ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

夢と希望と欲望の3日目

はじめに

 日本には毎年お盆と年の暮れに2〜3日ほどの日本全国の痛いお友達が総結集する「コミックマーケット」と呼ばれるイベントがあります。オレの様に日本の美しい風習と四季を尊ぶ人間であればこの期間中、夏は祖先の墓前に手を合わせ、冬は家族と炬燵を囲み歌番組を横目に一年をふりかえるのが通例というもの。ところがそんな事はお構い無しに、萌えとエロの為にW杯決勝戦の何倍もの人間、しかも思考のゆが・・・、もとい、個性的な趣味を持つ人間ばかり集まるのですから、世の中随分と様変わりしたものです。


 しかもこの通称:コミケ、夏は3日目となる日曜日にエロ同人誌が多数出展される傾向にある為、例年3日目が最も混む、かつ男ばっかりという大惨事になるんだそうです。始発で駆け付けるのは当たり前、徹夜の人間も数千単位で発生するというから人の欲とは恐ろしいものです。炎天下の中、普段は屋内に閉じ籠もった輩が大挙するわけですから、体臭は汗と高温多湿の会場で発酵し、酸素も薄く、温度は大量の人体(しかも欲望ガソリン満タン)によって更に高められる事によって、そこはさながら灼熱地獄と化すという噂。


 こんなイベント、まっとうな人間であれば避けて通るのが賢明というのは至極道理。ところがうちの某ぷろでゅーさーさんが「是非行きたい。だからお前も付いて来い!!」と仰るので、特にサッカー観戦以外の余暇の過ごし方を知らない矮小な私めは致し方無く御供することになった次第でございます。


 しかし裏を返せば、このコミケ3日目が日本で最大規模の動員数を誇る、すなわち「日本で最も盛り上がるイベント」になっているのは紛れも無い事実。成り行き参加とは言え、そんなクライマックスをこのオレが存分に堪能しないなんて事、出来るはずが無い! そんなこんなで欲しいものがあるでも無いのに、一週間前の日曜は始発(朝4:30起き!)で東京都はりんかい線国際展示場駅最寄りの東京ビッグサイトまで足を運んできた次第です。

今回のルール


 今回はこのコミケと対峙するにあたり、いくつかの自分ルールを設けました。

  1. 健康リスクは全力で避ける
  2. 会場自体の下調べは一切しない
  3. THE IDOLM@STER(アイマス)」と「とらドラ」の“エロ”同人誌を買ってくる

 1 は社会人として当然ですね。コミケは過酷を極めると専らの噂だったので、ここは徹底しました。ちなみにこちらのサイトを参考にしました。
 2 は、今回のオレの目的がイベント自体を知る事だったので、事前に調べて面白味が下がるのは避けたかったため。
 3 は、オレ自身欲しいものは一つも無いのですが、そうは言ってもこのイベントは「同人誌即売会」ですから、なにも買わないのは「イベントを知る」という本来の主旨に反します。幸いにしてオレは「萌え」は理解できませんが「エロ」は人並み以上に理解していると自負しています。3次元だろうが2次元だろうが相当の高みに達する事がこのオレにはできるはず。とは言え、のべつ幕無しに探しているとキリが無いので、我らがぷろでゅーさーさんが愛してやまないアイマスと、同じく会社の後輩がハマっている「とらドラ」に絞って至高のエロ本を探してみることにしました。

いざ出陣


 会場入りしたのは朝6:30を少し回ったくらい。事前に地元の駅で2lの麦茶と500mlの冷凍スポーツドリンク、塩分補給飴を購入して準備は万端です。電車では地元駅からそれっぽい人が多いなとは思っていましたが、新宿駅から明らかに同会場を目指す集団がどやどやと乗ってくると始発にも関わらず通勤ラッシュさながらの混雑に。りんかい線に乗り換えると既に車内は獣臭が充満して、ううっ…。

