ミッションたぶんPossible

どこにでもいるシステムエンジニアのなんでもない日記です。たぶん。

武蔵野美術大学の卒業・修了展を、いや、青春の集大成を見に行ってきた。

 昨日は昼から武蔵野美術大学(以下、ムサビ)の卒業・修了制作展を観に行ってきました。一応ユーザビリティでソリューション作ろうって輩が普通のSIerと同程度もしくはそれ以下の感性しか持ち合わせてないのはいかがかと思い、ちょっと勉強させて貰おうと思った次第。実は10年前にも、バイト先の先輩(女性)が招待状をくれたので同じ制作展を観に行ったことがあった(招待状を貰ったのが女性じゃなきゃ行かなかったでしょうねぃw)んですが、当時の事はあまり覚えてませんし、あの時はあまりモノを考えて生きていなかった為、今行けばそれなりに得るものがあるんじゃないかと結構期待して観に行った次第です。


平成21年度武蔵野美術大学卒業・修了制作展 | 武蔵野美術大学


 ムサビはオレの住居と同じ小平市にあるので、下手な交通機関使うより自転車の方が楽だろう、と思ったのがまず頭が悪かったですねぃ。片道に軽く40分くらい掛かりましたわ。いやぁ、小平市が東西に長いのを完全に忘れてました。道が悪かったせいか、味スタ(調布市)より遠い気がしました。
 

 制作展は普段彼らが使っている校舎がそのまま展示場として使われます。オレは大学生の経験が無いので、まず大学自体に入るのがかなり新鮮でした。


…体育館に自転車で入っちゃう奴がいるってこと!?


駐車場のすみには地蔵のようなものが山積みに。失敗作とかでしょうか?


この辺はさすが美大と言うべきか、つい失笑してしまうデザインがたまに存在します。


 芸術とか美術とかってのは一般的に「アート」と「デザイン」に分けることが出来るそうです(こないだ会社のデザイナーさんに教わったw)。単純に美術品単体で見た者を感動させたり驚かせたりするのが「アート」、生活に根付いて普段人が使うことを想定しているものを「デザイン」と捉えれば良いらしいです。この辺は油絵とか彫刻とかですが、その分類だと「アート」になりそうですね。


つくし。でかくて可愛い(と他の閲覧者が言ってた)ので大人気。


実物大の古代の水棲恐竜でしょうか。


…ああ、言わんとしていることは分かります。確かにブルトーザーっぽいもんね、トリケラトプス


公衆電話も最近見かけなくなってきたから、アートになりえるのかも。結構無骨な彫り方なんですけど、迫力勝ちみたいなところがあった印象。


…う〜ん。アートはオレの拙い感性ではいまいち理解できません。


…何がなんだかよく分からない。特に油絵はあまり興味が持てなかったせいか、後から確認したら殆ど写真を撮ってませんでした。


こちらは多分市販のフィギュア。セクシー系ばっかりで、何故かみんな壁を向いてました。なんか意図があるのか?



こちらは陶芸。こちらはどちらかというとデザインの分野かもしれません。…時々、「どうみても日常的に使いにくいだろ、コレ?」という作品もあったので(ハイヒール型のマグカップとか合ったんですけど、絶対ちゃんと洗えないはず!)、はっきりと断言できませんが。


このお皿は、もしお店に置いてあったら凄く欲しいなぁ、と思った品。でも買ったら高いんでしょうね、きっと。



こちらは…ちょっとジャンル名が分からないんですが、染物というか反物というか。とにかく布地を題材にした展示です。


布製の象。やっぱり大きい。女性に人気があるようでした。


体育館を使って、多くの作品が天井からぶら下げられる形で展示されていました。ハチクロは確かムサビかタマビ(多摩美術大学)が舞台だったと思いましたが、竹本は確かこんな風に高い天井まで届くような塔を作ってたなぁ、と漫画の1シーンを思い出しました(竹本は建築科だったけど)。


