ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

松田直樹という選手

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 オレがJリーグを見始めたのは2003年からでした。浦和レッズが鹿島を下しナビスコ杯で優勝した年で、日韓W杯の翌年。だから日韓W杯にはほとんど興味を持ちませんでした。当時新横浜で働いてたくせに熱狂を冷めた目で小馬鹿にし、渋谷で暴れる若者に嫌悪しました。だからこの時、日本のフラット3の一角をつとめた松田直樹の存在を、オレはまだ知りません。


 松田直樹を知ったのは浦和サポーターになってから。以後オレは応援するチームをFC東京に鞍替えしましたが、レッズサポの頃から一貫して、松田直樹という選手は「」でした。嫌なむかつくヤロウと言ってもいい。
 無駄にオーバーリアクションで目立ちやがってピッチの何処にいてもオレの視界に入り込んできて、こちらの攻撃に狂犬のように噛み付いてきてせっかくのチャンスを潰し、かと思えばDFのくせにいつのまにかバイタルエリアに現れてはゴールを叩き込んでこちらを絶望の淵に突き落とす。人一倍喜びをあらわにしてマリノスサポーターを沸かせてこちらのホームだろうが関係無く勝手に盛り上げる。ボーズだったりロンゲだったり人相の悪いのに人気があって、ジャッジに納得いかなくて暴れてる時には「またやってるよ」とあざけりもしました。普段はどんな選手にもしないくせに、スタメン発表で松田直樹の名前がコールされると全力でブーイングもしました。

 オレにとって松田直樹と言う選手はそういうヤツ。


 でも昨年、松田直樹横浜Fマリノスから戦力外通告を受けた時、そしてその後の移籍先に松本山雅を選んだことに少なからず動揺しました。スタジアムに来て、松田直樹がプレーしてるところを一度でも見た人なら必ず分かること、「松田直樹は本当にサッカーが好きだ」ということ、「松田直樹という男は誰よりも熱い魂を持っている」ということ、オレは本当は知ってたんです。その松田直樹が松本に来てくれる。でも素直に喜べなかった。だって松田直樹は昨日まで最大の敵のひとりで、サイコーに嫌なヤツだったはずだから。その松田直樹が記者会見で「松本を全国区に押し上げたい」と言う。変な夢でも見てるんじゃないかと思いました。


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 震災のチャリティーマッチでアルウィンに行く頃には、とっくに松田直樹はオレの中でヒーローになってました。サッカー不毛の地の長野県からJ1チームが生まれるかもしれない、その起爆剤となってくれそうな男。あの熱い男ならきっとやってくれる。試合前に選手が募金に立っている時、ほんの一瞬だったけど近くで松田直樹を見れて、心臓が爆発しそうなくらい興奮したのを覚えています。


4/3(日)、vs松本山雅、松本平広域公園総合球技場アルウィン【東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ】 - ミッションたぶんPossible


 今回の救急搬送から突然の訃報まで、松田直樹はオレらサッカーファンの間で話題の中心でした。でも、松田直樹が嫌いだと言う人はただのひとりもいなかった。自分のチームがヒドイ目に遭わされたヤツ、いっぱいいるはずなのに、みんな松田直樹を本気で心配してました。それは、松田直樹が本気でサッカーが好きで、いつでも本気で真剣で、暑苦しいくらい熱くて、だから馬鹿に見えて滑稽に見えて、そんな松田直樹がみんな好きだったんだと思います。



 本日13:06、松田直樹選手は搬送先の病院で息を引き取ったそうです。彼が松本山雅を、いや、長野県をJリーグへ連れていってくれると思っていただけに、本当に本当に残念です。山雅が最後のチームになってしまったのはたまたまだけど、それでも松本山雅というチームを選んでくれたことに本当に感謝したい。夢半ばで倒れて本当に悔しいはずだけど、「ピッチの上で死にたい」と例えられるサッカー選手の生き様を全う出来たことを、せめて喜んでいてくれたらと願って止みません。


 最後に。

 普通なら「どうぞ安らかに」「天国でゆっくり休んで」と言うべきなのかもしれません。でもそんなの松田直樹には似合わない。どうかあっちで一日でも早くパス交換できる相手見つけて、さっさと11人仲間作って、対戦相手も合わせて22人かき集めて、思い切りボール蹴って大暴れして下さい。多少やんちゃし過ぎても、そっちで蹴ってるボールの音なんか聞こえないくらい、遺された貴方の仲間はこっちで大暴れしてくれるはずだから。


 松田直樹選手のご冥福をお祈り申し上げます。本当に有難う。