会場到着、そして待ち惚け


 6:30には会場の国際展示場駅に到着。欲望に目をギラつかせた集団に何となくついていくといつの間に列に並んでおりいつの間にか係員に誘導されていつの間にか会場からかなり遠い位置で待機列を形成されいつの間にか2時間立ちっぱなしの刑に処されました。何をいってるかわからねェと思うが(ry。とにかく人が待つスペースが足りないらしくてキュウキュウに列を詰めて待たされるんですよね、座ることもできないくらい。あれだ、アウシュビッツガス室大量殺戮の話を小学校の先生から初めて聞いた時のイメージが頭によぎりましたわ。で、他の諸兄がクソ真面目にそのまま待ってるんですよねェ。オレのいた所は日陰でさほど辛く無いとは言え、過酷な環境には違いないのに。…えっオレ?列が固定したら荷物で場所取りして2秒で列の外でノンビリしてましたよ。あんな中で2時間も待つとか、アホくさい。

地獄(?)の進軍


 列が動き出したのは9時をちょっと回った頃。そこからチビっと進んでは15分ストップをひたすら繰り返し、じわりじわりと会場入口に近付きます。移動につれ炎天下に晒されるので、その暑さが結構堪えるんですが、それ以上にツラいのが周囲の人間。彼らは一般人より体力が無いらしくて、数十秒おきに「暑い」「死ぬ」とのたまう訳ですよ。やっかましいわい、最初から分かってた事なんだから黙って並んでろ。他にもワンセグドラゴンボールとか見始めちゃう奴(しかも音声をスピーカー出力で)、会話がいたたまれない感じの友人同士(女性ヲタって、互いを「お前」って呼ぶんですね、うちの妹だけかと思ってた)、などなど随分と目新しい体験をさせて頂きまして。…危うくメインディッシュ前にお腹いっぱいになるところでした。ちなみに開場となった10時丁度に大きな拍手が巻き起こった訳ですが、その時オレはまだ入口から遥か遠くにいました…。

入場



 上の写真は東京ビッグサイトの入口付近。中々凄いでしょw?そんなこんなで10:30くらいに会場内に入る事が出来ました。会場は大きく分けて「東館」「西館」「企業ブース」の3つに分かれていましたが、オレは何となく空いてる方に歩いていたらいつの間にか企業ブースに辿り着いていました…って、こんなんばっかりだなw。

企業ブース


 企業ブースはその言葉通り、ゲームメーカーや出版社が作品のPRやグッズ販売を行う専用のエリアです。資本の力をまざまざと見せつけるように一般参加者よりはるかに広い面積が用意され、ブースの装飾もそれぞれに趣向を凝らした華やかなものばかり。本来はかなり混雑するらしいんですが、開場直後のこの時点ではスカスカ、何を見るにも買うにも殆ど並ぶ必要は無い状態、うろつくのも非常に楽チンです。とは言え、オレの入場時に既にグッズが完売しているブースもチラホラ見かけました。たった30分で!?とその時は驚きましたが、後からネットで見たら前日の段階で売り切れてたらしいです。企業側の気持ちを考えるとまぁ分からんでもないですが、興行的にどうなんだ?と思わなくもない次第。まぁ買いたいものは無かったのでとりあえず各ブースを一通り覗いて、チラシだろうと何だろうと貰えるものは全部貰って(団扇は最終的に7枚くらいになりましたw)廻りました。11時位には早々に飽きたので移動。

一般ブース


 事前に連絡したらぷろでゅーさーさんが「東館から入る」と言っていたので、次は東館へ。東館と西館は一般参加者が出展する一般ブースです。「壁サークル」と呼ばれる人気サークル以外は、机一脚分(畳一畳分くらい)の売り場スペースを与えられ、その限られた範囲で自分達の恥ずかしい本を陳列する訳です。広い会場内にランダムにサークルが配置されている訳ではなく、ジャンル毎に大体まとまってブースを割り当てられており、購入者が探し易いようになっています。例えば、とあるエリアでは「けいおん!!」ばっかり50も100も集まってる、みたいな状態になっています。その中に違うジャンルが混入している場合、大概は以前作った同人誌(既刊と呼ぶらしい)を持ってきているケースが多いようです。

 いざ東館の中に入ると今までに見た事が無い人混みがそこにはありました。球場が丸ごと入りそうな広大なスペースなのに、もう「人混み」なんて呼んでよいのかさえ分からないくらいに人がギュウギュウに詰まって居るんです。しかもただギュウギュウなんじゃなくて、それぞれが欲望の赴くままに好き勝手に進むんです。ベクトルはグチャグチャ、足は踏まれる荷物は引っかかる他人の身体が当たると汗がべしゃっと触って気持ち悪い。もう全然思うように進めないですよね。しょうが無いからぷろでゅーさーさんとの合流は一旦保留にして、3つ目の目的を達成すべく同人誌を物色しながらジワジワと移動する方針に転向。