こちらは外の展示。屋内では出来ないようなことに特化した展示が多かったです。基本的に大体においてデカい。


ビニール傘の骨組で作られた骸骨。植木で囲われた中に整然と並んでいたので、墓場みたいでシュールでした。


ツリーハウス、みたいなもんですかね。実際に登れるのでみんな興味津々です。


ちょっと変わった馬車。レリエルを思い出しました。


どうも結婚式っぽかったんですが、学内で、制作展中に結婚式なんかやらないと思うので、多分コレもパフォーマンスによるアートなんじゃないかと思います。なんか記念撮影とかもしてました。


こちらは演劇ですね。人だかりが出来ているその後ろや上から次々に別の俳優(?)が登場したりと、空間を上手く生かしている様子が見られました。オレが見つけた時は既に劇の半ばだったようで、最後まで見なかったんですが、お札を貼った女の子やブリーフ一丁の男の子が出てきたりとなんだか厨二病スメルが漂ってくる感じが若干ありました。


こちらは校舎の中庭の吹き抜けを利用したパフォーマンスアート。設営された木製のスロープを四階から粘土球のようなものを転がし、壁の内側に入れるというもの。壁の内側は下からでは絶対に見えないので、全てを見たければどうしても校舎に上がるしかありません。


結構大きな音が出るのでみんな注目していました。見よこの鈴なりの人。
オレも休憩を兼ねて見ていたんですが、かなり成功率が低かったです。結局30回くらいやって1回だけ成功しただけでした。なんでBGMが「崖の上のポニョ」だったんだろ?



こちらは布と木の骨組みで出来た戦車。帰り際に見たらライトアップ(?)されていて綺麗でした。


学生の自作キャラクター、おもちくん(という名前だった気がする)。可愛くってちょっと邪悪な感じw。


こっちはおなじみキューピー人形を、全て毒々しい配色で大量にペイントして並べたもの。写真だと光が強すぎて色が飛んじゃってますが、南米のトカゲやカエルを思わせるショッキングな色をしています。仮にも食品メーカーのキャラクターなのに、こんなことして大丈夫なのかしらw。


文字をデザインするタイポグラフィの展示。個人的には結構好きですね、こういうの。


たぶん韓国からの留学生だと思うんですが、韓国のデザイン史について閲覧者に熱弁していました。ちょうどQ&Aが始まったところに訪れたんですが、結構説明を聞いていた人も本職かそれに準ずる人なのか、結構詳しくて「この書き方だと立体的になってないからこの部分が強調されなくて凄く勿体無いよね」みたいな、手厳しい意見も言っていました。


こちらは絵本の展示。オレが辿り着いた時にはちょうど親子連れがいたんですが、この子供が夢中で展示された絵本を音読していました。


右側の男性がおそらくは制作者。和気藹々とお母さんやお婆ちゃんを含めて会話をしていました。「可愛いね」「面白いね」と子供が言う度に笑いが零れる暖かい雰囲気。きっと制作者の彼にとっては教授のどんなお墨付きの評価より嬉しかったんじゃないでしょうか。


ここからはデザイン系の作品。こちらはガーデニング用の机なのかな?机そのものが植物が根を生やせる素材で出来ています。実用性は疑問符が付きますが、個人的には好きな作品ですね。


こちらは未来のバイク。模型のクオリティが高い!美大生って、こんなこともやるのか…。


癒しをコンセプトにした照明。金魚鉢の下に映し出された影がなんとも優しい雰囲気を作っていました。金魚の影もそうなんですが、水が揺らぐと光が変化するのも良かったです。


製品デザインの展示は必ず、プレゼン資料というかパンフレットというかリーフレットというか、ともかく模造紙2枚分くらいの説明資料とセットになって展示されています。
この資料も非常にハイクオリティで、オレのような素人目に見たら市販の製品のそれと大差ありません。


