹿っぽくて実際あんまモノを考えてなさそうだけどとにかく元気が良くて明るい、泳げないし挙動不審だけど人一倍熱心に仕事に取り組む、などなど。

 翻ってオレが採用した方は、みんな真面目そうで実直で、仕事の覚えも早いけど、でも大人しくて目立ったアピールしないタイプ。今だと「草食系」とか言われる類いになると思います。


 オレの経験上、大体において大化けするのは上司が採用したような「問題もあるけど元気があって個性が立ってる」奴なんですよね。上司はそれを意図してたかどうか知らないけど、結果を見ると割とそういう子が採れている。もしかしたら既存メンバーを成長させる為に意図的にそういう人間を採用したのかもしれない。当時オレはそこまで気が回らなかったので、その辺はあくまで可能性の話でしかないのですが。

 一方オレの採用した人は、とても真面目だったし本当にきちんと働いてくれたけど、夏が終わるとさっぱりと辞めて行ってしまう子が多かったように記憶しています。なかなかプールという職場やライフガードという仕事に魅力を感じて残ってくれる人はいなかったですね。


 上司がそういう多少クセのある人でも躊躇なく採用できたのは「自信」が裏打ちとしてあったからだと思います。自身に対する自信、組織に対する自信。多少のクセは包括出来るし、それを補って更に良いところを伸ばしてあげられる、その自信があったからでしょう。


 対してオレはまだ自分の事で精一杯だったし、自身の経験から「ある程度手がかからず自立して仕事出来そうな人」にしかフォーカス出来なかった。「自立」「即戦力」というと聞こえは良いけど、結局のところ「従順でコチラの言いなりになり、かつ精度良くその指示をこなせる」人かどうか見極めただけだったのかも。だとしたら当時オレが採用した彼らに、そういう目で見てしまった事を謝らなくちゃいけません。




 まぁそんなこんなで「個性的な人を採用する」ということに、オレは多少トラウマみたいなものを持っています。どうせ通り一辺倒のさしあたりのないところしか採れないんじゃないか、と。採用面接などのシチュエーションの場合、どうしても仕事とかをキッチリやってくれそう、というところにばかりフォーカスしてしまって、結果として人を最大公約数でしか見れないんだと思います。






 例えば、今の会社の中堅どころ以上の社員は、もう退社してしまった元取締役が殆ど採用面接を行っていました。オレの所属会社はこの不況下にも関わらず「IT業界素人OK」「プログラミング未経験者歓迎」という売り文句で採用募集するので物凄い数が集まるんですが、その数十倍の倍率の中から元取締役がチョイスしたのはかなり個性的な人間が多いように見受けられます。…ああ、別にこれは褒めていません、個性的な反面色々問題もやらかすので(さっさと辞めちゃうことも多いし)、元取締役自体もけっこう揉め事を起こす人でしたしw。


 今同じプロジェクトで一緒に仕事をしている後輩は、やはり元取締役が採用した1人で、つい2年前までは直属の部下でした。やっぱり彼も他の社員に勝るとも劣らない個性的なヤツです。技術力に関してはうちの会社でも5本の指に入る実力者ですが、当時はコミュニケーションに難のあるところがありました。最初にオレのグループに配属された時には、オレがグループの活動方針や営業方針を説明しているのに目線も合わせてくれなかった。目線がずーっと明後日の方角を泳ぎ続けていたのを覚えています。たぶん、ですけど、他人の目を見て話すことに抵抗があったんでしょうね。ちなみに今の彼は昔のあの態度は何処へやら、ガシガシなんでもアグレッシブに意見を言ってきてくれて、むしろこちらがやられっぱなしですw。


 話を少し戻して、例えば彼のグループ配属時の対面が採用面接だったら、もし入社時の採用面接担当者がオレだったら、オレは果たして彼を採用出来ていただろうか?それを考えると空恐ろしくなります。もしかしたらそのコミュニケーション能力だけ見てこんな優秀な人材を逃していたかもしれない。だとしたらとんでもない損失です。





 前もちょっと書きましたけど、オレの周りには変なヤツが寄ってくる傾向があります。でも、「自分で個性的な人間を選別出来るか」「意図的に個性的なチームを作れるか」に関しては、かなり怪しいと思っています。どこにでもあるつまらない組織になってしまう、そんな恐怖感があります。


 冒頭の記事ですと、採用を担当される方は個性的な新入社員を採用することに腐心していらっしゃる様子が良く分かります。たぶんオレの見てきた「大化けする」ことに期待しているんでしょうし、そうやってポリバレントが起こることを願っているんだと思います。この記事を読んで、個性的な人を採るのが難しいのは、別にオレだけじゃなくて本当はとても難しいことなんじゃないか、たまたまオレがケーススタディとしてみてきた2人が飛び抜けてそれが上手かっただけなんじゃないか、そんな風に思えました。






 余談なんですが、春先に協力会社さんから一緒にプロジェクトに参画してくれるパートナーさんを探して面接する機会が続いてありました。最終的に2人のうちから1人を選ばなくちゃ行けなくなったのですが、1人は「ちょっと技術的に不安はありそうだけど経歴が面白くて若くて勢いの有る男性」、もう1人は「スキルもプロジェクトにマッチしてて経験も豊富、落ち着いてるけど逆に元気なくも見える男性」。その時オレはやはりライフガード時代の採用経験が頭をよぎり、逆振りで前者に参画をお願いしようとしました。

 が、一緒に面接に立ち会ってくれた営業さんから強い説得を受け、最終的に後者の方にお願いしたのですが、これが結果として大成功で、プロジェクトは彼無しでは絶対に上手く行かなかったと断言出来るくらい大活躍して頂きました。残念ながら諸事情で短期でリリースせざるを得なかったんですが、もしまた機会があればぜひ一緒にお仕事させて頂きたいですし、別の人にも自信を持って勧められる方でした。

 ・・・う〜ん、やっぱり今のオレは人を見極めるにはまだまだ経験とか色々足らないようです。