昼食、その後


 そんなこんなしてる間にぷろでゅーさーさんと連絡が取れて無事合流、比較的空いてる食事ブースで落ち着いて昼食にありつけた訳です。案の定ぷろでゅーさーさんは合流した時には既にバテバテでした。まだ開場から2時間しか経っとらんがなwww。疲れていたからかも知れませんが、昼飯は結構美味しかったです(ちなみに天丼でした)。


 以後はぷろでゅーさーさんと一緒に、午前中と比べて圧倒的に空いた東館を物色、途中完全にバテた彼を放置して単騎果敢に挑んだりした次第です。散々歩き回った挙句残念ながら目的のひとつである「とらドラ」の同人誌は最後まで見つける事が出来ず、無念のうちに15:30頃に東京ビッグサイトを後にしました。


外にはこんな綺麗なトコロもあるのに、何やってんだか…、とかおもってたらそのほとりにも痛車は山程停まっている始末。オソルベシ…。

総括


 終わってしまえばあっという間だったコミケ、色々思うところがありました。今更ながら今回のイベントを総括してみたいと思います。

目的は達成出来たか?

 今回は3つの掟を自らに課しました。


 1つ目の健康リスクの回避については、当日に関してはほぼ完璧だったと思います。これに関しては後述。

 2つ目は、結局企業ブースと東館しか行けず、西館とコスプレ広場には行けなかったので、残念ながら未達成です。3つ目の目的がとっとと達成出来れば行く事が出来たんですが…。ちなみにコスプレしてる人は場内のそこら中にいました。何故か女装してる男が8割くらいだった気がします。なんかの流行りかもしくは(以下自粛)。一方で尻の穴まで見えそうなキワどいコスチュームを着ている女性もチラホラ。危うく拝んじゃうところでしたw。

 3つ目も未達成です。アイマスは何とか見つかったんですが、とらドラはエリア自体が見つからなかったんです。前述の通り、ジャンル毎に同人誌の販売されているエリアはある程度絞られているはずなんですが、そもそもその「とらドラ」エリアが見つけ出せないんです。二日目以前の出展ジャンルだったか、もしくは素っ頓狂な所を探していたか、ともかく影も形も見つけられませんでした。非常に無念です…、orz。

Mr.タフネス、だったらしい


 まぁ彼らと比較しての話ですが、どうもオレは常人よりはるかに体力があるらしいですね。確かにしんどかったけど、正直「地獄の3日目」と言うのは誇張し過ぎなんじゃないかなぁというのが個人的な印象です。待機列も会場内もさして苦には感じませんでしたし、一般ブースの人混みも、ウザかったけど体力云々とはあんま関係無い気がしました。よくよく考えたら、炎天下で列に並ぶ、なんてのはJリーグでザラですし、真夏のフットサルもしょっちゅうやってるから、そりゃあ四六時中クーラーの効いた屋内に閉じ籠っているオタク諸兄とは下地が違います。
 ただ、翌日以降はなかなか体力が戻らず、仕事中にかなり苦労しました。もう眠くて眠くてしょうが無いんです。これはコミケで体力を奪われた、というより、当日の始発起きや以降の不摂生から睡眠不足が解消出来なかった、と言うのが正解かもしれません。

係員の態度に腹が立った!!

 「コミケにお客様はいない。いるのは売り手と買い手、どちらも参加者だ」というのがコミケの姿勢らしいです。待機列の整理係やその他案内係などのスタッフも全て善意のボランティアらしいです。それを踏まえ且つ配慮した上で敢えて言います。


 係員の接客態度がなってなさ過ぎる!!!!