どの作品にも、コンセプトは何なのか、誰がターゲットなのか、どのように使うのか、セールスポイントは何なのか、非常に美しく分かり易くまとめられています。オレらも仕事で提案資料を作ったりしますが、それよりも全然レベルが高いです。彼らはこの4年間、毎日毎日ずっと「誰に自分の作ったモノを届けるか」「その為に何をしなくちゃいけないか」を考え続けたんじゃないかと思います。


美大生に限らず学生って、もっとビジネスと乖離した世界で、良く言えばノビノビと、悪く言えば現実離れして役に立たない事ばかりしてるんだと思ってました。でもそうじゃなかった。彼らの方がよっぽど現実的で大人でビジネスマンだった。ちょっと小銭稼いで日本の一端を支えてた気になってた自分が、本当に恥ずかしかったです。

iPhoneのような先進的な機能を備えつつ美しいデザインの製品が出てくるのは、こういう実力を持った人の中でさらに切磋琢磨できる環境が必要なんだと改めて感じました。もちろん才能とかセンスとかも重要なんでしょうけど。


こちらはタチバナという先生のゼミの学生さんたちの自己紹介文です。それぞれ簡単な自己アピールに、「タチバナ先生に言われて覚えている一言」という欄がありました。この文を読んでいくと、タチバナさん(言葉遣いから女性らしい)の優しい懐の広い人柄が窺い知れます。きっと学生を愛する優しい先生なのでしょうし、学生たちもきっと先生のことがみんな好きなんだと思います。


こちらは建築デザイン。主に模型やイラスト、説明資料が展示されていました。この模型の出来がまた凄いんですよね。不器用なオレには絶対作れないと断言できますw。


覗き穴から覗くとその中に小さなインテリアの模型が見えるようになっている展示物。色々と仕掛があって面白いです。


展示を一人で回っていると、学生同士の会話もよく耳にします。どんな考えで作ったか、どんな素材を使ったか、どんなことを作っている最中に考えていたか。作品を見ながら互いの考えを予想しているようでもありました。下の彼らは建築模型の一部がハイレベルなのに言及しています。「エネルギーを注いで作ったところは魂が宿るよな」そんなことを言っていました。同じように苦労しながら取り組んできたからこそ、どこにどの位苦労したかが理解できるんでしょう。


こちらは大友克洋風というか、押井守風というか、アニメ映画風のイラスト。こちらの学生も学芸員役(?)の学生と「俺は建築って正直興味なかったけど、こうやって見てみると結構普通に良いよな。」「これなんかスゲー自由だよな、やりたいことやってる」「あっちの○○さんの作品も自由だぜ、見てきた?」というような会話を交わしていました。





 他にも、昔の友人と会えたらしい女の子たちがはしゃいでる姿を見かけたり、初老の方(高校の先生?)と就職について話している学生の会話を聞いたりもしました。展示に添えられたコメント帳には「卒業おめでとう」の言葉を何度も見かけました。

 それらからはどれもこれも、彼らがそれぞれに岐路に立っていることが伝わってきます。彼らはこの作品たちを最後にこの学び舎を巣立ちます。この大学に入ってからの4年間と、それ以前の大学に入るまでの苦労も含めて。全て今回の展示の為に作った作品に込めて。それは、彼らの青春全て、と言い換えてもいいのかもしれません。ここで得た全てを思い出として胸に秘め、かつ、しっかりとした踏み台にして、彼らは新しいステージに踏み出します。


 残念ながら時間が足りなくて展示の全てを見ることが出来ませんでしたが、今回の制作展からは非常に良い刺激と、沢山の元気を貰ってこれたと思っています。

 オレはあくまで企業向けの業務システムを開発する人間で、しかも現時点ではお客様に直接提案できる立場にはありません。システムを開発する為の道具の使い方さえなってない。
 でもいつか、彼らのような優秀な人たちと一緒に仕事ができるよう環境を整えることが、小さいながらもユーザビリティを専門としたチームの、リーダーであるオレの今の仕事なんだと強く感じました。


制作展は今日(2/1)まで開催されているようです。興味をもたれた方はお早めに。