 もうね、オレみたいな底辺ビジネスマンから見ても明らかに許せないレベルの、とても酷い接客をするんですよ。



 例えば、ですが、オレが入場直後にとても広い広場(上の写真)を見つけて誰一人居なかったので安心して写真を撮ったんです。ところが2枚目を撮影するか否かの間に「撮影禁止区域だから写真を撮るな!」と注意してきた係員がいました。そこは実はコスプレ広場で、肖像権保護の為にそういう規則を用意したみたいなんですが、数時間後にキワドイ格好した人溢れかえる予定であったとしても、その時点では誰もいないただの広場です。オレは通行の流れも邪魔してないし、そんなのを写したところで誰の迷惑も掛けないのに、オレをまるで犯罪者のような剣幕でモノを言ってくる訳です。しかも、お願いする立場なのに凄く上から目線でモノを言う。
 彼らは明らかに「売り手も買い手もそこに居る人は全て参加者」と言う崇高な精神を逆手に取って当たり前の接客の精神を最初から持つ気が無い。あまりに腹が立ってそいつをボコボコにしたろうかと思ったのをすんでで思い直した訳ですが・・・。


 彼らもおそらくはコミケ大好き人間なのでしょう。彼らにしてみれば「自分たちは偉大なイベントを滞りなく行う為に礎となった尊い殉教者」なんでしょう。確かに彼らのおかげでイベントが上手く回っているのかもしれないが、だからといって礼儀を逸して良いわけじゃない。ボランティアになんかに励んでオレサイコー的な自己満足に浸るくらいならちゃんと社会で当たり前の対人マナーを学ぶべきだ。

オタクの業の深さに落涙す

 会場内を彷徨いていると様々な人を見かけます。もちろん大半は所謂ステレオタイプなオタク諸兄で、極端に太っているor痩せている、運動を全くしていないと一目でわかる骨格と体格、白と黒の使用率の高いファッション、デファクトスタンダードからかけ離れたワンポイントアイテム、エトセトラ、エトセトラ…。


 でもたまぁに「君は本当に此処にいていいの?」と尋ねたくなる人が混ざってるんです。


 例えば、一見綺麗な若いお嬢さんなんですがよくよく見るとコスプレしていて、DVDか何かを手売りしている、パッケージを手に取って見るとその女性がグラビアアイドル顔負けのキワドイポーズをとっていたりするんです。「ああいう姿を見ると熱いものが胸とかもっと下の方に込み上げて来ないかい?」とは某漫画のセリフの一つですが、オレは正直グラビアの裏側を押し付けられたみたいでドン引きしました。なんつーの、例えて言うなら、養豚場から豚が運ばれて屠殺し捌いて発泡スチロールのトレイに乗せて店頭に並べられるまで、その一部始終を見せつけられた気分になります。彼女たちは自分が性の道具になると分かってて、その上でやっているんじゃないかと思います。なまじ可愛らしい女性なだけに、なんともやるせない気持ちになりました。


 他には、頭髪に白髪交じりの、おそらくは50〜70歳くらいの男性がチラホラといたこと。コミケは今回で78回目らしいので、年2回で考えると40年くらいの歴史がある事になります。さすがに開催当初から参加している人は殆どいないでしょうが、それでも何十年も「ここ」に来る為に人生の大半を費やしたのでしょう。同人活動の数十年分の衣食住を費やしてそこにいる彼らは、さながら仙人のようでさえあります。
 同人活動というのは、彼らにとって何なのでしょうか?麻薬のようでもあり苦行のようでもあり、そのどれでも無いようにも見えます。ただ、オレからすれば抜け出せずにいる様で、その背負った業の深さに、つい想いを巡らせずにはいられない何かを、彼らの汗でビショビショになった姿から感じられました。


冬がはじまるよ


 会場の隅では既に次の、つまり今年の年末のコミケの参加受付が始まっていました。彼らにとって夏の始まりは冬の始まりでもあるんですね。なんだかアパレル業界みたいですな。季節先取りみたいな。今まさに酷い目に遭ってるはずなのに、もう半年後、もう一回あそこに行きたいと思う、彼らのその気力と欲望に心の底から敬意を表したい所存です。


 …えっ、オレ!? 冬!!? 行かねーよ!オレはもういいや、十分堪能しました。もうお腹いっぱい、げふっ。




今回のオマケ


 以下は今回唯一自分の為に買った品。買った時は、結構面白い割に普段から着れるじゃねーの? なんて思ってましたけど、いざとなるとなかなか着るタイミングが無いですねぃ。どーしよ、これ?




 …あっ、あと10冊ほどエロ同人誌も買ってきたんですが、ろくすっぽ読まないで、帰りの居酒屋で全部ぷろでゅーさーさんにあげちゃいましたw。しっかり活用出来てると良いんですがw。